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悪いな勇者、このダンジョンは小人用なんだ 作者:钁刈洸一

2日目 フレンドと未熟者のダンジョン

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12話 小さいおっさん

感想、評価、ありがとうございます
 奪われた聖剣を餌にされ、罠にかかってしまったアキラ。
 動けないままPKダンジョンマスターのウルフサルクに眷属契約の儀式をされてしまう。

 だが、眷属にされたはずのアキラはウルフサルクに聖剣を振るった。

 一閃、また一閃。
 聖剣が2回ほど煌くとウルフサルクは肩から両腕を失っていた。アキラに斬られたのだ。

「げぁっ……な、なぜだ?」

「ふん。不意打ちさえされなければ、お前なんかには負けねえ」

 質問の意味は違うだろう。
 アキラ、最初に負けたことも根に持っていたのね。

「くそっ!」

 こちらに向かって走り出す腕なし男。
 ポータル部屋から逃げるつもりか。
 だがアキラの投げつけた自分の腕が足にからまり、転倒。腕がないんで、顔面をしたたかに打ちつけた。

 くっくっくと今度はアキラが嗤う。楽しそうだねえ。

「逃げんなよ。まだお礼はすんでねーんだからよ」

 ぐさっと、聖剣ではなくキャプテンゴブリンが持っていた剣をウルフサルクの足に突き刺した。
 とっても悪役っぽい。

「や、やめろ!」

「聞く義理はねえな」

「なぜだ、お前は眷属になったはずだ!」

 怪我で出血がすごいのによく喋れるな。
 たしかウルフサルクって痛み耐性や失血耐性のスキルを種族特性で持っていたんだっけ。

「ああ、オレはダンジョンマスターの眷属になったぜ。ただしお前のじゃねえけどな」

「なんだと」

「眷属契約ってのは二重契約はできねえ。先に契約した方が優先だ」

「まさか……さっきの小さいおっさんか」

 人を都市伝説のUMAみたいな呼び方すんな。
 中身はおっさんだけど、外面はいいでしょうが!
 ちっこいけどさ。

 アキラは俺の眷属になっている。
 ついでに俺もアキラの眷属になった。
 もしも俺も眷属にしようとした時の対策だ。
 お互い、相手のステータスは見ないように命令した。

「さて、んじゃオレを殺したオトシマエと、聖剣のお礼をするとしますかねえ」

「ま、待て! 無料で復活できたんだからいいじゃねえか。聖剣もお前に戻ったんだ」

 なにそれ。
 生き返れるから殺していいって言うのか、こいつ。
 俺同様に腹が立ったのか、アキラは刺さっている剣をぐりっと捻った。

「がっ!」

「無料で復活できるんだからいいんだよな?」

「アキラ、そこまで。これ以上は死んでしまう」

 死んだら、ダンジョンコアのある場所に復活するはずだから逃げられてしまうぞ。
 俺は死んだフリをやめて身体を起こした。
 いきている俺を見て驚愕の表情を見せるウルフサルク。

 近づいて顔を確認する。
 茶髪ロンゲのウルフサルクの男。
 ふむ。やはりダンジョンマスターは美形なようだ。

「お、お前は俺が殺したはず……」

「一体いつから俺を殺したと錯覚していた?」

「幻覚か!」

 いや、幻覚スキルなんて持ってませんが。
 種明かしなんてするつもりはないんで、勝手に思わせておくけどね。

「卑怯な手を使いやがって!」

「お前が言うか?」

 ドカッとアキラがウルフサルクを蹴る。蹴り飛ばされた男は通路の壁に激突。壁の破片が飛び散り、男は壁にめり込んだ。腕がないので大の字ではなく人の字にめり込んでいる。

 アキラの方は落とし穴の底に槍でもあったのだろう、貫頭衣も穴が開き、破れかけている。
 ギリギリ大事なところが見えないのでよけいエロく見えてしまうチラリズムを体現していた。

 血塗れだったが、それはゴブリンの血でアキラには傷がない。その血で回復できたらしく、ヒールの必要はないようだ。


「だから殺しちゃうでしょ。ヒール」

 死なない程度に男のHPを回復させる。
 ヒールでは傷口は塞がるが欠損部分は再生しない。男に逃げられることはないだろう。
 壁に埋まってるし。

「ほ、ほら、こいつは俺を赦してくれるって!」

 どうしたらそう解釈できるかな。これがゆとり世代?

「こ、い、つ?」

 ウルフサルクの顔のすぐ横にアイスニードルを突き刺す。
 ちっ、ミスって顔に刺さってもよかったんだけどな。レベルが上がったからかコントロールもさらによくなっちゃったか。

「口のきき方がなっちゃないな。まったく最近の若いもんは……」

「フーマ、おっさん臭い」

「いっぺん言ってみたかったんだよ」

 ほら、前世の俺ってあまりそういう偉そうなことを言える立場じゃなかったわけだしさ。

「あ、くせーと思ったらこいつ漏らしているぜ」

「ウルフサルクは恐怖耐性のスキルも持っているはずだけど、助かったと勘違いして気が緩んじゃったのかもな」

「か、勘違い? 助けてくれんじゃねえのかよ!」

 今度はアキラが男の股の間にナイフを投擲。投げたのは落ちていた男のナイフだ。

「口のきき方って言われたよな。なにお前、脳みそ入ってねえの? かわりに頭ん中、スライムでも住んでんの?」

 ううっ、なんかイジメっぽいのでアキラを止めたい。
 こういうのはガラじゃないんだよね、俺。
 ダンジョンマスターなんてヤクザな商売はむいてないみたいだ。

「俺、赦すとか助けるとか一言も言ってないけどね。赦してほしいなら謝罪じゃないかな?」

「す、スンマセンしたっ! 赦してくださいっ!」

「赦してもらえると思ってるわけ? オレの大事な聖剣奪っといて」

「か、返したじゃないか!」

 あれを返したって言い張れるこいつすげえな。
 厚顔とかのスキルがあってそれを持ってるのかもしれん。

 アキラも呆れ顔で大きくため息。

「なあフーマ、こいつ全然反省してねーよ」

「だから言ったじゃないか。こういうやつは逆恨みしてあとで面倒なことになるから始末したほうがいいってさ。さっさと眷属契約してこいつのダンジョンコアを破壊させよう」

 たとえ謝罪しても格好だけだ。反省はしていない。俺にはよくわかる。
 俺もそうだからだ。俺はすぐ謝っちゃうけどね。もちろん反省はしない。

 だって本気で反省してても「反省してねーよこいつ」って言われるんだぜ。「誠意が見えない」とかね。
 こういう場合、絶対すぐには許してもらえない。
 だって見せしめとストレス発散を兼ねてたんだからさ。

 ああ、前世の嫌な思いでがフラッシュバックする。こんなことは早く終わらせたい。自分のダンジョンに引き篭もりたい。

「ちょっ、それはさすがに可哀想だから! コア破壊はしないって約束だろ」

「反省したら、だ。アキラがせっかく助けようとしてくれたのに無駄になったな」

 もちろんこれも、あらかじめ打ち合わせた茶番だ。
 失禁させるぐらいびびらせたんで、三文芝居でも騙されてくれると期待しよう。
 アキラの方が始末しろって言い張ってるのよ、本当は。

「アキラが俺を……」

「そうだ。お前のことは嫌いだがコア破壊するのは、やりすぎだと思う。ちゃんと反省するんだ。さあ、本気で謝ってくれ」

「お、俺が悪かっ……」

「オレの目を見て、ちゃんと謝れ!」

 アキラに怒鳴られ、ビクッと反応するウルフサルク。
 言われるままにアキラの目を見て、ゆっくりと口を開いた。


「オイラが悪かったっす、スンマセンっした!」

 さらに男は、埋まっている壁から無理矢理身体を出そうとする。
 両腕がないのによくやるな。同じ狂戦士のベルセルクよりは低いはずだけど、STR値もけっこうあるんじゃないだろうか。
 ついには壁から上半身を出して頭を下げ、それだけではあきたらず、全身の脱出に成功しながらも土下座を披露する。

「オイラが悪かったっす! なんでもするから赦してくださいっす! コアを破壊しろというならすぐにでもするっす!」

 土下座したまま謝り続けるウルフサルク。

「服を脱げというならすぐに脱ぐっす! 裸踊りをしろというなら3番まで踊るっす! 靴を舐めろというなら喜んで舐めるっす!」

 なんかだんだんおかしな方向に行ってないか?
 もしかしてこいつの趣味なんだろうか。

「オレは靴なんて履いてねーよ」

 アキラもDPがなくて裸足だ。俺と一緒。
 本人はすぐに稼いで買うつもりだったけど、こいつのせいで余裕ができなかったらしい。

「な、ナマ足っすか! 姐御のナマ足なんてそんな恐れ多いっす!」

「姐御?」

「オイラは反省したっす! 姐御の舎弟になるっす!」

「……なあフーマ、効きすぎじゃね、これ?」

 さっきよりも大きなため息のアキラ。
 自分の魅了スキルの効果に戸惑っている。

 胃が痛くなりそうな三文芝居は全てこれのため。
 ウルフサルクに魅了をかけるためだ。魅了スキルはヴァンパイアの種族特性スキル。相手が使用者の目を見ることで補正がかかる。
 エンプレスが女性だと知ったこいつは、ヴァンパイアのことも調べている可能性がある。
 アキラの目を見るのは用心するだろうから立てた作戦だった。

「こんなもんじゃないか? 女帝(エンプレス)の魅了なんだし」

「はいっす! オイラは姐御に魅了されてるっす! 巨乳が一番っすけど、姐御は別っす! 姐御が最高っす!」

 こいつ、おっぱい星人なのね。
 その信念を曲げさせるほど、ヴァンパイアエンプレスの魅了は強力なのか。

「姐御になら血を吸われてもいいっす! むしろオイラの血を飲み尽くしてほしいっす!」

「お前の血なんていらねえよ!」

「いや、ちょっとは吸えって。血子にしなきゃ駄目だろう」

 ヴァンパイア系の場合、ダンジョンマスターとしての眷属だけではなく、吸血鬼としての眷属、血子を作ることができる。
 つまり、配下の吸血鬼だ。

「こんなやつ、いらねえよ」

「もしかしたら役に立つかもしれないだろ。1日で切れてしまうダンジョンマスターの眷属よりも安全だ」

 吸血鬼化は、種族を書き換えてしまうので免疫ができることはほとんどないらしい。
 治療にはDPがけっこうかかるし、この状態なら治療しようともしないだろう。

「チッ……ほら、立ちやがれ」

「はいっす!」

 やっと土下座を止めてすっくと立ち上がるウルフサルク。
 アキラがその首筋に牙を立てる。
 身長差があるので、アキラが精一杯背伸びしているのがちょっと可愛い。

 吸われている男は、さっきまで出血多量で青い顔をしてたのに、血を吸われているのに、頬を紅潮させ目を潤ませている。

「き、気持ちいいーっす! ……ええっ、もう終わりっすか?」

「ああ。これでお前はオレの命令に絶対服従だからな」

「当たり前っす! 姐御の命令は絶対っす!」

 アキラはウルフサルクを仲間にした。


『エージン
 ヴァンパイアウルフサルク
 アキラの血子
 ダンジョンマスター   』


「なあウルフサルク」

「エージンっす! 姐御の舎弟っす!」

「オレは認めてねえ!」

「エージン、お前は種族が変わったからステータスを確認しとけ」

 アキラの抗議をスルーしてエージンに指導する。
 吸血鬼化って血親となる吸血鬼には絶対服従になるけど、強くなれるのはオイシイよな。

「ヴァンパイアウルフサルクになってるっす! 能力値も上がってるっす! 狼化スキルのレベルが上がってるっす!」

「狼化か。そういやオレも持ってたけど使ったことはなかったな。お前はさっきなんでならなかったんだ? 腕がなくても噛みつきぐらいできたんじゃねえか」

「レベル1だと完全な狼じゃなくて、狼耳と尻尾だけだったっす」

 アキラの疑問にぺらぺらと答えるエージン。
 ベルセルクだと熊耳と尻尾なのだろうな。

「日光耐性スキルも手に入ったっす。レベルはマイナス6っす!」

「ああ、弱点か」

「吸血鬼だもんなあ。アキラは日光は?」

「平気だ。ヴァンパイアエンプレスに弱点なんかないぞ!」

 さすがレア上位種族、か。


 吸血鬼化はリスクもある。
 おっさん覚えた。


クイズは引き続き回答募集中です
3章から登場するヒロインを当ててください

1 フィギュア
2 獣人
3 ドラゴン
4 勇者
5 女神
6 その他
7 ヒロインなんていない New

正解者には特に何もありません

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