挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

ブックマークする場合はログインしてください。

俺は不幸な不老不死になりました ―I want to die early―

「実を言うと、私がやりました」
「やはりそうかね。これでやっと辻褄が合う」
 これは俺が放課後、忘れ物を取りに教室に戻ろうとすると、聞こえてきた会話である。
「まあ、こんなヘマをしてしまったんだから、ちゃんと落とし前をつけてくれよ」
「はい、そのつもりです」
 謝っているのがクラスの女子、有原であり、何時もは大きな声で喋るやつなのに、今現在、声で聞く限りでは、とても小さな声で、眼を潤わせて俯いている様子だ。
 責め立てているのが、担任の友永だ。しかし、あいつが女子を注意してるところなんて初めてみたぜ。女子に甘々野郎だと思ってたんだがな。
「今が時間遡行をして替えられたということは、失われるはずのものが失われなくなったということだ」
「はい、あの時、私が時間遡行をしなければ世界を終わらせることは出来た……」
 よくわからない会話だ。時間遡行というものは、つまりタイムマシンみたいなもので過去に行くようなことだ。だが、この世界に、タイムマシンなんてあるか? いや、ないね。それに、世界が終わるというのも、なんとなく胡散臭い。つまり、これは演劇かなんかの練習だ。きっと、そうである。
 ――だから、俺は何事もなさそうに教室の扉を開けて中に入った。すると、担任の友永は大声で叫んだ。
「お前……! い、今の会話を聞いていたのか?」
 友永はやっとの思いで手に入れた餌を守るために威嚇する猿みたいな顔になっていた。
「時間遡行の話なら、聞いていましたよ」
 と満面の笑みで俺が言うと、友永はこの世の終わりのような顔をした。
「有原ぁあ! テメーのせいだ!」
「す、すみません……」
 有原は弱弱しい声に弱弱しい顔に弱弱しい姿勢で、今にも死にそうな感じである。
「友永先生! 今時間遡行をすれば……!」
「馬鹿野郎。この世界に時間遡行というモノが存在するということを知ってしまった奴から、その記憶を抹殺するのは時間遡行しても無理なんだよ!」
「ってことは、会話を聞かれた時点で」
「そう、彼から時間遡行という記憶が無くなることはない。そして、彼は我々がこれから時間遡行した場合にも、時間遡行をする前の元の記憶を全て正常に持つことになるんだ!」
 なんだ、その都合の悪いご都合主義的展開は。
「決まっていることだからしょうがないだろ!」
 友永は、勝手に俺の独白モノローグを読んできやがった。きっと、これは彼が未来人だから成せる業なのだろう。
「な、何故私が未来人だとわかったああああああああああああああ!」
「友永先生、ちょっと暴走しすぎです。何か大事なことを全て晴らしてしまっているように思います」
「うるせー有原! 元はと言えばお前が悪いんだろうが!」
「す、すみません……」

 ――そして、あれから二十年の年月が流れた。
 この世界は、有原のヘマ(世界を終わらせることが出来たのに失敗したらしい)によって保たれているのだ! ありがとう有原! さようなら有原!(有原は未来に帰りました)
 と、強引なオチにしてしまいそうだったが、今思えばあれはあんなノリだったのに寸劇ではなかったのだなあ。実際に友永と有原は未来人であり、未来に帰ったのだ。
 ということは、未来は存在しているということだ。ここでおかしいと思うことがある。
 そうなると最初に友永と有原が話していた「終わってしまう可能性がある世界」というのは未来にも訪れていないということだ。
 ということは未来は存在するのにも関わらず、世界を終わらせるために、わざわざ過去を改変しようとしたら、有原がしくじって、世界は結局終わらなかったということになる。
 うーん、おかしいな。やっぱり寸劇だったんじゃないかなと思った矢先……。
 ドン、という音がして周りの景色が崩壊されていく。未来的な戦闘機から、人が出てきた。その人は未来的(多分、これは未来的なんだと思う)な戦闘服を着ており、腕には謎のリングが巻かれている。
 未来からの破壊者デストロイヤーの顔をよく見ると、それは友永と有原であった。両者とも、あれから20年経ったのに見た目に変化なし。やはり、未来人だ。
 この二人によって、本当に今こそ、世界は壊されるのだろう。
 しかし、突然、有原が泣き出した。
「やっぱり、出来ません」
 そして、有原は手にはめていた謎のリングに付いているボタンを押した。
「時間遡行、開始します!」

 ――ここは、どこだ。
 その答えがわかった時、俺に突き付けられたのは絶望だった。
「すみません、また私がやりました」
「やはりそうかね。これで二回目だよ」
 俺は制服を着ていて景色は二十年前と全く同じ。そうだ、繰り返されているのだ。
 微妙に変化はあるものの、それ以上の既視感が俺を襲う。
 全てが同じではないが、筋は同じなんだ。
 俺は教室の扉を開けた。
「何やってんじゃ有原あああああああああああああああ!」
 俺が叫ぶと、友永が残念そうな顔で言った。
「世界を終わらせるチャンスは20年後にしかこない。そう決まっていることだから仕方ないんだ、すまない。同じ20年、どうか耐えてくれ」
「それなら、20年後は有原を連れてこないでくれ」
「有原がいないと、世界を終わらせられないんだ。そう決まっていることなんだから許してくれ」
「に、20年後はちゃんと世界を終わらせますから……」
「し、信用できねー」
 同じ二十年を、俺はあと何回続ければいいのだろう。
 俺は、不老不死になっちまったかもしれない。世界よ、終わってくれ。終わらせてくれよ有原!

 ――そして、繰り返されていく。
「すみません、私はまた世界を終わらせることをできませんでした」
 はあ、ここまで世界が終ることを祈るような高校生がいていいものだろうか。

評価や感想は作者の原動力となります。
読了後の評価にご協力をお願いします。 ⇒評価システムについて

文法・文章評価


物語(ストーリー)評価
※評価するにはログインしてください。
感想を書く場合はログインしてください。
お薦めレビューを書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ