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悪いな勇者、このダンジョンは小人用なんだ 作者:钁刈洸一

常世の国

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91話 劇薬指定

書籍版、発売中です。
こちらともども、よろしくお願いします。
 俺がこの世界、クラノガイアスに転生してもう二ヶ月ちょいになる。
 先月のあの襲撃以来、邪神のダンジョンには大きな動きはないが再度の侵攻を懸念して新婚旅行にはまだ行っていない。
 強力な眷属の追加を予定している次のガラテアにはまだ一ヶ月以上かかる。
 俺は俺自身と眷属を鍛え、邪神のダンジョンからの襲来に備えていた。

 ダンジョンの改装も順次行っており、ドーム空間で生活していた避難民は全て第2層のフィールドダンジョンに引越し済み。それに併せて第2層も拡張している。
 面積だけでなく地下部分も拡げた。ノームの家のためだ。ノームは地下に家をつくる。じゃないと、日光の影響を受けてしまうからな。
 そのおかげでフィールドダンジョンは他の階層と物理的に繋がっているのではないらしいことも確認できた。一応、階段で移動できるけど、第1層への階段は空中で途切れているように見えている。階段で移動中に急に景色が変わるので驚くよ。

 第2層は大きさ以外もかなり変わった。
 創った当初は空と地面以外なにもない空間だったんだけど、今はもう妖精たちの村ができている。そのそばには畑と林。どちらも拡張中だ。

「……フーマ様。木々の……成長は順調ですじゃ」

 見る度に顔の皺が減ってきている長老トレントのバイカンが報告する。あの皺は加齢によるものじゃなくて瘴気の影響か、ストレスが原因だったのかね?
 会話もだいぶ遅れなくなってきている気がする。

「そうみたいだな。トレントたちのおかげだ。よくやってくれているよ、ありがとう。ただ、くれぐれも()()の扱いは注意してくれよ」

「ありがとうございます。わかっておりますじゃ。……眷属以外には触れさせぬように厳重に管理しておりますじゃ」

 あれとは俺の温泉水と妖精の粉をブレンドして作った植物成長薬である。原料である妖精の粉が、その発生源であるフェアリーたちが俺の眷属になることでパワーアップしたらしく、かなり強力な物ができるようになってしまった。
 俺の眷属以外のトレントが使用した場合に成長、加齢が進む可能性が高いので劇薬指定にしてある。

 ダンマスの館やネットで調べたところ、妖精の粉は妖精の身体から発生してからの持続時間が短いので、今までブレンドするような使用方法はなかったらしい。
 その妖精の粉が、俺の温泉を使うとその時間が飛躍的に延びる。俺が妖精神になったのと関係しているようだ。
 調合をいろいろと試した結果、植物成長薬以外に植物元気薬もつくった。おっさんとしては健康ドリンクレベルのつもりだったのだが、鑑定したらそれどころじゃなかったようだ。

[植物成長薬
 アイテムランクSSR
 植物を急速に成長させる
 妖精神の加護を得た妖精の粉を妖精神が自ら調合した薬
 毒々しい色は調合の際にわざと付けられている    ]

[植物元気薬
 アイテムランクSR
 植物を元気にする
 枯れているように見える木ですらも花が咲く場合がある
 妖精神の加護を得た妖精の粉を妖精神が自ら調合した薬]

 ま、まあ、エリクサーも植物に効くらしいしこっちは植物限定な分、そんな異常なアイテムじゃないよね?
 ……オークションに出すのは控えている。鑑定結果にも妖精神って出ちゃうしさ。

 ともかく、この植物成長薬を使って第2層に樹木を増やしたのだ。その手のプロであるトレントの力もあって、かなりの木々が生い茂る状態になっている。
 妖精たちも建材として有効活用しているが、急速成長させたせいで年輪がおかしな状態になっているのは仕方がないだろう。

「フーマ様、こんにちはー」

「こんにちはー」

 やってきたフェアリーたちが俺を拝んでから、満開の樹木へと飛んでいく。蜜を取るのだろう。ついでに受粉もさせてくれるはずだ。
 植物成長薬は植物を急成長させるが、受粉まではできないのでとてもありがたい。フェアリーの集めた蜜も美味いし。
 ただ、俺に会う度に一々拝んでいくのはどうにかしてほしい気もするが。
 最初のブドウはいつのまにかトレントたちによってブドウ棚になっていて、もう実をつけていた。

「あのへんの実はだいぶ大きくなったな」

「もう……すぐ食べ頃ですじゃ」

 受粉さえできれば実はできる。結実した樹はどうすればいい実ができるか、植物成長薬や植物元気薬を与える量を調整して実験中である。
 出来が悪くても、俺の<複製>の素材にするだけなので無駄にはならない予定だ。

「こないだのサツマイモもおいしかったよねー。今度のも楽しみだよ」

 畑では受粉があまり関係なさそうな芋類を試して、かなりいい成果が出ている。
 前世から持ち込んだ品種なのでうまく育つか心配だったのだが、植物のプロであるトレントと俺の<農業>スキル、植物成長薬ががんばってくれて無事に収穫できた。
 妖精たちと芋掘りするのは楽しかったよ。巨大植物相手なんで、でっかいカブ引っこ抜く童話を思い出したけどさ。
 採れたてのサツマイモで焼き芋したら、やはりというべきか嫁さんや女性妖精に高い人気になってしまった。
 小さいのを選んで焼いたんだけどそれでも大きかったので焼いたのをたき火から出すのちょっと大変だったなあ。

 だが問題点がなかったわけではない。ノームに俺たちサイズのクワを作ってもらったけど野菜のサイズは大きいままなので、小人だけが耕した畑だと深くまで根が張れていないことも判明した。
 畑を耕すのは身体の大きいトレントか、耕運機になるゴーレムを用意した方がよさそうだ。

「順調……ですじゃ。そろそろ二度芋ができる頃合かと」

「二度芋……ジャガイモのことだっけ」

「そうですじゃ」

 一年に二度採れるから二度芋らしいけど、これなら何度でも収穫できそう。
 ジャガイモ収穫できたらなんにするかな?
 フライドポテトやコロッケにしたいんだけど、油がね。
 油の採れる植物はまだ育ててない。いろいろ複製の素材になりそうだから早く見つけたい。
 アキラのようにオークの出るダンジョンでオーク狩ってきたらラードが作れるかな?
 けど、今はうちのダンジョンのことでいっぱいだから、新しいダンジョンに行ってる余裕がない。

「レヴィアの肉じゃがも美味いよな」

「うん。ボクも好き」

 レヴィアに料理を教えたという乙姫は、おっさんを攻略させようとしていたのか、酒に合う料理をメインに教えていた気がする。非常にありがたい。

「任せなさい。ジャガイモならおでんもいいわね」

 おでんか。前世で死ぬ前に食べたかった気もする。
 そうだな。俺としてもおでんなら大根よりもジャガイモと玉子が上位にきてた。

「でもこのサイズだとアツアツのおでんを食べるのはけっこう危険かも」

 おっさんは前世から猫舌だってけど、小人となった今は余計に熱いゆで卵を頬張るのなんて無理そうだ。ウズラの玉子を前世から持ってこれなかったのが悔やまれる。

「じゃあポテトサラダ? マヨネーズたっぷりがいいな」

 キュウリをまだ育ててないけど、ポテサラにはキュウリは入れない派なので問題ない。
 ああでも、妖精島もこれから暑くなってくるみたいだしキュウリと枝豆はほしいなあ。

「さっと茹でて梅肉和えにするのも美味いぞ」

 やばい日本酒飲みたくなってくる。早いとこお米作ってチャレンジしないと。
 菌類を操るスケさんはハチミツ酒ならすぐできるって言ってたし。妖精たちも集めた蜜でスケさんに頼んで造っているみたいだ。
 甘ったるそうなんで、おっさんはまだ試してないけどね。

「梅肉……梅干し?」

「そう。こないだ食べさせたあれだ」

 トレントは水と日光だけで生きられるが食事ができないわけでもないらしく、バイカンに梅干しを食べさせたら衝撃を受けていたっけ。
 今はまだ第2層の森に力を入れているけど、一段落ついたら実をつけて梅干しを作るって張り切っているよ。
 ただ、赤ジソが見つかってないんであの黒ジソを使うことになったらどんな色の梅干しができることになるのかちょっと気になる。

 梅干しもいいけど梅酒もいいな。砂糖じゃなくてハチミツでも作れるから。ハチミツだけのハチミツ酒よりは飲みやすいと思う……度数の高い酒を造る方が先か?

 <複製>なしでの晩酌は遠いようだ。


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