第028話 牢獄
モトヤがチビとノッポに囚われてから2週間が過ぎようとしていた。
モトヤは段々とこのチビとノッポが何をしているか分かってきた。彼等は牢獄に囚われている人々をどこかのクランに売り払う“奴隷商人”だった。つまりこの牢獄に囚われているモトヤ達こそが奴隷で他のクランなり人なりに売り払われるわけだ。彼等は次々とやってくる傭兵クランや戦いを主とするクランに奴隷を売りつけ利益を得ていた。彼等はそうやって金を稼いでゲームをクリアするつもりらしい。
モトヤは外に吹きざらしになっている牢獄に囚われていた。モトヤは同じく囚われている複数の囚人の中の一人である美少女アリスの方を見つめる。彼女はまた遠くの景色を眺め過ごしていた。
モトヤは時々彼女が夜に泣く姿を見た。この牢獄に居る者はノッポが使う沈黙呪文によって声を封じられている、その為、誰かが嗚咽がするくらい泣いたり大声を叫んだとしても声は聞こえない。その事は彼女にとってはどうやら幸いだったみたいだ。モトヤは彼女が遠い彼方を見つめ泣く姿を何度も盗み見た。
――よほど辛い事があったのかもしれない。
モトヤはそう想像するしかない。だって彼女とは一度も会話したことがないのだから。なのに不思議だ……彼女の力になりたいと願う自分が居るのだ。自分のこの気持ちをどう説明していいか分からない。ただ彼女が泣く姿を見るたびに自分に何かできることは無いだろうかと考えてしまうのだ。
そんな時であった。モトヤの視界によく見知った顔が現れた。“情報屋でん助”である。でん助は通行人にまぎれ吹きざらしになっていた牢獄まで近づいてくると驚くモトヤを半ば無視し牢獄の隙間から手を差し込みモトヤと握手する。そして、でん助の人生スキル“伝える手”を発動させた。
モトヤとでん助の握手している手が激しく光った。でん助の人生スキル伝える手はでん助が持っている何らかの情報をモトヤのオプションの中のメモ帳に書き込むスキルだ。
でん助は発光が終わったと同時に牢獄の隙間から手を引き抜き一礼もせず去っていった。
全てが3~4秒の出来事だったので建物の中にいるチビとノッポには気づかれていない。無論牢獄にいる牢獄仲間には気づかれた。全員が不思議そうな顔でモトヤの方を見てくる。モトヤだって何がなんだか分からない。ただでん助が“伝える手”を発動したという事は何らかのメッセージがモトヤに伝えられたという事になる。モトヤはあまり自由が利かない手を操作し、オプションの中のメモ帳を開いた。
そこあったのはジュンからのメッセージだった。
『この言伝を大金を払い、でん助に頼んだ。俺は今、ホークマン率いる鷹の団に所属している。ホークマンと交渉し、ここにお前の席を設けることでお前の帰る場所を作った。だからバルダーエリアのバルダー城まで来てくれ、俺は迎えにいけない、というかお前が今どこで何をしているのかというのは分からない。でん助がお前を見つけて帰り次第その情報を受け取る事になっている。最後に俺……つまり杉原淳二がこの情報を発信したという確かな証拠を残しておく。お前の事だからこのメッセージが偽のメッセージかもって勘繰るかもしれないだろ? だから俺は俺とモトヤしか知らないモトヤの最大の秘密を暴露することで俺からの情報だと信頼してもらうことにする。えーとゴホンじゃあいくぞ。 “最後にモトヤがオネショしたのは中学2年の夏だ” どうだ間違いなく俺からの情報だろ? じゃあバルダー城で待ってるぜ』
モトヤはこの情報が確かにジュンから届けられたものだと確信した。世界広しといえど、このトップシークレットを知る者はジュンと母親しかいない。だが確信はしたが納得はいかなかった。
――あいつ……頭おかしいだろ……バラす情報の中身考えろよ! これで俺は魔物使いのモトヤじゃなく “中2までお漏らし野郎のモトヤ”とかいうあだ名つけられるじゃねーか!!
2~3分怒っていたモトヤだったが、ようやくやるべき事がハッキリした瞬間でもあった。ホークマンの仲間になるのはかなり抵抗があるが、それでもジュンが言う情報に間違いがあるとは思わなかった。ホークマンはモトヤとジュンを殺すよりは仲間にした方が良いとふんだのだろう。
――だが、エルメスの一件はどうなったんだ? エルメスをハメ殺したという事に関してヤツは俺の口を塞ぎたいハズなのだが……。
モトヤはこの問題に関して自分に何度も問いかけたが、やがて考える事をやめた。
――ホークマンの仲間になるかどうかは後で決めればいい、とりあえずジュンと合流する方が先だ。
少なくともモトヤにはジュンの所在が分かっただけでもありがたかった。いざとなればジュンだけ鷹の団から脱退させ二人で逃げることも可能なのだ。
――とりあえずバルダー城まで行こう。行けば分かるさ。
だがその為にはこの吹きざらしの牢獄から脱走しなければならなかった。誰かに売られると、もうジュンの元へは戻れないのだ。売られてしまう前に何とかしなければいければならない。
モトヤがそう思考したのには理由があった。奴隷は売られる際に“対象のクラン脱退ボタンを消滅させる”という処理を施されるためだ。これはどういう事かというと、文字通り奴隷は自主的にクランから脱退できなくなるのだ。通常こんなことはできるわけがないのだが、それを可能にする人生スキルがあった、それがノッポの人生スキル“奴隷の鎖自慢”だ。このスキルはどこかのクランに入団した後にクランメンバーに対し行うとクランメンバーは自分が所属しているクランから自主的に脱退できなくなるというスキルだった。
このスキルは何を目的にしていたかというと、つまり奴隷たちをクランから脱退できなくさせることによって『脱走の心配はないですよ』という保証をつけ売るのだ。すると買い手は安心する。脱走される恐れが小さくなるからだ。だがこのスキルには制約があるらしく、クランの所属先が決まってからでないと行使不可能という制約を帯びているのだそうだ。これはノッポ自身が買いに来たクランの連中と話しているところを盗み聞いたからおそらく間違いはないだろう。
となるとモトヤは自分の買い手が現れるまでの間に脱走をしなければいけなかった。できれば、その時あの外を眺める少女アリスも連れて行きたかった。
――どうすればこの牢獄から脱出できるんだ……。
モトヤが牢獄を見回すと中に繋がれている囚人達と目が合った。皆さっきの“伝える手”によっておこった発光現象が気になっているみたいだった。一応下は土なので指をなぞることによって簡易的なメッセージであればコミュニケーション可能だ。
もう一度囚人達の方を見た。その目は何かを期待する目だった。
――なるほどそういうことか。こいつらは俺の仲間が外に居てこの牢獄から脱出するのを手伝ってくれるんじゃないかと思ったのか。まぁそうだよな。
モトヤは地面に指で文字を書いていき、アリスを含めた囚人達はそれを見つめる。
“なかまじゃない”
囚人達は一斉に“なんだよもー”といった感じのリアクションを見せた。アリスも少しガッカリした様子だった。だがこのリアクションで分かった事があった。当たり前だがこの囚人達もそしてアリスもこの牢獄を出たいのだ。その意思を確認できた。
モトヤは再度地面に指で文字を書いてゆく。
“にげたい!”
最後の“!”は意思を強調したかった。囚人達は顔を一斉に横に振る。まるで“無駄なんだよどうやったって”と顔に書いてあるみたいで、それは判を押したみたいに全員がそのような顔つきだった。だが唯一人アリスだけはまっすぐ文字を見つめたままだった。そして今度はアリスが地面に文字を書く。
“ちんもくさえなければじゅもんがつかえる”
モトヤはアリスの方を見る。アリスはその身なりからすると、どうやら魔術師のようだった。沈黙呪文さえ解ければ、この牢獄から脱出できるとでも言いたかったのだろうか? 沈黙呪文の効果は喋れないだけではなく呪文さえも封じ込めるものなのか……。
だがモトヤは首をかしげる。レベルというのは誰からでも見る事ができるのだが、アリスはまだレベル1の状態なのだ。沈黙の効果を消したところで一体どんな強力な呪文を唱えられると言うのか。
するとまたアリスは地面に文字を書いた。
“あては?”
脱獄した後のあてを聞いているのだろうか? しかし、まるで沈黙さえなくなれば当然のように脱獄できると思っているみたいだ……このアリスの自信はどこからくるのか……。
モトヤは地面に文字を書く。
“バルダーじょう”
囚人達が一斉にモトヤを見る。このキャッスルワールドにクラン多しといえど、城持ちクランはそうはないからだ。
それを見て少女アリスも何かを羅列したように書いてゆく。
“アイテムある?” “やまびこそう” “人せいスキルはつどうぼう”
そう書いた後にアリスは牢獄の囚人の面々を見渡した。皆顔を左右に振る。それは“そんな物はもっていない”という反応だった。
もう一度ルールを繰り返すが、自分からは他人のアイテムやステータスなどは見えない、逆も同じで他人からは自分のアイテムやステータスは見えない。見えるのは名前とレベルとHPだけだ。そのおかげでチビやノッポでさえ囚人達が本当は何を持っているかという事は把握できていない。そのかわりに物理的な破壊が困難を極める頑丈な牢獄を用意し、牢獄の中で自由が利かないように手足を牢獄につなぎ、沈黙呪文をかけることで囚人達の魔法詠唱を封じた。これでチビとノッポは完全に囚人たちを牢獄の中に閉じ込めたつもりだった。
だがこの手足は50cmほどであれば動かすことができた。その手で地面に文字を書いたり、オプション項目を操作することができたのだ。
――ん? 待てよ……人せいスキルはつどうぼう?
モトヤの中で約一か月前の女商人の言葉が蘇ってくる。
『大丈夫! 100ゴールドもあれば……そうね、これなんか買えるわ【 人生スキル発動棒 】え~なになに? これを刺すとMP消費なしで人生スキルを発動させることができます? 自分にも刺しても他人に刺しても有効ですが既に人生スキルを会得している人ではないと意味がありません? また刺すと人生スキルが勝手に発動するのでくれぐれも取扱いには気をつけて下さい……これはえ~と……消耗アイテムね!』
――人生スキル発動棒ならあるぞ!! アイテム欄の中にあるはずだ!
モトヤは自分のアイテム欄から“人生スキル発動棒”を探しだす。
――あったぞ! よし!
次にモトヤはアイテム欄から人生スキル発動棒を取り出すと、それをアリスに渡した。だが、その直後にノッポがやってきて牢獄の外から鉄格子を両手でガンガンと揺らしモトヤ達に向かって怒鳴りつけた。どうやら地面に文字を書いていたあたりから監視されていたらしい。
「お前ら今何をした。なんかアイテム取り出してたな!! それをよこせ!!」
アリスはうっすら微笑み右手をノッポの方に向け、人生スキル発動棒を左手に隠し持った。
「なんだぁ女?」
次の瞬間アリスは人生スキル発動棒で自分を刺した。
するとアリスとノッポが同時に赤く光り始める。
ノッポは明らかに動揺していた……だが発光が終わると、ニヤリと笑う。逆にアリスは驚いた顔をし、左右を見回している。
――なんだ? アリス……なんでそんな顔をしている。
アリスの顔は明らかに動揺した顔つきだった。モトヤはその顔から計画が失敗したのだと勘づいた。
――馬鹿な……さっきまで自信満々だったくせに……。
「ったくなんだったんだ、さっきまでの自信は…………あれ?」
モトヤはどうせ聞こえないと思って出した声が空中を伝わり耳に届いている事に驚く。モトヤは自分の背後に立つノッポの方を見上げた。ノッポは全員の沈黙呪文の解除をしているようだった。やがて他の囚人の声も聞こえ始めた。
「やった!! やっと声が出せるぞ!!」
「ホントだ!! やった!!」
「なんだ? なんであいつが?」
モトヤは再びアリスを見た……だが相変わらず動揺したような顔つきをしている……だがよく見ると……なんといえばいいのだろうか、雰囲気が違うのだ。下品な……と形容すればいいのか、先ほどまで高根の花のような高貴な雰囲気を醸し出していたアリスはそこには居なかった。そこに居たのはまるで……何年も詐欺事件で服役をしているような顔つきのアリスだった。
――これはひょっとして……。
モトヤはもう一度ノッポの方を向くと、ノッポは女の口調でこういった。
「これが私の人生スキル“魂の交換”よ……対象が3m以内にいるなら魂を一定時間交換できるの。つまり、今は私がアリス、そして私の体に入り込んでいるのがコイツよ。ふぅ沈黙呪文解除!!」
ノッポ(アリス)はそう言うと、本来の自分の肉体(アリスの肉体)に向かって沈黙呪文の解除を施した。
するとアリス(ノッポ)が勢いよく喋り出す!!
「テメーら!! ただじゃおかねーぞ!! ナスリーーー!! やられたぁあ!! 奴隷にやられた!! 早くこっちに来ぉぉい!!」
その間にもノッポ(アリス)はアイテム欄を操作し沈黙効果を消す“やまびこ草”をアイテム欄から一個残らず取り出し牢獄の隙間から牢獄の中に投げ入れた。
「なにぃぃ? 奴隷がどうしたってぇ??」
チビのナスリが建物の中から叫ぶ声が聞こえる。恐らく数秒後にはここに到達するだろう。
「沈黙呪文!!」
ノッポ(アリス)はそう叫ぶと、肘を折るように自分の胸に手をあて自分に向けて沈黙呪文を放った。
――何をする気だアリス?
「大丈夫か!!」
建物からチビのナスリが飛び出してきた。手には分厚い包丁を握っている。するとノッポが再び鉄格子を両手で握り激しく牢を揺らし何かを叫んでいた。ノッポが注視していたのは牢獄の中にいるアリスだった。
モトヤはよく状況が分からない。なぜノッポになったアリスは突然歯をむき出しにして牢を揺らし始めたのか……そもそもなんでノッポ(アリス)はナスリに対し警戒態勢をとらないのか……。
――まさか……。
モトヤは牢獄に繋がれたアリスの方に向かって首を振り向く。すると今度は牢獄に繋がれたアリスが静かに喋りはじめた。
「分かるわね? 人生スキルを解除したの。今は私がアリス」
アリスはそのまま喋り続ける。
「誰か城持ちクランに所属する人が現れるまではここで待とうかと思ってたけど……もうやめたわ……だってモトヤがバルダー城のクラン関係者なんですもの……ならば私はもうここに居る意味はないわ……レベル暗幕呪文解除」
するとアリスのレベル表示が不吉な音と共にみるみる変化しはじめる。
ジジジッジジッジ
この場に居た全ての人の表情が青ざめてゆく……チビもノッポも囚人達も……無論モトヤもだ。なかには同じ囚人であるにも関わらず震えだす人もいた。
牢獄の外にいたチビとノッポは尻もちをし次に牢獄から離れるように走りだす。それを見ていたアリスは右手を逃げるチビとノッポに向け呪文を唱えた。
「逃がさない。拘束する薔薇呪文」
アリスの手から黒い棘のあるツルのようなモノが二人に向かってグングンと伸びてゆき、チビとノッポをグルグル巻きにした。捕まった二人は黒い棘のあるツルから逃げようと懸命に足掻くが、足掻けば足掻くほどツルがふたりを締め上げてゆく。
「あなた達……この呪文から逃れようとするのは、止めておいた方がいいわよ……足掻けば足掻くほど締め上げてHPを吸い取る上級呪文なの……私の拘束する薔薇呪文は……」
そこに居たのはレベル1のひ弱な魔法使いなどではなく、寒気すらするレベル13という表示を背負う恐ろしい魔法使いだった。モトヤもアリスのレベルと能力に戦慄する他ない。
「10数えるわ……私達、全員分の鎖を外す鍵と牢獄の鍵をこの牢獄に投げ入れなさい。もしも投げなかったとしてもあなた達の死体から探すわ、きっと肌身離さず持っているだろうから。どっちでも結果は同じだと思うけど……好きにして」
アリスはそう言うと拘束する薔薇呪文を操作し、縛りあげた二人を牢獄のすぐ外まで近づける……そしてまた別の呪文を唱え始めた。
「炎呪文」
アリスがそう唱え終ると、アリスの左手の指の一つ一つが燃え始めた。モトヤはりっちゃんと一緒のクランで教わったことを思い出していた。
――りっちゃんに教わった情報と違うぞ……魔法使いは補助呪文を除けば二つの魔法を同時に使うなんて出来ないハズだぞ。
ナスリも同じことを思ったらしく、驚愕の表情でアリスに喰ってかかる。
「馬鹿な! 魔法使いは二つの攻撃呪文を同時に使えないはずだ! なぜお前は!」
アリスは指先の一つ一つが燃え盛る左手を二人に向け話す。
「そう“魔法使い”ならね……。いい? そろそろカウントを始めるわよ……10、9、8」
「待て!! なぁ待とうぜ!! 落ち着いて話し合おうぜ。話し合えば分かりあえるさ、な?」
「7、6、5」
アリスの呟く声には有無を言わせぬ迫力がこもっており、10数え終わった後には本当にチビとノッポの殺害に移るであろうことがモトヤや囚人にも予想がついた。なんといってもアリスはレベル13なのだ。殺しなど屁でもないのだろう。
「分かった! 分かった降参だ!! ほらよ!!」
チビのナスリはあっさりとポケットから鍵の束を取り出し中に投げ入れた。どうやらコイツは諦めも早かったようだ。投げ入れられた鍵によって囚人は次々と自分達の鎖を外してゆく、モトヤも急いで鍵を外し、手が離せないであろうアリスの分の鎖も外す。アリスはモトヤに微笑みかけたあとにモトヤの肩を借りて立ち上がった。
囚人達は牢獄の鍵も開けると久々に牢獄の外に出た。
「生き返るなぁ」「シャバの空気はうまいぜ」
モトヤとアリスも外に出た。その後にアリスは拘束する薔薇呪文を操作し、二人を牢獄に閉じ込め鍵を閉めた。
「鎖をつけないでおくのはせめてもの情けよ。鍵は私達が十分にこの街から離れたと判断した時に、この街に行くという人に渡すわ」
モトヤはアリスに耳打ちする。
「複製を作っている可能性はないか?」
アリスは驚いた顔でモトヤを見た。
「確かにその可能性は否定できないわね……でもじゃあどうすれば……」
このアリスの問いにモトヤが即座に答えた。
「アリスのさっきの炎呪文ってこの鉄格子を溶かすことはできるのか?」
「ええ、まぁ程度によるけど少しドロッと溶ける程度なら出来るわ、それがどうしたのモトヤ」
「それで十分だ……この鍵穴の中をドロッと溶かしてくれアリス、それなら確実に追跡を防げる」
「でもそれじゃあ鍵が意味無くなるわよ」
「大丈夫、こいつらはアイテム欄に恐らくそれなりの食糧を持ってるから、その間になんとかするだろうさ」
アリスはモトヤの目を見る。モトヤもアリスの目を見返した。アリスはモトヤの目からある種の覚悟を感じた。
「いいわ、そうしましょう……でも必ず案内してもらうわよ。バルダー城まで」
「言われなくてもそうするよ」
こうしてアリスや囚人達を含めたモトヤ達一行はチビとノッポの入った牢獄の鍵穴の部分を溶かし、牢獄に二人を閉じ込めた後にバルダー城を目指すのであった。
実は2章がとんでもない分量になっているのでチビのナスリの人生スキルの説明はカットさせていただきました。チビの人生スキルは右手で現在触っているものと、現在触る前に触っていたものを瞬間的に入れ替えるという能力になっています。なのでモトヤを捕えた時にチビは2mくらいの小さな牢を触っていて、その前に触った肉と瞬間的に入れ替えました。こうしてモトヤは捕まったわけです。ノッポの万歳はチビへの合図だったのです。