落書き
気付けば、机の端っこにちまちま描いてあった落書き。
一体だれが、どんな目的で書いたのかは、俺には分からない。
でも、見ていくにつれて、どんどんとその落書きが増えていくのが分かったんだ。
机の隅にしかなかったはずの落書きが、どんどんと増えていく。
見ている間じゃなくて、夜とか、誰かが見ていない間に増えていくようで、夜警の人も、その書いている姿を見たことはないっていう話。
ただ、その落書きが書かれた机は、老朽化も激しくて、落書きがある方向に傾きつつあったんだ。
それで、捨てることになったんだよな。
捨てる前日になって、最後だから、全部落書きで埋め尽くそうぜって言う話になってな。
誰が提案したかなんて、もう覚えてないな。
小学校の話だからな。
それで、鉛筆やシャーペンを持ち寄って、一人一つの絵だけを書くっていうことにして、どんどんと空白をなくしていったんだ。
最後のやつが書き終わると同時に、落書きが空中へ自然に浮き上がって行くんだよ。
目の前でだよ。
でも、不思議と怖さは感じなかったんだ。
なんだろ、言うならば、感謝かな。
そんな感じで、それらの落書きも全部消える頃には、机は、新品のように綺麗になっていたんだ。
もちろん、廃棄は無しになったんだよ。
でも、だれもあの時のことは先生には言わなかった。
あれは、みんなで共有しておくべき秘密だからな。