夕音へ2
「史紀さん。起きて下さい」
「ん……着いたぁ?」
穂乃差から丸一日の電車の旅。
ボクに出来る事は寝る事と食べる事。
それ以外には無い。退屈が親友になった。
「いえ。何か起こった様なんで」
寝ぼけた目で由宇を見る。由宇の顔色からそれは良くない事だと分かった。
列車から降りる。真っ暗なホームには沢山の人が居る。
これだけの人が乗っていたのか。その事に驚いた。
「ここは?」
「夕音の手前の『理利府』です」
「なんでここで降りるの?」
「さぁ? 僕にも」
ボク達以外の人もどうしたものかと思案している。
そこに、アナウンスが、
「『伊里加』にてトラブルが起こりまして……」
アナウンスを聞きながら、移動する人波。
それに乗らずにベンチに座って時間を潰す。
「おかしいですね。こういう場合は他の移動手段を用意するものなんですが」
「そうなの? でも何も言ってなかったよね」
言ってたのは、トラブルが起きてこれ以上は列車では無理、と言う事だけ。
「線路が潰れたんじゃない?」
「だとしても、バスとかあるじゃないですか」
「なるほど。伊里加で起こったトラブルってのは」
「跋維党による襲撃かと」
「はっ」
一笑に付してやった。
「自分で大丈夫だって言ってたじゃない」
「列車を襲う事は無いと思ってたんですけど」
冷静に状況を分析する由宇。
「確かに。列車は襲ってないよね」
「なんか……引っかかる言い方ですね」
悔しそうな顔。なんとなく気持ちいい。
「そんな事ないよ。で、どうするの?」
「夕音まではまだありますから」
「車は危険だし、徒歩はもっと危険でしょ」
「はい」
「じゃ、ちょっとここで状況を見る?」
「はぁ」
はっきりしない返事。
「どうしたの?」
「僕お金無いし」
うつむく由宇。
「貸したげるよ」
ベンチから立ち上がり駅から出る。
「おおぉう。大きな町だね」
穂乃差も綺麗な町だったがこっちは無機質というか人工的な整頓というか、不自然ではないが違和感を感じるが、不快な感じはしない。
人々は忙しく歩きいている。
観光を目的にしていないから当然といえば当然だ。
「里利府は商業都市ですからね」
そんな人達を見ながら由宇が解説してくれる。
「ふーん。もしかしたらボク以外の仙士居るかも」
空を見上げちょっと期待する。
「何か言いました・」
隣にいる由宇がボクを見る。
「さて、これからどうしようか」
「お昼、行きますか?」
答える事無く、由宇の後についていく。
昼食を取り、当面のホテルも決めて街をぶらつく。
「物騒だね」
目に付くのは武装した兵団や警察。
「まぁ、こんな時ですから」
パンフレットを見ながら街の説明をしていた由宇が悲しげに呟く。
「それを言っちゃおしまいでしょ」
「そう……ですね」
しまった。由宇も被害者だったんだ。
「で、次は?」
とりあえず、話を変えよう。
「えっと、観光地はもう……」
パンフをめくり、
「もう無いですね」
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