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異世界から同時に召喚された結果 作者:ワエ
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その16

 突然女神から最高の祝福(キス)を頂いた後、笹倉さんと今後の予定について話し合い、今日は別れることとなった。
 どうせなら遊びにでも出かけたいところで、実際誘っても見たのだが、彼女自身ちゃんと気持ちの整理をしたいのと、勢いでやってしまったことに対する恥じらいがあるようで断られてしまったのである。

「それじゃあ新城くん、また明日ね」
「うん、また明日」

 少々寂しいが、俺も今日起きた幸せを消化するのにいっぱいいっぱいだから少しだけ助かったとも思う。
 そんな複雑な想いを隠しつつ笹倉さんと別れの挨拶を交わす。
 家まで送ろうとも思ったが自転車で来てるからとこれも断られてしまったので表までの見送りだ。
 そうして自転車を手で押して歩く笹倉さんの後ろ姿を眺めていると、数歩進んだところで彼女は立ち止まり、振り向く。
 そして何かを決心したような表情で言った。

「ねえ、新城くん。今日しちゃったことは勢いだったとこもあるけど……私、後悔してないから! じゃ! バイバイ!」
「え……あっ……行っちゃった」

 ほんのり頬を赤らめながら言われた言葉に俺は固まり、その間に彼女はササッと自転車に乗ってあっという間に距離を離して行ってしまった。
 彼女の姿が見えなくなってもしばらく立ち尽くしていた俺は心臓の高鳴りと、頬が緩むのを全く止められなかった。





 


 もはや幸せ過ぎて死ぬかと思ったほどの衝撃からようやく再起動した俺は家に帰る。

「うおっしゃああああああ!!」

 そして玄関を通り抜け閉めるのと同時に叫び声をあげた。
 俺の住むこの一室は魔法により完全防音仕様に魔改造されているので誰の迷惑にもならない。
 だからこそ歓喜のままに叫ぶことができる。

 物事は動き出したら崖から落ちるように止まらないっていうけれど、まさか笹倉さんと友だちになってから五日でここまで急接近することになるとは思っても見なかった。
 これもあの日、異世界に同時に召喚されて取り残されたからだと思うと、世の中何がきっかけで好転するか本当に分からないものだ。
 ああ、この喜びを誰かに伝えたい。
 でも笹倉さんしか友だちが居ない俺に伝えられる相手なんて……。

(いやっほおおおおおおおおおおう!)
『『ほああああああ!?』』

 丁度いいのが居たからテレパシーを爆音で送れば、驚いた二人の声が響く。

『くっそ何だ突然……あ、違うぞ? ルミナスちゃんを驚かせようってつもりは無くてね? 待って落ち着こう。爪伸ばすのやめようか? 治せるけど痛いからやめてって! くそ雄二ぶっ殺してやらあああああああああああああ!?』
『おいてめえ、雄二! いきなり大声はやめろって前いったよな? 言ったよな!? って、待ってユナ! 一旦ストップ、ストップ! 緊急事態だから! 訓練をっ!? ちょっと、やめ!? くっ、やっぱりこのバーサーカー聞いちゃいねええ!』

 どうやらそれぞれにとって色々よくないタイミングだったようで慌てふためいて実際に口に出して言っている言葉が思念に混ざって送られてくる。
 その声を聞く限り向こうは中々愉快なことになっているようだ。

 エージの神、ルミナスちゃんはドッキリ系がお嫌いなようで突然大声を近くで上げられたりすると機嫌が超悪くなるらしくて、爪を伸ばして死なない程度に襲い掛かってくるらしい。
 元々異世界から人を集団で召喚して能力まで与えちゃうくらい強大な悪魔だからそれはもう凄まじいもので、襲われれば当たり前に腕の一つや二つ飛ぶ。
 以前はそんなことも無かったらしいのだが、ビージが欠損すらも治せる回復魔法を覚え、そのまま能力共有によりエージも使えるようになったことがバレた結果過激になったとか。
 まあ、死なない程度にっていう辺りエージもなんだかんだでルミナスちゃんと良好な関係を築いているんだなとほっこり。
 俺は黙ってエージとのテレパシーを切った。

 ビージの神、ユナ様はただの腹黒王女様ではなくて高い戦闘能力をお持ちであった。
 その能力は勇者として訓練して相当な力を得たビージが本気を出しても傷一つつけられないレベルで、そのためかビージの訓練相手として選抜された。
 もはや他にビージの相手になる者も居ないので日夜、ユナ様と激しい運動をして汗を流しているようだ。
 また、ユナ様には戦闘中にスイッチが入ると止まらなくなるバーサーカー気質があって、一定時間経過するかビージが瀕死になるまで戦うのを止めてくれない。
 そんなユナ様を前に突然、そう例えば脳裏に響く大声なんかに驚いて身体を固め隙を晒せば……お察しである。
 合掌しつつ、ビージとのテレパシーも切る。

 尚、ユナ様がそんなに強いのは彼女が王族だからだ。
 彼女ら王族は神の慈悲を利用して勇者召喚を敢行しているゲス共であるが、召喚する勇者がどれも期待はずれだった場合、最悪自分たちでなんとかすることも考えておりそれゆえに王族に強さは必須であった。
 中でもユナ様は歴代の王族の中でもかなり高い資質を持って生まれ、密度の高い強化訓練を仕込まれたのだから強いのは当然だ。
 ビージ曰く、バーサーカー状態でなければユナ様は超絶可愛いお嫁さんとのことなので、まあボロボロになるぐらい我慢すればいいと思うね。
 さて、溢れる喜びを二人に伝えたことで幾分落ち着きを取り戻したので、適当にゲームでもすることにしよう。

 そうしてしばらく鼻歌交じりにゲームに熱中していると突如激しい腹痛に襲われる。
 慌ててトイレに行こうとすれば強固な結界が張られていて扉に近づくことも出来ない。
 あの野郎……! 世界超えて結界張ってんじゃねえぞ、畜生っ!!

「ぐぅ……あいつら……よくも……」

 恐らくこの状況を作り出しているエージたちを呪いつつ俺は悶え苦しむ。
 腹の痛みで冷や汗が止まらず、粗相をするわけにはと必死で我慢しながらも結界を解除しようとするが、この激しい便意の前で集中出来るわけもなく、限界はすぐそこまで迫っていた。
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