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明日、雨になれ

作者: 摂津 麹

短編は書くにも気軽で、気持ち時間はそんなにもかからないようにも自分は思います。

やはり、書き続けないと書く人の語彙力、表現は抜けていきます。

継続は力なり。サクッと今回も楽に読める内容となっております。

ただし、今回は現実世界です。

頭をからっぽにしてどうぞお読みくだいませ。

6月は梅雨で雨が多くて困る。

洗濯をしても干せない、干してもまた降ってしまう。

部屋でやるとシャツが生乾きで臭いで全くたったものではない。

「あぁ、またやってしまった」

私、大野幸雄はベランダで絶望していた。

Yシャツに下着のシャツやパーカーなど、その他もろもろがずぶ濡れだ。

せっかく晴れていた空は、あっという間に厚い雲に覆われていた。

「またやり直しか」

おかげで洗濯機を回すのが手慣れてしまった。

洗剤柔軟剤も無駄にはできない。

かと言って仕事で日中出ている私にとって、そのために帰ってきて洗濯物を取り込むのは無理な話である。

「あー、やっちゃったかぁ」

ふと、どこからかそんな声が聞こえた。

その声を聞くに私と同じように雨にやられてしまたのだろう。

こんな間抜けが意外といるものだ、と私はほくそ笑む。

ベランダを少し乗り出すと、同じ階の右からだった。そこには私と同じ年に見える三木さんがいた。

驚いた、まさか同じ会社の同期の女の子だったとは。

最近の集合住宅は、昔は引っ越してきた部屋の同じフロアか上下左右の部屋へ最初に挨拶したりするものだ。

だが、近頃はなぜか管理会社あるいは不動産屋からその最初の挨拶は控えてほしいというのがある。

私がそうだった。

入社後、このマンションに引っ越してきてから管理会社に言われて廊下で出くわすか、自治会で会うかにしかしていなかった。

彼女は三木順子といいこの春、私と同じ会社に入った同期だ。入社前の研修も、同じ課で班が同じの毎日顔をあわせている。

仕事では『できる新人』として同期の中では一番出世に近いと噂されている。

「あれ? 大野くん?」

振り返ると彼女が覗き込んでいた。

「や、やあ。 三木さん同じマンションだったんだね」

我ながら恥ずかしいことに声が上ずってしまう。

「同じも何も、まさか隣だとは思わなかったなぁ」

「そうだね。 挨拶しないように言われてたし、まさかこの二ヶ月一度も顔合わせなかったなんてね」

「ほんと、こんなこともあるものね。 街じゃなくてマンションで会うとは」

仕事場じゃなくベランダで世間話も気恥ずかしかったので話題を変える。

「それより雨大丈夫? 予報じゃ晴れだったからこっちは洗濯物全滅だよ」

「私も。また洗濯よ」

「はは。 ほんとやになるよね」

意外だった。

いつも仕事場では完璧超人で、誰も追いつける気配がしなかった彼女。

そんな彼女にも完璧では無い面に少し安心というか、かわいいと思えた。


ちくしょう。またやってしまった。

それから一週間後、またしても突然の雨にやられてしまった。

昨日は珍しく完璧に晴れが続いたので、休日だったことが幸いに洗濯を終えていた。

一日分の洗濯はたいしたことは無いので素直に諦めることにした。

「ああああああ!! やっぱりずぶ濡れだ…」

右のベランダから聞こえてきた。

どうやらまたやってしまったらしい。

少し覗き込むと、ベランダで膝を抱えてがっくりとうなだれる彼女がいた。

誰しも失敗はある、そこからどうリカバリーするかが重要。

彼女、三木順子の仕事の信念だ。

まぁそんなこともあるさ。

どうやら今週、今日で雨にやられたのは三度目らしい。

最初のときも天気の話題から色々話し込んだ。

あれからどちらか片方、あるいは二人同時にやってしまったときはベランダでのおしゃべりが決まりになっていた。

愚痴、相談、流行、ご飯など話して飽きない。

会社では仕事面での会話しか無かったが、こうしてプライベートでも彼女とお近づきになれたのは嬉しかった。

事務的な内容が、笑いや冗談の交える楽しい話題。

小さい頃は晴れが好きだったが、この時ばかりは雨に感謝だ。

外がしとしとと、音を立てる日にご機嫌なのは初めてだった。

これからもうまくやっていきたい。

子供の頃にブランコに乗って、必死に漕ぎ靴を放り投げる。

あした、てんきになあれ。

靴がしっかり立つと晴れになると願いそれを一喜一憂していた。

それを大人になって雨を願う私はあまのじゃくか。

明日、雨になれ。

「あーした、てんきになあれ」

つぶやき、ベランダサンダルを上に少し放るように蹴り上げた。

ベランダのコンクリートの床に落ちたサンダルは真っ逆さまにひっくり返っていた。

明日は雨だ。


だが一つ気がかりなのが、彼女のベランダサッシの部屋側に洗濯カゴが置いてある。

そのカゴが、雨がふる度に衣類の山ができていることだ。

ひょっとするとその辺が不器用なのかもしれない。

いかがでしたでしょうか。

私個人は晴れが好きです。やはり洗濯物がたまるのはいやですし、でかけるのも傘の常備は嫌です。

夏はムシムシするし、冬は気温がどっと下がります。

ただ、雪は好きですね。雪国育ちではないので、雪の怖さよりレジャーの楽しさでしか知りません。

安易に雪が好きだと言うと雪かきが大変なことを怒られてしまいそうなのでこのへんでしときましょう。

今回は天気がキーワードでした。


次は連載予定のもの意外は未定なので、連載が先かまた短編かはわかりません。

それでは次回をお楽しみに

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