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悪いな勇者、このダンジョンは小人用なんだ 作者:钁刈洸一

妖精神

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88話 アンコ

書籍版、明日10月25日発売です。
あとがきの下の表紙のリンク先、オーバーラップノベルス様のHPで立ち読みと口絵が公開されています。
最新情報は活動報告をご覧ください。
 ダンジョンに帰ってきたら嫁さん(コルノ)に怒られた。
 レヴィアに剥がれた俺の姿が気に食わないようだ。

「なにそのカッコ? ボク抜きで楽しんでくるなんてズルイよっ!」

「いや、これはそういうのじゃなくて。むこうは流血沙汰で大変だったんだよ」

「そんなに血が出ちゃったの? 初めての子の時はやさしくリードしてあげなきゃダメだよ」

 おっさんがそんな乱暴なことするはずが……って、コルノにしちゃってたね。ごめんなさい。

「本当にしてないんだ、信じてくれ」

「冗談だってば。信じてるよ。そんなに泣きそうな顔しないでいいから」

「そうか。あまりおっさんをからかわないでくれ」

 マジで泣きそうになったよ。コルノの初体験で泣かせちゃったの、俺はいまだに気にしてるんだからさ。

「あはは。慌てるフーマがかわいくって」

「……信じてくれてるならいい」

「信じてるってば。フーマがボク以外で婚前こーしょーしないって」

 ぐふっ。やっぱりコルノも気にしてるじゃないか。
 どうして俺はあの時、もっとコルノを気づかってやれなかったんだ……。
 落ち込んでいるとコルノが近づいてきて、そっと俺を抱きしめてくれた。

「ごめんね。ボク、フーマのこと大好きだからね」

「俺も……」

 俺がコルノに嫌われてないか不安になったのを察してくれたのか。本当におっさんには勿体無いほどのいい嫁さんだよ。
 俺もコルノを抱きしめ返してその頭に顔を埋める。ああ、コルノの髪はいい匂いがするなあ。このままベッドへ急行して、あの初体験をやり直ししたい。

「司令官殿! 服を着たであります」

「い、今はダメだあ」

 せっかくいい雰囲気だったのにムリアンコマンダーがぶち壊してくれた。それをハルコちゃんが止めている。
 どうやら、ムリアンコマンダーの着替えがおわって報告にきたようだ。

「フーマ様、お邪魔しちゃってごめんなさいだ」

「あ、ああ。……ハルコちゃんも大変だったみたいだね、ご苦労様」

 迷彩の軍服を着込んだムリアンコマンダーが出てくるんじゃないかと心配していたが、ハルコちゃんが頑張ってくれたようでなんとかメイド服に見えないこともない服を着ていた。……柄は迷彩だったが。かぶっているのもメイドキャップではなくやはり迷彩柄のベレー帽だし。

「これで任務もバッチリであります!」

 ええと、逆に聞いていいかな?
 それでバッチリな任務っていったい?

「に、似合ってるよ、うん」

「そっかなあ?」

 コルノ、正直に言わないでいいから。ハルコちゃんが困るから!
 話題を変えるべきか。

「そうだ、お前にも名前をつけないとな」

「ネームドにしていただけるでありますか!?」

 急接近して聞いてきた。そんなに驚くことかね?

「まさか自分がネームドになれるとは! 死んでいった同胞たちも浮かばれるであります!」

 そこまで喜ぶこと?
 これはいい名前をつけなきゃいけないな。
 ううっ、そんなキラキラした瞳をされるとプレッシャーがでかい。

「うーん……ムリアンコマンダーだから……ムリコマ、はさすがに変か。むう……アンコ、でどうだ?」

 悩んだあげくに種族名から搾り出した名前だったが、彼女は「はっ」と踵を揃えて敬礼しながら了承してくれた。

「いい名前であります! これより自分はアンコを拝名するであります!」

「よかったね、アンコちゃん」

「いい名前だの」

「ありがとうであります、コルノ奥様殿、ハルコ殿」

 適当につけた名前なのに、そこまで喜ばれると心が痛い……。
 あと十二人もアリ子の名前を考えなきゃいけないとか、どうしよう。進化してどう変わるかわかってから考えればいいか。
 それと、アリ子たちが女の子に進化した時の服は普通のメイド服にするよう、ハルコちゃんに頼んでおこう。

「それで、レヴィアちゃんたちは?」

「まだ話があるって」

「そっか。レヴィアちゃんらしいね」

「そう、なのか?」

「そうだよ。レヴィアちゃん面倒見がいいんだよ。ほら、ウンディーネみたいに水精は恋に命をかけるタイプ多いじゃない。そんな子をたくさん世話してきたんだって」

 レヴィアは水の支配者や管理人を自称している。実際に水棲のモンスターや水の精霊の元締めみたいな存在らしい。
 だからって、配下の色恋沙汰の面倒まで見ているの? 自分の婚活も苦労してたのに……。
 本人に聞くことはできないな。トラウマ発掘の可能性が高い。

「ちょっと気になるけどそれは置いといて、コルノに聞きたいことがある」

「なに? リニアちゃんの好きな花?」

「そっから離れて」

 それも聞きたいけどさ。女の子どうしだからそんな話題も出てるのかね。

「ゴーレムって斬り飛ばされた腕とか、遠隔操作できるのか?」

「え? そうなの?」

「リニアのゴーレムアームがそれをやってた」

 コルノが驚いた顔をしている。レヴィアも転倒させられたぐらいだから、あまり知られてないことなのかもしれないな。

「まさかロケットパンチ!?」

「いや、飛べないからそれは無理だろ。バネかなんかで射出するにしても帰りがあるし」

 ずりっずりっと指で這って帰ってくるロケットパンチなんて怖すぎる。
 かといって有線で巻き上げる機構も内蔵するのが大変そうな気がする。

「それもそっか」

「だけど、もしも本体と切り離された部分が見えないなにかで繋がっているのなら応用はできる」

「そう?」

 そう!
 俺が考えているのはリモコンだ。

「ゴータロー、レッド以外の量産型ゴーレムは応用が利かないだろ」

「まあ、命令に従うだけだよね。でもある程度はファジーだよ」

 ファジーって最近聞かないような……家電製品に使われてたのって、ほんの一時期なのに。これもおっさんの転写知識か。

「臨機応変な現場の判断ってのは苦手だろ。今回だって、ハエの対処ができなかった」

「それはそうだね。だから、ゴーレムは眷属の命令を聞くようにしてるんだし」

「今はゴータローとレッドがメインで指示を出しているけど、ゴーレムの数を考えたら指揮官が足りない」

 ゴータローみたいな意思のあるゴーレムの造り方はいまだに不明だ。その方法がわかるのが一番だけど取っ掛かりすらつかめていない。

「だから、フェアリーたちをそれに育成しようと思う」

「あの子たちを?」

「ああ。ゴーレムの身体の一部を携帯させて、それに命令するようにすれば離れた場所からでもゴーレムに指示できるはずだ」

 あのショタフェアリーたちを眷属にしても戦闘力なさそうだったけど、これなら役に立ってくれるだろう。危険も減るし。
 なにより、ショタの語源とされるキャラクターってリモコンでロボを動かしてたんだよね。ショタフェアリーにピッタリじゃないか。

「ふーん。パートナーゴーレムか。面白そうだね」

「いろいろ実験する必要はあるけど、ゴーレムの活用の幅は広がると思う」

「うん。やってみるよ!」


 ◇


 コルノとともにリモコンゴーレムの実験をしたり、巨大空間や第2層のフィールドダンジョンの状態を確認をしているうちに、レヴィアとリニアがダンジョンに帰ってきた。

「おかえり」

「ただいま」

「た、ただいま」

 斬り飛ばされたヒビだらけのゴーレムアームを片腕で抱きしめているリニアはちょっと挙動不審だ。
 チラチラとこっちを見ているのに目を合わせてくれない。
 あ、でも傷は治っているな。さっき治せなかったから、帰ってきたらすぐに治すつもりだったのに。
 ――後で聞いたのだが、レヴィアが治したらしい。今までは<回復魔法>は必要がなくて使えなかったのだが、練習したらすぐに習得したんだと。

「リニア」

「は、はい!」

 レヴィアに名を呼ばれて、ピンと背筋を伸ばして返事をするリニア。いったいなにがあったんだろう。

「フーマ!」

「はい?」

「ええと……あの……その、だな」

 カツラで隠れている耳まで真っ赤になって声がどんどん小さくなっていくリニア。
 ついには下を向いてしまい、強化された俺の聴覚ですら聞こえなくなってしまう。
 もっと大きな声で、とつっこむべきだろうか?
 レヴィアを見ると腕組みしてじっと俺たちをみつめたまま無言で動こうとしない。

「リニアちゃん、がんばって!」

「うんうん、青春だねえ」

「ファイトだ!」

「なんだかよくわからないでありますが、応援するであります!」

 ……他の外野はうるさい。
 いつのまにか第2層に避難していた妖精の女子たちまで現われてて口々になにか言ってるし。
 余計にリニアの声が聞こえないでしょ。

「だ、だから!」

 顔をあげて、やっと聞こえる声になったリニアを俺も励ます。

「リニア、落ち着こう。ゆっくり深呼吸だ」

「こ、告白しようってのに落ち着いてなんかいられるか!」

「告白?」

「あ……」

 さらに真っ赤になってしまった。
 そして固まってしまった。目の前で手を振っても反応しない。

「リニア」

 再び名を呼ぶレヴィア。
 そしてやさしい声で続ける。

「私と戦うよりも、告白する方が怖いの? なめられたものね」

 声はやさしかったが、なぜか背筋がゾッとする。殺気まじってません?
 リニアもそれにビクンと反応した。

「フーマ、あたしはあんたが好きだ。迷惑だろうけど好きなんだ!」

「いや、迷惑なんかじゃないけど」

「ほ、本当に?」

「ああ。ありがとう、リニア。嬉しいよ」

 迷惑じゃないと言った時にリニアの背後で睨むように見ていたレヴィアの殺気がやわらいだので、どうやら選択肢は間違えてなかったようだ。断っていたらどうなっていたか。

「う、ううう……」

 え? まさか暴走?

「うわぁぁぁぁ」

 リニアが号泣し始めてしまった。腕組みをといたレヴィアが浮いたまま急接近してその背中をぽんぽんとやさしく叩く。

「よくがんばったわ」

「あり……ありがとぅ……あた、あたし……」

「ええ。今はお泣きなさい」

「よかったね、リニアちゃん」

「青春だねぇ」

 コルノたちもリニアを囲み、次々に彼女を祝福する。ミーアが涙ぐんでいるのなんて初めて見たよ。
 女子妖精たちまでもが祝福に参加していた。フェアリーの少女が飛び交っている。

 なにこれ? 告白されて、それを受けた俺が蚊帳の外なんですけど。
 むう。あの人数に一緒に祝福されるのは勘弁してほしいけど、これはちょっと違うんじゃないか?

 ぽつんと取り残された俺に、見回りがおわったテリーが近づいてきて、ぽんと肩を叩かれるのだった。


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