夏に聞く話。
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俺の名前は飯田翔太。
出版会社に勤めて3年目になった現在20歳の社会人だ。出版会社といってもオカルトや都市伝説といったマニアックな感じの本しか出していないし、社員は4人しか居ない。
まぁ自分で言うのもアレだけど、この会社には未来は無い。まぁ今月一杯で辞める自分には関係の無い話しだけど。
他の人達も近々辞めると聞いている。
そして取材が俺の仕事だから、今日の取材が最後の仕事になる。こんなバカらしい仕事が今日で終わると思うと、最高な気分だ。
今日8月4日は俺にとって最高の記念日になるだろう。
今日の取材の内容は、ある心霊能力者に取材するという、この時季になると良くある仕事だ。
そして『霊を外に出す事が出来ない』とかで、初めて聞く様な田舎に行くハメになる。案の定、今日も田舎にある山道を何キロと車で走っている。
そして、10キロぐらい山道を走ると目的地に着いた。
「やっぱりかぁ・・・」
毎回そうだ、こういう取材をする場所は昔使われていた民家だ。
そして最後にこの家にも霊が居るとか言って『除霊』として色々変な事をされる。
一番最悪だったのは、真っ赤な水を頭から浴びせられた事だ。不運にもその時に着ていたのは高級メーカーのスーツ。
あの時だね、辞める事を決めたのは。
そして、俺は早く取材を終わらせるために、さっそく民家に入った。
ギィーーー
古くてスムーズに開かない扉を開けると、そこには着物を着て正座をしている老婆が居た。
「すいません。今日の取材を担当します飯田翔太と申します。よろしくお願いします」
俺はビジネス用のスマイルで挨拶した。
「こちらこそ、こんな山奥に来ていただきアリガトウございます」
老婆の言葉に『分かってんなら、お前が来いよ』と言いそうになったが、そこは我慢した。
「いやぁそんな事無いですよ」
俺は本当の気持ちを殺して嘘を言った。そして、俺は老婆に近づき、その場に座った。
「それでは取材の流れを説明します。今回は怖い話を1つ話して貰うだけです」
俺が説明すると老婆が頷いた。そして、怖い話を始めた。
「これは2年前の話です」
――――――――――
ある18歳の青年が居ました。その青年は周りの青年とは違う生活を贈ってました。友達とゲームしたり、彼女とデートしたり、という『娯楽』を一切しない生活を送ってました。
彼にとって友達や彼女は生きていく上で邪魔な存在でした。友達や彼女だけじゃなく、地球上に居る全ての人間が邪魔でした。
彼に取っての『娯楽』は人が居なくなる事。つまり人殺しが彼の『娯楽』でした。
案の定、彼の周りの人間は家族に始まり、親戚や同級生など、次々と死んでいます。そして、15歳になると彼の標的は知人から他人に変わりました。
そして、彼は15歳で殺し屋を始めました。
始めると直ぐに彼の殺し屋は裏の世界では有名になりました。
彼を有名にした理由は15歳という年齢以上に値段の安さでした。
何千万から何億円が相場の中で、彼の場合は何万円というタダに近い値段で取引してました。
その激安の中でも120円という価格での殺人は極悪非道な裏の世界の人々でも恐れました。
それに、120円で殺された人の知人は、怒りさえ失い、ただただ涙を流す事しか出来ませんでした。
そんな120円で命を落とされた本人は今でも現世に残って復讐を企んでいるそうです。
――――――――――
ガクガクガクガク
俺は老婆の話に震えと冷や汗が止まらくなり言葉を失った。何故なら極悪非道な少年は俺自身だからだ。
「何で知ってる」
俺は顔を真っ赤にしながら老婆の胸ぐらを掴んだ。
しかし、老婆は焦る事無く冷静に口を開いた。
「今、あなたが此処に居るのは偶然ではありません」
老婆の意味深な一言で俺は冷静になり、胸ぐらから手を離した。
すると、老婆は話を続けた。
「あなたが此処に来るのは5年前から決まってました。あなたが120円で殺した人は、死んだ直後に私の所に来ました。そして、復讐をするために5年前から此処に住んでます」
老婆の話に耳を疑った。
(アイツがこの場に居る)
その現実を聞くと、妙な汗が止まらなくり頭がパニックになった。
「分かってるなら早く除霊してくれよ。お前なら出来るだろ?」
いつもなら、こんな話は信じないで聞き流しているが、自分自身の話という事も有り信じた。
「確かに可能ですが、それは依頼人の約束を破る事になるので出来ません」
老婆の言葉を聞くと体の力が抜け、放心状態になった。
「アナタは命を軽く見すぎた。コレはその罰です」
老婆がそう言うと、肩が妙に重く感じた。
明らかに何かが乗っかてる。しかし、それを触る勇気も見る気力も無い。
俺はただただ怯える事しか出来なかった。
「違う、違う。俺は悪くない。俺は依頼人の言うことを聞いただけだ」
俺の精一杯の抵抗だった。
それを言うと、肩の重みは頭の痛みへと変わった。
風邪の症状の様な軽い者じゃない。今にも頭が真っ二つになっても可笑しくない位の痛みだ。
「あっ・・・うっ・・・いっ・・・」
もう喋る事すら出来なくなった。
(もう殺してくれ)
心で願う事しか出来なかった。
そして、頭の痛みが続く中、今度は顔に違和感が出てきた。
(何かが触れてる・・・手だ)
優しい力でゆっくりと手で顔を触ってる。手はアゴ、口、鼻、と段々に上がっている。そして、手は目の所で止まった。
俺は直ぐに目を閉じた。
「アナタは昔から人を嫌ってきた。嫌うだけなら未だしも、自分のわがままで他人の命を潰した。そんな人があっさり死ねれる程あの世の人は優しく無いのよ」
老婆の言葉は聞こえたが、理解する力が残って無かった。
そして、老婆が言い終わると、顔が妙に冷たくなった。すると、今度は目から激痛が走った。
さっきまでは優しかった手から力が溢れだしていた。
そして、その力で目を潰しに来た。冷たかったのは目から出た血だった。
「アナタはラッキーだね」
老婆の一言を聞くと自分の気力を全て失った。
そして、自分は地下深くの世界へと逝った。
「もう、済んだのかい?」
「・・・・」
「そうかい。なら良かった、役に立てて良かったよ」
「・・・・」
「へぇ〜。だから早めに終わらせたんだ。あの世での楽しみを取っておくために」
「・・・・」
「それにしても何でアナタも地獄に逝くんだい?」
「・・・・」
「言いたく無いなら大丈夫だよ。じゃあね」
老婆の前には、首が離れた死体と120円が置いてあった。
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