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ある家族とちょっとした夏ホラー2007
作者:サイレンス
*注意*懸命なる読者様、参加者の皆様お疲れ様です! さて、このある家族シリーズ、正直あんまり怖くはありません。少しホラーに疲れた皆様のお口直しにどうぞー!
「さ〜て始まるザマスよ」

ドラキュラの格好に扮した武蔵(たけくら)零がニヤニヤ笑いながらどこか、世間を見るよう
な目で言った。

「いくでガンス」

全身に毛だらけの、多分オオカミ男(正確には女だが)狼男に変装した麻蔵 蘭が妙に深みの効いた声でまた世の中に言い放った。

「ふ、ふんがー」

終いには無理矢理なのか、フランケンシュタインと化したになった神田 あすかが涙声で呟いた。

「マトモに始めろよ……」

そう、俺ことナオキが静かに突っ込んだ。


〜〜ある家族と恐怖、夏の大惨事by夏ホラー2007〜〜


これはアイツの一言で全てが始まった。

「さて、我が愛するお知り合い方! 夏と言えば! 」

夏休みも既に終盤に差し掛かった八月の十五日。一族のお墓参りも終わり、何故かこの零に緊急招集された我ら。

「夏と言えば……花火? 」

と、武蔵家の長男のムサシが太陽光線ほとばしる外を眺めながら呟いた。しかしこの当主はノンノン、と首を横に振る。

「確かにそれもあるけどそれはこの前見に行ったでしょ? 」

「じゃあ、かき氷なんでどうですか? 零おねーさま」

蘭は、上に合成着色料で真っ赤に染まっているかき氷を零に手渡したが、

「んー、惜しい。考えは間違ってないんだけど……しかしかき氷のシロップて色は違うのに
どれも同じ味がするわよね。それにブルーハワイって何よ? ブルーハワイって! 青いシロップってどう見たって身体に悪いじゃない」

と、否定しながらかき氷を口に運ぶ。俺としては、この部屋は十分すぎるほどクーラーが効いているし、かき氷なぞを食べたらお腹を壊しそうな感じがするのだが。

「ほら、そこのアイドルと渚ちゃん! 何か思い付かないの? 」

と、某S○S団の団長の様な無茶振りでアイスを貪るグラドルの神田 あすかと静かに読書をしていた渚クンまで巻き込むこの団長。この二人は家の家族では無いのだからこう無駄に自称、緊急集会などに呼ばなければいいのに。二人だって家の都合というものがあるだろう。翔は実際来ていないし。

「ボクは蚊。誰が何といっても、蚊! 」

「グラビアアイドルがなんつー夢の無いお話言っちゃってんのよ! ビーチでうきうき夏模様を楽しむとかそういう気の効いた事は言えない訳? 」

「だって、実際ボクの血が美味しいのか毎晩毎晩、蚊が襲ってくるんだもん。ぶんぶぶんぶと夜も眠れずっては良く言ったもんだよ」

それはそれでまた意味が違ってくるのだがな、とオレは心の中で思いながら、茶を啜った。

「で、一体何がしたいんだ、お前は? 」

「やりたい事はただ一つ! 夏ホラー大会2007! 」

「あぁ、お盆だからか? 」

「夏に怖い話しないで何時怖い話する気なのよ! 旬のネタは腐らないうちにやるのがポイントよ」

と、やる気満々な霊……じゃなかった、零の発言により急遽タケクラ家夏のホラー大会が行われる訳だ。

本当はそれまでに零が銀のトレイを持って必死に何かをアピールしていたり、怖がりな蘭が決死の説得にあたったり、作者が締め切り間際だというのに、さよなら絶○先生を見てしまったりと色々あったのだが締切が今夜に迫っているという事で非常に残念であるが割愛させてもらう。すまないな。それにこれ以上コメディ色をだすと親愛なるホラー好きな読者様に怒られそうだしな。

と、いうわけで十二時間後――

「それでは、遅れてきた翔も来た事だし、第四回タケクラ家ホラーの会を始めます〜」

「「「「いえーい」」」」

と、静かな盛り上がりを見せる深夜。四方に立てられた蝋燭の淡い光だけが俺達を照らす。これだけでもなかなか雰囲気が出るものだ。

「本当は百物語みたいな事をしたいんだけどさすがにそれはしんどいから、一人一つ怖い話をしていくって事にしましょう。順番は私から時計回りでいいかしら? 」

じゃあ、私から。と零は事前準備してきた懐中電灯で顔を照らしながら話を始めた。

「これは私がまだ小学生の頃だったかしら。ウチの本家は古い家だからまだ蔵とかが残っていたわけ。私も幼馴染とよくその蔵の探検をしていたんだけど、一つだけ開かない蔵があったのよ。大きな鍵が掛かっていてね、大人達に聞いてみてもそれは元からそうなっていたって言う答えしか貰えなかったから子供としては興味が沸くじゃない? そう、もしかしたら宝物が眠っているんじゃないか、とかって」

どこからともなく風が入り込んでいるようだ、蝋燭の火が揺れ動く。

「ある日、ちょうど大人達が居なくなった隙に私と幼馴染はその鍵の掛かった蔵をどうにか開けようと模索したわ。裏口があるんじゃないかって蔵の周りを探してみたり、どうにかして鍵を開けようとしたり……だけどそんなのは全然見つからない。私達は策に尽きて、最後の手段、その鍵を壊そうとしたの。手ごろな石で何回も鍵を叩いているうちにその鍵は外れて、私達はようやくその蔵へ入ることが出来たの。その胸の高鳴り、怖いもの見たさと宝物の期待感、忘れる事は出来ないわ。そして、ようやくはいった蔵だけど中は思った以上に物という物が無かったの。がらんどうとしてね、けどもしかしたらもっと古い刀とか槍とかが有ったのかも知れない。けど、私とその幼馴染の目はあるものに釘付けになっていたの」

火が揺れる。それがまた雰囲気を出して良いのだろうが。零は話を続ける。

「そのある物、それは何かの桶みたいなもの、首桶って知ってるかしら。有名なのは平将門の首を納めたと言われる首桶ね。それが一列に、無数に並んでいたのよ。私達にはそれにしか目がいかなかった。もちろんそれが何か、なんていうのはその時は分からなかったわ。ただ、それが何なのか確かめてみたかったのよ。だから私達はその一つに手をかけた。そして中を見た」

怖いものが全般的に苦手な蘭は耳を塞ぎながら震えている。もちろんムサシの傍でだが。

「中には何かの液体、そしてそれに浸かった何か。それがニンゲンの首って分かったのには数秒掛かったわ。怖かった、本当に目の前にあるのは嘘かと思った。だってその生首、腐ってなんていなかった。きれいな男の人の首、造り物かとも思ったけど、その首、息をするのよ、ぶくぶくぶくぶくぶく、液体から気体が漏れ始めた。幼馴染は恐怖の余りつい、その首桶を倒した、いや蹴り倒したの。流れる液体、転がる首はちょうど私達の方を向く様に。その首の顔、臭いそしてあの……」

外で何かが転がる音がしたような気がした。蘭の身体がびくっと震える。

「表情。あの首は確かに私と目を合わせ、笑ったのよ。嘲笑うように。ニヤリ、と。私は目を逸らした。するとね、周りの他の首桶からも笑い声が聞こえるの。ハハ、ハハハハ、ハハハハハハハハハって、その時は私の聞き違いだと思った。だけど、やっぱり聞こえるの。幼馴染も青褪めてた。笑う、笑うの、どんどん声が大きく、ハハハハハハハ、ハハハ、アハハハハハハハハ……」

零の表情が曇った。俺の空耳もただの空耳ではないらしい。ここにいる零以外全員が聞こえる空耳らしい。

「……その後、私達は大人に泣きついてその蔵に一緒に来てもらった。だけど来た時にはそこに首桶なんては無くて、あるのは、壺とか、骨董品の類しかなかったの。そう、溢したあの液体も、転がった生首も、あんなに沢山あった首桶も……あれは夢だったのかもしれない。けど、けど……あの笑い声、感触は今でも憶えてる。私の少ないトラウマの一つよ」

ハイ、お終い! と零は今までとはうって変わっていつもと同じ明るい口調で終りを告げた。次はムサシ、渚、あすかと用意してきた怖い話を次々に話してゆく。

「つ、次はわたしぃ……」

もはや精神ギリギリカミ○ユ・ビダン並に精神崩壊直前の蘭はぼそり、と口を開いた。

「私、私ね……昔、鏡に向ってじゃんけんをしてたの。もちろん普通に考えてあいこでしょ? けど、一度、一回だけ勝ったの。勝っちゃったの……ハイ、終わり」

「じ、地味に怖いわね……」

再びムサシに寄り添う蘭にぼそり、とあすかが呟いた。確かに。だけど鏡は魔に繋がっているというしな。何かしらのものが居たのかも知れない。

「次ッ! あなたよ、ナオキ」

「と、言われてもな……特にこれと言った怖い話は無いんだ。というか何が怖いのか基準が分からん」

「自分の怖いものを話せばいいのよ。なんでもいいわこの際」

「俺が怖いもの…か」

怖いものと言われてもそう簡単に俺には思いつくものでは無い。別に鼠が嫌いではないし、ゴキブリが苦手と言うモノでもない。いや、待て……

「赤い文字だ」

「赤い文字…って? 」

周りの視線が集まる。別に期待されても困る。

「ああ。毎日毎日つけている家計簿に記されるあの赤い文字が……」

「それはあなたのやりくりでどうにか黒い文字にしてくれると助かるんだけど」

それは無理な相談だな。そのためにはまずお前の飲酒の量を減らす事から始めないといけないんだが。

「まあいいわ。次、翔! ちゃんと最後のトリ、飾って頂戴よ」

遅れてきたこの男は頷くとゆっくり、口を開いた。

「ドッペルゲンガーを知っているか? 自分の姿を第三者が違うところで見る、もしくは自分が違う自分を見る現象だ。自分で自分の姿を見るとその本人は死ぬ、というオカルトな類の話だ。実際にリンカーンや、芥川龍之介がドッペルゲンガーを見ているらしい。それでだ、このドッペルゲンガー、正体はなんだと思う? 」

「正体といわれても、ドッペルゲンガーって普通のお化けじゃないの? 」

「普通はな。けど、俺はもしかしたらドッペルゲンガーってやつはヴァニジング・ツイン、別名ミッシング・ツインの吸収された片割れじゃないかと思うんだ」

じろっ、とこちらを睨む零を始めとする無知な人達。もちろん懸命なる読者様は知っているとは思うがここは俺が説明させてもらおう。

「ヴァニシング・ツインというのはな、母の胎内によって双子と認識されようともその片割れがもう一方の片割れに吸収されてしまう事だ」

なるほど、と頷く無知メンバー。興味を持った君はHPを使って調べてくれ。

「胎内でもう一人の自分に肉体が吸収されても魂だけは一つに統合されなかった。一つの肉体に二つの魂。統合するはずが無い。だけど統合されなければ肉体が滅びる。だから肉体の無い魂はその肉体の片隅に身を潜める。大体は『裏』としてそこで本体と共に一生を過ごす。中には二重人格として表に出るもの。本体の異常に気付き、その身代わりになり共存するもの。そして……新たな肉体を得るもの」

「肉体って……」

「要は魂の無い肉体。そこに潜り込めばいい。しかし、それに満足出来ない物はもう一人の本体、いや、自分を創り出す。それがドッペルゲンガー。肉体を持たない魂が創り出した虚像の自分。本来あるべき姿の自分。しかし問題が生じる。この世に定められた人物が二人いるのだ。秩序が崩れる。だからドッペルゲンガーは自分自身を探す。本来の人物さえいなくなれば自分が『本来』になるのだから」

なるほど、と俺は頷いた。だからドッペルゲンガーは会うと本人は死ぬというわけだな。

「だけどそれは儚い夢。虚像ではどう足掻いたってそれは幻に過ぎないのさ。本人を殺したってその肉体になるわけじゃない。元々魂を植えつけられた肉体を得る事は出来ない。ドッペルゲンガーはただの本体じゃない。本体に成り済ましたもうひとつの本体なのさ」

そういうと、翔と皆に呼ばれているこの男は立ち上がり、フフッ、と皆に笑いかけるとそのままトイレ、と出て行ってしまった。

そして数分間、沈黙が続く。

「お〜う、みんな! やっとウチから開放されたよ〜って、ウン? みんなどした」

と、明るい口調、そうこれがいつもの翔がやってきた。沈黙を続ける全員はじろっと翔を睨む。この沈黙を破ったのは零だった。

「か、か、翔!? な、何いって……あんた始めからここにいたじゃない」

震える声色で尋ねる零に翔は笑いながら答える。

「なにいってるんすか、姉御! 今までウチで親戚と一緒に飲み会やっていてやっと抜け出せたんですよ」

「じ、じゃあ、いままでいたアイツは……」

まぁ、俺は始めから気がついてはいたがな。

「「「「みぎゃああああああああああ!!!!」」」」

こうして、夏のホラー大会は終わり、失神した蘭や腰が抜けたあすかの看病に追われる事になった俺と何も知らない翔。
皆が居なくなった後、俺は一人、後片付けをしながら、そういえばと蝋燭を見る。

四方を囲む蝋燭は確かに一本消えていたのだ。
はい、どうでしたでしょうか?怖くない?おもしろくない?……ひゃー!(泣)

最後の一日は地獄でした。それこそが私にとってのホラー!
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