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第九話 冒険者ギルド(12/3修正)

 初めて、教会以外で外にでる許可がもらえた。


 もちろん、ミリィとニーナの護衛付きということだが。

 領都の外壁の外に出るということで、サラからは子供用の革鎧とローブ、武器としてショートソードを貰った。

 部屋で貰った装備を身に着けている。


「カイン様、とっても素敵ですよ」


 いつでも褒めてくれるのは、メイドのシルビアだ。


「初めての外ですからね、外壁周りでも危ないですから、十分注意してくださいね」


「うん。わかっているよ。ケガでもしたら、外に出してもらえなくなりそうだし気を付けるよ」


 装備を整えて外にでる。

 母のサラと、姉のレイネが待っていた。


「カイン、よく似合っているわ。魔法の練習とはいえ外には魔獣がいるのよ。気をつけなさい」

「カイン君、外に出たときの話聞かせてね!」

「母上、それでは行ってきます。夕方までには戻りますから」

 

 ミリィとニーナの後を、歩いてついていく。


 敷地の門をくぐり、二人に連れられて領都を歩く。

 大通りは石畳で舗装され、屋台らしきものも沢山出ていた。

 外にいる人は賑やかで、この街が繁栄しているのがわかる。父上は至極まともな領主なのだなと納得しつつも、目新しいものばかりで、キョロキョロと見まわしていた。


「そんなに周りをキョロキョロしていたら、田舎からきた人みたいだぞ。親が領主様なのだから、堂々としていればいいのだ」

「いえ、領主の息子といっても三男ですからね。成人したら冒険者になるつもりですし」

「まだ五歳なのに、何か子供らしくないな。その位の年で、親が領主ならば、もっといばっているイメージしかないのだが」

「両親にも、領民あっての貴族だからと教育を受けていましたからね。領民が栄えるからこそ、税収があがる。それで僕たちは食べさせてもらっているのだと」

「ここの領主様は、善政を敷いているので、ギルドでも有名だからな。私たちも、他の街からここを移って来たのよ。治安もいいし、森も近くにあるから、ギルドの依頼も多いし」

「うん。ここ住みやすい。食事も美味しいし」


 二人ともこの街が良いと思ってもらっているみたいだ。父上の政策が上手くいっているってことだな。

 満足しながら歩いていく。


「あ、外壁に出るなら一度ギルドに寄っていいかしら。もしかしたら、外の情報もあるかもしれないし」

「ギルド行ってみたいです!」


 カインは目を輝かせ即答する。

 街を歩き、盾に剣が交差している看板が見える。それなりに大きな建物だ。

 扉を開けて中に入る。

 正面には受付があり、右側には依頼と思われる用紙が掲示板に貼られていた。

 左側には、待合スペースと食事処みたいなところがある。

 まだ朝なのに、すでに飲んでいる冒険者たちもいる。

 そのまま三人で受付まで進む。


「ルディ、ちょっと聞きたいんだけどいいかしら」


 犬耳の獣人の受付嬢が、顔を上げ笑顔で答えてくる。


「あら、ミリィじゃない。今日はどうしたの?」

「外壁の外で訓練でもしようと思ってな、魔獣が出ているのか確認にきたんだ」

「それならホーンラビットと、たまにウルフが出ているだけで、目新しい情報はないわよ。それにしても今日は可愛らしい子を連れているのね。弟子でもとったの?」


 ミリィは受付嬢のルディの近くまで寄り小声で話す。


「今、依頼を受けている、領主様の御子息だ。訓練のために、これから外にでるつもりだ」


 ルディは慌てて立ち上がり、カインに向かって頭を下げる。

 冒険者の恰好した子供なのだ、まさか領主の子供だとは思っていなかったようだ。


「あ、これは失礼しました。ご子息様とは知らずに、私は冒険者ギルドで受付をしております、ルディといいます」

「カイン・フォン・シルフォードです。まだ五歳で冒険者登録はできませんが、十歳になったら冒険者になる予定です。その時はよろしくお願いしますね」

「あら、礼儀正しいのね。気軽にルディって呼んでくださいね」

「それじゃ、行ってくるわ」


 ミリィたちは、そのままギルドの出口に向かう。

 食事処で飲んでいる冒険者たちの一人から声が掛かった。


「おい! ミリィじゃねぇか。なんだよ、ガキなんて連れて。子守なんてしてないで、こっちで一緒に飲もうぜ」

「そうそう。ガキなんて放っておいてこっちで飲もうぜ! そのまま夜も付き合えよ。満足させてやっからよ」


 ミリィもニーナも嫌な顔をしている。


「私たちは今、依頼中なの、酌相手が欲しいなら娼館にでもいったら」


 興味がなさそうに言葉を返す。

 そのまま出ようとしたら、一人の男がニーナの腕を掴んできた。


「俺たちの言うこと聞けねぇのかよ?」

「あなたたち離しないよ」


 ミリィが言い放つ。


「あ? Cランクのクロス様に文句あるのかよ? お前らはDクラスだろ? 上の言うことを聞いて酌すればいいんだよ!」


 なんかテンプレみたいのがきたぁぁぁ!! 思わずウキウキしてしまったカインだ。

 だが、このままではいつまで経っても外に出られない。


「すいません。これから一緒に出るので、離してもらえますか」


 カインは、すっと前に出て、ニーナを掴んでいる男の腕を叩く。

 武神の加護に、体術ももっている。とても五歳には思えない力だ。


「いてぇぇ。てめぇガキのくせになにしやがる!! てめぇは許さねぇ。教育してやる!」

 

 腕を叩かれたクロスは、カインに殴りかかった。

 カインは体術を駆使して、寸前で一歩横によける。そのまま相手の懐に入り込み、膝の内側に蹴りを入れる。


「このガキ絶対許さん! 死ねやっ!!」


 鞘から剣を抜き、切りかかってきた。


「あぶないっ!!!!」


 ミリィが叫ぶが、飲んでいるせいか、剣筋もイマイチだし簡単に避ける。

 鞘についたままのショートソードを引き抜き、鞘で相手の顎を打つ。

 相手は白目を向いて、そのまま倒れた。

 周りは茫然である、飲んでいるとはいえ、Cクラスの冒険者が、五歳児に倒されたのだ。


「何をしている!!!」


 突然の大声で、そこにいる全員が声を出したほうに向いた。

 そこには、倒れている冒険者たちとはまったく違う40代くらいで坊主頭の男が立っていた。


「ギルドマスター!」


 受付嬢のルディが声を上げた。


「ルディよ、何があった? 説明しろ」


 ルディは、今までにあったことを説明した。


「なるほど、とりあえずそこに寝ているやつを運んでおけ。あとで少し鍛えてやる」


 そして、こちらを向きニヤニヤしている。


「領主の三男坊か、将来、冒険者になるなら歓迎してやる。五歳でそれだけ強ければ、Sランクにもなれるかもしれんな」


 カインの頭を撫でたあとに、笑いながら、奥に引っ込んでいった。


「カイン様、申し訳ありません。うちのギルマスはいつもあんな感じなので」


 申し訳なさそうに、受付嬢のルディが頭を下げる。


「いいですよ。気さくなギルドマスターでいいですね。私はケガもありませんしね。それに早く外に出たかったですし」


「カイン。ありがとう」

 

 ニーナが膝をついて抱き着いてきた。

 抱き着かれたことに驚き、ちょっといい匂いに、カインはにやけてしまう。

 エルフだけに、ちょっとスレンダーで、胸のボリュームが足りないのが残念だった。


「話は終わったし、とりあえず外に行こう」


 ギルドを出て、三人で門に向かって歩く。


「それにしてもカイン、剣も魔法も使えるのに体術もできるんだね」

「カイン。強い」

「家で本を読みながら特訓しました!」

「本読んで特訓したくらいで、Cランクの冒険者が、簡単に負けるもんか。ただ、外に出たら何が出るかわからないから、注意するんだよ」


「ミリィさんわかりました」


「私がカイン守る。安心して」


 ニーナが守ってくれるそうだ。ミリィと違って、あまり余計な事は話さないけど優しい。


「ニーナさんありがとう!」


 笑顔を返しておく。

 話しながら門をくぐっていく。門番がいたがミリィが話をつけてくれた。

 さすがに、領主の息子を止めることは出来ないだろうし、仕方ないよね。

 それにしても、領都の門だけあり、かなり大きかった。外壁も5メートル位の高さで続いている。

 

 

 やっと外に出れた。

 門をくぐると、街道がまっすぐと整備され、草原が広がっている。

 産まれて五年、自意識を持ってから二年経つが初めての冒険だ。

 思わず胸が躍ってしまうカインだった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 今回のはさすがにちょっとね。具体的には他の感想で散々言われているので割愛。 二話 >沙織の悲しい顔を見ないで済んだし 沙織を悲しませたこと自体は何とも思っていない。 優しさの欠如。 …
[気になる点] いやいや、子供を殺しにかかってるのに、あとで少し鍛えてやるじゃないでしょう……(・ω・`;)
[一言] あなたたち離しないよ →貴方達、離しなよ
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