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第二十二話 屋敷

 王城の陛下より呼び出しがかかった。まだ朝一番という時間に。

 使者が今すぐ王城に来るようにとのことだった。

 普通は呼び出しかかってから時間あるよね? って聞いたら陛下より「いいからすぐにこさせるのだ」と言われたらしい。

 仕方ないので、そのまま使者の馬車に乗せてもらい、王城へ向かった。

 案内をしてもらい、いつもの応接室にて座って待つ。

 いつも紅茶を出してくれるのだが、それがとっても美味しい。今度お菓子でもつくってお礼に持ってきてみよう。

 少し時間を置き、陛下と宰相が入ってくる。

 とっさに席を立ち礼節をとる。


「カイン待たせたな、うるさいやつがいての。なかなか出れなかったのじゃ」


「美味しい紅茶を出していただきましたので、楽しんでおりました」


 陛下がいつもの席に座り、隣に宰相が座る。


「まず、お主に渡す屋敷が決まったのだ。元々は子爵家が持っておったが、脱税に横領、誘拐奴隷等犯罪のオンパレードだったから、取り潰しして全て没収した。今は王家が管理しておる。それをお主にやると決めようとしたらコルジーノのやつめ、反対してきて長引いたわい」


 またコルジーノ侯爵か。息子といい親といい困ったやつらだ。


「まぁ無理やり決めてきたか問題ない。この先通うことになる学校にも、王城からも遠くないから便利じゃぞ。あとでマグナに地図をもらうといい。これで用事は済んだな。ではやるぞ」


 陛下はそう言いながらリバーシをテーブルに出してくる。


「エリックのやつがなかなか強くてな、発案者であるお主とやれば、少しは強くなれるじゃろ?」


 陛下、どっぶりはまったな。

 順番にパチリ、パチリと打ち始める。


「あ、そこ置いたら角取られちゃいますよ。ほら」


「あっ!!! お主!!! 王に向かって少しは容赦しろっ!」


「陛下、強くなるために経験したかったのでは?」


「むぅ。ではここじゃ!」


 王と五歳が真剣にリバーシをやっている。その姿を見ながら、マグナ宰相はため息をついた。

 二時間ほどリバーシを打ったあと、次の面会があるからと言って、陛下が出て行った。


「カイン殿、陛下がすまんな。これが屋敷の地図と鍵になる。執事のほうは今、公募をだしているので決まったらそちらに教える。メイドは若手を数人王城から派遣しよう。家具類は前のやつで悪いが、そのまま置いてあるから好きにしてくれ」


「マグナ宰相、ありがとうございます。執事やメイドが必要な広さなのですか」

 

「ガルム辺境伯の屋敷ほどは広くはないが、それなりの広さになる。貴族になると人を雇うことも大事だからな。金は使わないと経済は回らないぞ。まぁそのことを五歳に話しても仕方ないか。また陛下から相手をするように呼ばれると思う。その時はよろしく頼む」


「わかりましたマグナ宰相。屋敷ありがとうございました」


 まだ時間が十分にあるので、馬車を断り王城を出て、一人で貴族街を歩く。もらった屋敷は貴族街より一般街に近いところにある。このエスフォート王都は中心に王城、貴族街があり、その周りを商業街、住宅街となっている。学校は貴族街と一般街の間にあり、どちらからでも通える


「ここか、思ったより広いな」


 目の前には百メートル四方の敷地で中央の奥に二階建ての洋館が建っている。

 建物は凹のような形になっており、真ん中に入口がある。

 庭を歩き、扉の鍵を開けて中に入る。灯りがないので窓から差し込む太陽の光りだけだ。

 『光球(ライトボール)

 手から光の球が浮かび上がり、周りを明るくする。


「派手な装飾品は全て没収されているか、シンプルになっているから、こっちのほうがいいな」


 建物は扉の正面が階段ホールとなっており、右側がダイニングとキッチンがあった。左側はパーティができるほどのホールと応接室などがあった。もちろん貴族の屋敷なので浴室もある。

 二階にあがると両側に部屋がいくつもあり、主寝室から客間まで確認できた。


「こんなでかい家を、一人で切り盛りできるのかな。ちょっと掃除でもするか」


 魔力を練り、建物全体を魔力で覆う。


建物清掃(オールクリーン)


 建物が一気に綺麗になっていく。壁の染みも絨毯の汚れを全て落ちた。


建物補修(オールリペア)


 建物の古くなった部分から、全て新しくなっていく。

 建物がまったく新しい状態になった。


「これでいいかな。あとはまた新しくくる執事さんに相談すればいいか」


 部屋のあちこちを覗きながら、必要に応じて魔改造していく。自分の住む家だから問題ないはずだ。本格的に住み始めたら、防犯システムもつけたいし。


 ある程度満足したら、外に出て鍵を閉めてガルム邸に戻る。


「お帰りなさいませ、カイン様」


「ただいま、今帰ったよ。そういえばシルビア、少し話があるんだけどいいかな」


「はい、大丈夫ですよ」


 シルビアがいつものように笑顔で答えてくれる。


「さっき、陛下からもらった屋敷を見てきたよ。ここの屋敷よりは小さいけど十分な広さがあった。マグナ宰相が執事や、メイドを手配してくれることになっているんだけど、できればシルビアにも、僕の屋敷に来て欲しいかなって思って。もちろん父上に確認が必要だけどね」


 シルビアは涙目になりながら頷いている。


「もちろんカイン様についていきますよっ。カイン様のお世話は私の仕事ですから。連れて行ってくれなかったら、お暇をもらってカイン様のところに行くつもりでした」


 シルビアが胸を張って答える。うん。そこそこある。さすがに五歳じゃ欲情しないけど。


「夕飯の時にでも、父上に話しておくね。とりあえず疲れたから部屋で休むよ」


 そう言って、カインは部屋に戻っていった。



 ◇◇◇


 夕食の時間となり、皆で食事を食べる。


「カイン、今日陛下に呼ばれたのは何があったのだ?」


 ガルムが聞いてくる。


「拝領する屋敷が決まったので、鍵をもらってきました。あとは陛下とリバーシの相手を。その後、時間がありましたので、いただいた屋敷を見てきました」


「……リバーシか、先日、わしも陛下の相手をさせられたぞ。エリック公爵が強すぎると言ってたな。いよいよカインも独り立ちか、執事やメイドはどうすると言っておった?」


「マグナ宰相が手配してくれるそうです。執事については公募になると言ってました」


「執事は大事だからな、留守の間守ってくれるのも執事の仕事だ」


「それで、父上お願いがあるのですが、シルビアですが今まで僕の専属メイドできていたので、そのまま引き取りたいのですが」


「うむ。それは構わんぞ。カインが産まれた時から世話してもらってるからな。全員知らないより、一人でも知ってるのがいたほうがよいしな」


「父上、ありがとうございます」


「ガルム様、私からもお礼を言わせてください。カイン様が産まれた時から、仕えさせていただきありがとうございます。これからもカイン様に、一生懸命仕えさせていただきます」


 シルビアが頭を下げてお礼を言う。


「シルビアには、三歳の時から文字などを教えてもらったから、今があるんです。こちらこそよろしくね」


 カインがシルビアに礼を言う。


「カインくん、行っちゃうのかー? 寂しくなるね」


 父との会話を聞き、レイネが悲しんでいる。


「レイネ姉さま、ここから遠くない場所ですからいつでも会えますよ。引越しするときに屋敷も見せますよ」


「そうねっ! 会いたくなったら会いにいくわ」




 そして一週間後に引越しすることになった。 

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― 新着の感想 ―
[気になる点] なんかレイネの口調が最後変わってた
[気になる点] なんかガルムの口調が安定しませんね。 30代くらいの喋り方をしていたかと思えば、突然年寄りくさくなったりするし、私的な場での一人称も「私」「わし」とコロコロ変わっているように思えます。…
2021/02/13 23:22 退会済み
管理
[一言] それで、父上お願いがあるのですが、  →それで、父上にお願いが有るのです。
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