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おさない、かけない、しゃべらない 作者:真木あーと

第五章 暗殺者とハーレム王

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第四節 首都の再会

 目が覚める。
 目覚めは悪くない。
 毎度の事だが、今更と言われればそれまでだが、もうそろそろ止めてほしいことがある。
 それを毎朝思うのだが、次の夜には何の改善もないまま、同じ朝を迎える。
 そんな日々を続けて、もう何日になるだろう。
 俺は、今でもずっと、ユキやファルカと同じベッドで寝ていた。
 俺の右にはユキが俺の腕にしがみついて眠り、左はファルカだ。
 しかも、こっちに来て以来、ファルカも寝着(パジャマ)をやめ、下着姿で寝るようになった。
 俺もユキもファルカの身体の(あざ)を見てどうこう思うことはないし、ユキに至っては同情すらしていた。
 まあ、ともかく、俺は下着姿の美少女を両脇に眠らせて寝起きする毎日なのだが。
 普通の男ならそれを聞けばなんと羨ましい奴だ、なんて思うだろう。
 その考えは正しいし、俺だってその意見には賛成ではある。
 俺自身のことを幸せな奴だとも思う。
 ユキもファルカも、この人の多い、つまりその分美人も多い城下町でも目立つほど可愛い女の子ではあるし、いいとは言えない性格も、長く一緒にいいればいるほど情が出て来て、可愛いと思えてくる。
 そんな女の子達と一緒に生活し、同じベッドで寝られるなんてことは、幸せ以外の言葉では表現できないだろう。
 事実俺をよく知る奴らは、俺のことをハーレム王なんていうあだ名で呼んでいる。
 だが、分かってくれるかどうか分からないが、健全な男子である俺は、女の子と一緒に寝れば、まあ、その、悶々としてしまうわけだ。
 だが、俺がいくら悶々としようがどうしようもない。
 つまり、何も出来ないって事だ。
 いや、俺がヘタレだからじゃない。
 何ていうか、分かりづらいかもしれないが、例えば、俺ともう一人なら、多分あっさりと俺はそいつと一線超えてただろう、それがユキであってもファルカであっても。
 だが、ここには二人がいるわけだ。
 二人がいるってことは、その一人と何かしようと思ったら、もう一人が止めるだろうし、逆でも同じだ。
 つまりは二人いることで、俺は悶々を悶々のままで毎日を過ごさなければならない。
 女の子の色香を感じて、寝息とか寝言とか、身体の柔らかさとか、体温とかを感じるだけ感じて、何も出来ないという、心身ともにすっきりしないままにに過ごすなんていう、そんな不健康な生活が続いている。
「お前らそろそろ起きてくれ。ていうか、腕を離してくれ」
 俺は両腕を揺さぶりながら言う。
「んん……ティル? もう朝? あと少しだけ……」
「やめろよぉぉ。俺が低血圧なのわかってんだろぉぉぉ……」
 しかもこの二人、とことん寝起きが悪い。
 普段あれだけ大騒ぎする癖に、こんなに朝が弱いとか、ありえない。
「ファルカはさっさと仕入れに行かないと、いいものなくなるぞ! ユキは今日料理番だろう、さっさと起きろ!」
「あーい……」
「ったく、ご主人は人使いが荒いぜ……」
 二人はのそのそとベッドを出て、ふらふらと寝室を出て行く。
 言うまでもないが、あいつらにはちゃんと自分の寝室が存在する。
 だが、そこはあいつらの衣服とかは置いてあるが寝床としては、ほぼ使われたことがない。
 理由は俺のほうが聞きたいくらいだ。
 俺たちがここに住み始めて、多分月が一周するくらいは時が過ぎたと思う。
 この屋敷は立派過ぎて俺たちの手に余るが、まあ、貰ったものだし文句は言えない。
 王はシュカレメルスに関する情報を報告してくれた褒美として、この家と結構な金をくれた。
 まあ、つまるところ、その時点で俺たちが城下町に住むことは王には分かってたって事だ。
 腕試しの時に王も立会いに来てくれ、王もアランヴェート卿も俺の腕を認めてくれた。
 「バザメマル殿を見ているようだ」などと褒めてくれ、俺の入隊は確定。
 それどころか一気に騎士団に入れてもらえる事になった。
 まだ、ガキと言われても仕方のないくらいの年齢でもある俺は、最年少騎士となった。
 これは王族を除く貴族でも初めてのことで、師匠よりもかなり早いらしい。
 だが、この最年少騎士という称号は、ほんのひと時で終了した。
 俺の後に腕を試されたユキも王の目の留まるところとなり、あっさり騎士団への入団が決まったのだ。
 つまり俺の同僚となり、俺の最年少騎士の記録はそこで塗り替えられた。
 まあ、ユキの腕は認めるところだが、ある意味図々しく俺に便乗してここまで来たところが少し気に入らない。
 ファルカの方は褒美としてもらった金を使って商売を始めたようだ。
 行商人から品を仕入れて、市場で売るというだけの商売だが、単純な商売だけに才覚一つでいくらでも大儲け出来るようだ。
 そして、そういう商売はファルカに向いていた。
 商品の目利きの仕方を商人や行商人から持ち前の人たらしで聞き出し、行商人とのコネを作り、紹介によってどんどんとそれを広げて行って、いい商品を安く手に入れ、それを売り物に市場に出るんだが、そこでまた商才を発揮する。
 目立つ声の出し方、客の気の惹き方、振り返られやすいキャッチフレーズなどを多用し、ほとんど毎日完売して帰って来る。
 簡単に言うが、大抵の行商人は特定の商人に商品を売るし、その商人から品を買って他の町に売りに行くわけで、そこに割り込むのはそれだけで至難の業だ。
 売る方もそうだ、市場の場所も周囲の協力もなかなか得られるもんじゃない。
 それを、あの小娘というかガキと言われても仕方がない女の子であるファルカが、市場のいい場所を得て、周囲にも協力してもらってやっている。
 それどころか、城下町付近の鉱工業職人とも話をつけて、安く素材を分けてもらっているようだ。
 それはもう一般の商人レベルの売り上げじゃなく、手広く利益を得ているみたいだ。
 俺たちも騎士ということで、結構な高給をもらえる事になっているんだが、その俺たちの月収より、遥かに稼いでいる。
 この屋敷の住人の収入を全て合わせれば、貴族にも負けない程になると思う。
 少なくとも、それなりの生活が出来るはずだが、俺たちの生活レベルは大して変わることはなかった。
 使用人も雇ってないし、食事の準備も三人の当番で準備をしていた。
 三人が朝に出勤して、夜には戻って来て、三人でまとめて一部屋で寝る。
 寝るところ以外は俺の望むところだし、特に不満もなく満足していた。
「朝ごはん出来たわよ」
 ユキが呼びに来ると、既に着替えていた俺は食堂に向かう。
 まあ、つくりは立派だが、出てくる料理は市場で買ってきた素材で自分たち作る、粗末な料理だ。
「粗末とはなによ! ちゃんと心を込めて作ってるわよ!」
「いや、そういう意味じゃない」
 相変わらず、心が読めるユキは時々面倒だ。
「ただいま、飯は出来てるか?」
 ファルカが朝の仕入れを終えて帰ってくる。
「ああ、じゃ、揃って食べるか」
 俺たちは豪華な椅子に座り、ユキの手料理を食べる。
「んー、まあ、お前もなかなか料理うまくなったんじゃねえか?」
「べ、別にお世辞なんて言わなくてもいいわよ」
「いや、うまくなってると思うぞ。成長って意味では一番じゃないか?」
「そ、そう……」
 ユキは頬を染め、黙々と食べ始めた。
 まあ、ユキは元々料理なんて出来る奴じゃなかった。
 元々町に住んでいて、色々な料理人から料理について聞いていたファルカは料理は一番上手だ。
 全く、こいつは本当に女の子としては万能なんだよな。
 俺も師匠の家では料理の支度をしてたから、ファルカ程じゃないが、それなりには作れる。
 だが、ユキはこれまでの人生でほとんど料理をした事がなかったようだ。
 だからこそ、当番制にして料理を鍛えてみたのだが、それなりに成果は出てきたようだ。
「あ、ユキ、聞いてるとは思うが、今日は昼から王の謁見があるからな」
「うん、聞いてる。多分あたしは付き添いであんたに用があるんじゃないの? 王様、あんたを気に入ってるみたいだし」
 まあ、ユキに言われるまでもなく、王が俺に目をかけてくれているのは分かる。
 俺自身がどうというよりも、やはり、師匠の弟子というところが注目の原因なんだろう。
 師匠とアランヴェート卿は、昔軍にいた人たちからすれば憧れを越えて神のような存在だというのは、騎士団にいてもよく分かる。
 騎士団のベテランの人には必ずと言っていいほど、バザメマル殿の弟子ということで一目を置かれる。
 それが重荷に思うこともあったが、俺は師匠と俺自身の名誉のためにも、騎士団で強いと評判になるように心がけている。
 俺もそう思われ、周囲に期待されると、師匠と同じように親衛隊長を狙ってみたい、なんて無謀な事を考えるようにもなって来た。
 そんな俺にとって、王の謁見というのは、一つのアピールの機会でもある。
「いや、そうとは限らねえよ」
 ファルカが口を挟む。
「メシュに関することかも知れねえぜ?」
 軽い口調で言うファルカ。
 俺とユキは少しだけ動きを止める。
 そんな事は誰も言っていないのだが、何となく、俺たちはメシュを話題にすることを避けていた。
 二度と会えないわけじゃないと言ったが、実際別れてから一度も会ってはいない。
 これからもいつ会えるか分からない。
 変に期待することで、それが破れることを恐れて、俺たちはメシュに関する事は何も言わなくなった。
 今、どこで何をしているのかは分からない。
 どこかで生きていて、いつか会えるとは信じている。
 だが、それがいつになるのか分からない。
 それが今日、なんて事もあるかも知れない。
 だが、その期待を持つ事は俺自身に禁止している。
 ユキも同じ気持ちだろう。
 ファルカだって同じような気持ちだと思っている。
 だからこそ、ファルカの軽口を責める事は出来ない。
 もし、今日メシュと会えるなら、ファルカだけは会えないからだ。
「そうだったら、いいけどな」
 だから、俺は同じように軽く返す事にした。
「じゃ、俺は行って来るぜ、鍵は閉めて出ろよ」
 ファルカはさっさと食べ終わると、食器を持って立ち上がり、食堂を出て行く。
 俺とユキは、何となく黙々と食事を続けた。
 ユキとは話も合うし、無言ということはあまりないんだが、今日はそんな気分にはなれなかったのだ。



 昼も過ぎ、謁見の時間が近づいてきた。
 今回はアランヴェート卿の随伴はないが、前ほどは緊張していなかった。
 王が気さくな人だとは分かっているし謁見の間以外では何度も会って話もしているからだ。
 それに俺も一応は騎士団で礼儀作法を覚えてきたため、前のように何をして言いか分からず戸惑うこともないだろう。
 それはユキも同様でどちらかというと気を抜いているようですらある。
「次の方」
 謁見の間からの声に立ち上がり向かう。
 入り口でお決まりの口上を述べ、奥に入る。
「久しぶりだな、ティルドラーディル、そしてユキルーンカルド」
「はっ、本日は王自ら呼んで頂きまことに恐悦至極に──」
「まあ、そう堅苦しいのはいい。噂は聞いているぞ、ティルドラーディル」
「ありがとうございます」
 王にそう言われると、俺もここに来て頑張った甲斐があった。
「確か、ハーレム王だったかな? 俺はそういう奴も嫌いじゃないぞ?」
「え?い、いえ、畏れながらそれには大きな誤解がありまして」
 その噂が王にまで上り詰めているとは、噂って怖いな。
「ははは、まあ、隠さなくてもいい。それよりも少し頼みがあって呼んだのだ。特にユキルーンカルド」
 王は、俺の隣に控えていたユキに声をかける。
「えっ、あたし……わたくしでございますか?」
「うむ。お前は人の心が読めるらしいな。そこで少し心を読んで欲しい者がいる。おい」
 王が奥に声をかけると、従者に伴われた少女が奥から出てきた。
 俺は、その少女を知っていた。
 その姿を見ただけで、涙が出そうになった。
「メシュ……!」
 俺は王の前である事を忘れ、頭を上げてメシュを見た。
 旅で一緒だったときとは違い、髪は下ろしていて、しかも丁寧にとかれているのだろう、漆黒の長髪はそれだけで美しかった。
 身なりも整っており、人形のような容姿は、どこかの姫君と言っても疑う者はいないだろう。
「彼女はお前たちもよく知っている子だ。我々で時間をかけて魔法の解除を試みたが、どうにも解けてはいない。恐らく短期間では難しいので長期間かけて解いていく他はないと判断した」
 王国の、恐らくこの国の最高峰であると思われる王城の魔道師たちでも無理だったという事か。
 それは俺たちにとって、落胆以外のなにものでもなかった。
「だが、それがシュカレメルスとやらの魔法である以上、危険であることは拭い去れない。いや、お前たちや彼女を信頼していないわけではないが、我々は最悪の事態を考えなければならない。彼女をこのままにしておくわけにはいかず、これからも封印を時間をかけてでも解除しなければならない」
 そうか、そうだろうな。
 少し前の俺なら、そう言われれば怒ったかもしれない。
 だが俺はまだ入って間もないが騎士団に入り、そこで組織というものについて学んでいる。
 その危機が全体に及ぶなら、個を切り捨てるという手段は当然の帰結だ。
 つまり、メシュにシュカレメルスの魔法の封印が及んでいて、解明できない以上、メシュは危険な存在なのだ。
 その魔法が表情や声をなくす、というのはほんの一部の事で、実は油断させて王を殺害するという魔法が仕組まれていないとも限らない。
 そんな危険人物を野放しにしてはおけないって事だろう。
「だが、それまで幽閉しておくほど俺は非情でもない。彼女が望むなら家を与えて住ませてもいいし、外が怖いというなら、王城に部屋を用意してもいい。だが、我々では彼女の意思を確認出来ないのだ」
 王が困ったように言う。
 ああそうか、メシュの意思が分かるのはユキくらいだからな。
「そこで、ユキルーンカルド、お前のその力を貸して欲しい。お前なら彼女の心を理解できるのだろう?」
「はい、旅の途中ではずっとわたくしが彼女の話を聞いておりました」
「そうか、それなら話が早い。彼女は何が希望なのか聞いてみてはくれないか
 王の依頼は、ユキにとってとても簡単なものだった。
「かしこまりました、王様」
 ユキはそう言うと、メシュに向き直る。
 メシュはじっとユキを見る。
 そして、ユキもじっとメシュを見る。
「…………」
 いや、見つめるというか、睨むくらいの目つきだった。
 既にいつもなら意思伝達できているであろう程の時間が流れる。
 それでもユキはじっとメシュを睨んだままだ。
「……どうした?」
 俺は小声で、ユキに聞く。
「…………」
 ユキは答えない。
 ただ、じっとメシュを睨んでいるだけだった。
 メシュのほうも、じっとユキを見つめる。
「ふむ、よくは分からないが、心が読めると言っても、中々難しいこともあるのだろうか」
 王が、フォローのつもりなのか、そんな事を言う。
 いや、俺はずっとユキとメシュのやり取りを見てきたが、こんなに時間がかかったことなどない。
 ほとんど会話しているかのように、理解できているはずだ。
 少なくとも俺の思っていることは瞬時に理解している。
「ふむ、難しいようなら日を改め──」
「大丈夫です。分かりました」
 ユキが微笑みながら言う。
「ほう、彼女は何と言っている?」
「メシュはティル──ティルドラーディルと住みたいと言っています」
 ユキは明るい笑顔で言う。
 ぶんぶん
 メシュはそれを聞いて首を振る。
「彼のハーレムに加えて欲しいと言っています」
 ぶんぶん
 ぶんぶん!
 メシュは大きく首を振る。
 さらさらとした髪が大きく広がる。
「そう言っているようには思えない反応だが?」
 王が言うが、俺も同じ思いだ。
「照れているんですよ。彼女はこう見えて素直ではないので」
 ぶんぶん!
 俺もそうだがユキもメシュがとても素直である事は理解している。
 だが、平然とそう言う辺りがユキなんだろう。
「ですが、心の中ではそう望んでいます」
「そうか、それなら仕方がないな」
 メシュは何度も首を振ったが、諦めたように息をついた。
「ティルドラーディル、彼女のことを頼めるか?」
「はっ!」
 俺は元気よく、返事をした。
 メシュが帰ってくる。
 そう考えただけで頬が緩むのが止まらなかったが、それがばれないように、深々と頭を下げた。
「ハーレムか……。だが、俺のハーレムも中々のものだぞ。お前に負けないほどな。はっはっはっはっ」
 ユキのせいで、王に妙なライバル扱いをされてしまう。
 まあ、今はそんなことどうでもいい。
 メシュが帰って来ることに心が弾んでいた。
 ここで否定しなかったことで、俺は王すら認めたハーレム騎士として城でも町でも有名になるのだが、その話はまた今度にしよう。
 今はそんな気の重い話はしたくはない。



「ようこそ! いや、おかえり、かな」
 従者に伴われて、メシュが俺たちの屋敷に来る。
 そんな彼女に俺はまずはそんな声をかけた。
 メシュはそれに答えることはなかったが、その代わりに手を上げ、それを振った。
 彼女は謁見の間で会った時の服ではなく、俺たちと別れた時のあの服を着ていた。
「申しわけありません、どうしてもこの服を着たがったので。この服は血が張り付いて取れないのですが……」
 申しわけなさそうに従者が言う。
「ああ、いいですよ」
 俺は軽く手を振る。
 この服は、俺が買ってやった服だ。
 ここに来る旅の途中行商人から買ったあの服。
 今ならいい仕立て屋も知っている。
 金もあの頃より遥かにある。
 ファルカのコネで生地も仕立ても最高の物を用意できる。
 だからいい服を一着とは言わず、何着でも買ってやれる。
 それでも、この服は、俺にとってもメシュにとっても、唯一の服なんだ。
「じゃ、荷物だけ中に運んでください。後はやっておきますから」
「かしこまりました」
 従者は俺の言ったとおり、家の中に持ってきた荷物を入れると、一礼をして帰って行った。
「おかえり、メシュ!」
 従者が帰ったのを確認して、ユキがメシュに抱きつく。
 従者がいる時から我慢していたのだろう。
 メシュも抱きつき返すかと思ったら、軽くユキの頭を叩いた。
「いたっ! そんなに怒らないでよね。あたしはあんたの心の本音を言っただけなんだから」
 ぺしん。
 軽い音とともにメシュはユキの額をもう一度叩く。
「あーもー、あんた深く考えすぎなのよ。何よ、『私といたらみんなに迷惑がかかる』って。いいわよ、迷惑かけりゃいいじゃないのよ! でもね、それでもみんな、あんたといることを迷惑なんて思わないわよ!」
 ユキはぐい、とメシュの頭を抱きしめる。
「あたしはあんたが好きよ。ティルもそうでしょうし、ファルカもそう思ってるはずよ」
 メシュは頭を取られ、少しだけじたばたとしていたが、おとなしくなる。
「いい? この機会だから覚えときなさいよ! 一回しか言わないからね!」
 頭をユキに抱えられたままのメシュが、こくり、と頷く。
「人間っていうのはね、好きな人のせいで被る迷惑は幸せだって思うもんなのよ!」
 メシュは理解出来たのか、出来なかったのか分からないが、ともかくおとなしくなったので、ユキは彼女を離した。
 すると、今度はメシュのほうがユキに抱きついた。
「わっ、え? いいわよ、ありがとうなんて。だから、あたしたちも幸せだって言ったでしょ!」
 ユキは困ったように、でも嬉しそうにメシュの頭を撫でる。
 メシュはユキに抱きついて、離さなかった。
 俺はそんな二人の様子を微笑ましく見ていた。
「ただいま……お、メシュじゃねえか。やっとシャバに戻れたんだな!」
 ちょうど帰って来たファルカが、メシュに気づき、頭を撫でてやる。
 ファルカはメシュに対しては結構淡白な態度を取ることが多く、今も久しぶりに会ったのに、その程度の反応しか示さなかった。
 だけど俺は、ファルカがメシュのために泣いたあの夜を知っている。
 感情をコントロールできるファルカがそれを出来なかったあの夜を知ってるから、俺はファルカの喜びが分かる。
「いや、別にメシュは捕まってたわけじゃないぞ」
 だけど、俺は、あえてそう答えた。
「まあいいじゃねえか。今日は、珍しい食いもんも手に入ったし、宴会でもするか!」
 ファルカが手を上げて言う。
「あんたにしてはいいアイディアね、じゃ、今日は宴会っ!」
 ユキも手を上げてそれに乗る。
 メシュも気が乗っているのか、手を上げる。
「じゃ、今日はメシュの歓迎会をするか!」
 そして、俺も勢いよく手を上げる。

 こうして俺たちは、四人で暮らすことになった。
 俺は三人が好きだし、三人も多分俺に好意を持ってくれているが、決してハーレムではないと思う。
さて、一応この話はここで終わりです。
今後も続きそうですが、ここまでで大体小説一冊分でしょう。
これ以降は、要望を一定以上頂けるなら書きたいと思います。

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  • 10 user
  • 最終掲載日:2017/09/22 03:09
無職転生 - 異世界行ったら本気だす -

34歳職歴無し住所不定無職童貞のニートは、ある日家を追い出され、人生を後悔している間にトラックに轢かれて死んでしまう。目覚めた時、彼は赤ん坊になっていた。どうや//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 完結済(全286部分)
  • 15 user
  • 最終掲載日:2015/04/03 23:00
異世界はスマートフォンとともに。

 神様の手違いで死んでしまった主人公は、異世界で第二の人生をスタートさせる。彼にあるのは神様から底上げしてもらった身体と、異世界でも使用可能にしてもらったスマー//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全451部分)
  • 9 user
  • 最終掲載日:2017/09/17 12:20
賢者の孫

 あらゆる魔法を極め、幾度も人類を災禍から救い、世界中から『賢者』と呼ばれる老人に拾われた、前世の記憶を持つ少年シン。  世俗を離れ隠居生活を送っていた賢者に孫//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全123部分)
  • 9 user
  • 最終掲載日:2017/09/22 23:45
エルフ転生からのチート建国記

天才魔術師は、魔術を極めないまま死にゆく運命に抗うため、記憶を残して輪廻転生する魔術を作り上げた。輪廻転生を繰り返し、三十一周目の世界で魔術師はエルフの村に住む//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 完結済(全105部分)
  • 10 user
  • 最終掲載日:2017/05/26 15:17
モンスターのご主人様

ある日、とある高校にいた学生が全員まとめて異世界に転移された。そのひとりである真島孝弘は、パニックに陥った学生たちに暴行を受け、モンスターの跋扈する危険な森の中//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全210部分)
  • 11 user
  • 最終掲載日:2017/09/23 18:48
俺の家が魔力スポットだった件~住んでいるだけで世界最強~

 自宅でのんびりすることが、最強への近道だった――。  俺の家は世界有数の魔力スポットだったらしく、それを狙った奴らに異世界に召喚された。  ただ、そんな場所に//

  • アクション〔文芸〕
  • 連載(全290部分)
  • 9 user
  • 最終掲載日:2017/06/08 23:58
ライオットグラスパー ~異世界でスキル盗ってます~(旧:異世界で盗賊やってます)

 現世で事故死してしまったアガツマセイジは、ある理由から死後の転生先を地球ではなく異世界に決める。転生時に特別に付与してもらったスキル『盗賊の神技(ライオットグ//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全135部分)
  • 9 user
  • 最終掲載日:2017/09/20 19:00
ありふれた職業で世界最強

クラスごと異世界に召喚され、他のクラスメイトがチートなスペックと“天職”を有する中、一人平凡を地で行く主人公南雲ハジメ。彼の“天職”は“錬成師”、言い換えれば唯//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全282部分)
  • 12 user
  • 最終掲載日:2017/09/23 18:52
転生したらスライムだった件

突然路上で通り魔に刺されて死んでしまった、37歳のナイスガイ。意識が戻って自分の身体を確かめたら、スライムになっていた! え?…え?何でスライムなんだよ!!!な//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 完結済(全303部分)
  • 9 user
  • 最終掲載日:2016/01/01 00:00
絶対に働きたくないダンジョンマスターが惰眠をむさぼるまで

「働きたくない」  異世界召喚される中、神様が一つだけ条件を聞いてくれるということで、増田桂馬はそう答えた。  ……だが、さすがにそううまい話はないらしい。呆れ//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全291部分)
  • 10 user
  • 最終掲載日:2017/09/24 00:00
ディンの紋章 ~魔法師レジスの転生譚~

どこに出しても恥ずかしい就職浪人の主人公は、ある日不運にも事故死してしまう。 目を覚ますと、彼は異世界に転生していた。 もう二度と怠惰な生活なんて送らない。 そ//

  • ノンジャンル〔ノンジャンル〕
  • 連載(全169部分)
  • 10 user
  • 最終掲載日:2016/02/27 22:36
聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について。

 昔、回復魔法を見てすっかり魅了されてしまった俺。しかし教えてもらうには多大な寄付金が必要になる。一般家庭の俺じゃどう背伸びしてもそんな金は出せない。ってことで//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全176部分)
  • 9 user
  • 最終掲載日:2017/09/14 19:00
精霊幻想記(Web版)

主人公のリオは異世界のスラム街で最底辺の孤児として暮らしていた。だが、日本で暮らしていたとある青年の記憶と人格が、七歳のリオの身に宿る。その後、王女誘拐事件に巻//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全191部分)
  • 8 user
  • 最終掲載日:2017/09/23 23:00
八男って、それはないでしょう! 

平凡な若手商社員である一宮信吾二十五歳は、明日も仕事だと思いながらベッドに入る。だが、目が覚めるとそこは自宅マンションの寝室ではなくて……。僻地に領地を持つ貧乏//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 完結済(全205部分)
  • 14 user
  • 最終掲載日:2017/03/25 10:00
詰みかけ転生領主の改革(旧:詰みかけ転生領主の奮闘記)

享年29歳の男――人生をドロップアウトするには早すぎる死だったが、気が付けば領地を持つ上級貴族の息子、ソラ・クラインセルトとして転生していた。 ――主人公の両親//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 完結済(全243部分)
  • 9 user
  • 最終掲載日:2015/04/10 23:00
Re:ゼロから始める異世界生活

突如、コンビニ帰りに異世界へ召喚されたひきこもり学生の菜月昴。知識も技術も武力もコミュ能力もない、ないない尽くしの凡人が、チートボーナスを与えられることもなく放//

  • ハイファンタジー〔ファンタジー〕
  • 連載(全443部分)
  • 11 user
  • 最終掲載日:2017/06/13 01:00
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