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チートあるけどまったり暮らしたい のんびり魔道具つくってたいのに 作者:なんじゃもんじゃ

4章

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125 ドロシー・フォン・ブリュトイース

 
 クリストフが出征していく後ろ姿を見送る。
 5月の眩しい日の光が肌を刺す感覚を覚えるのは私の心が敏感に反応しているからなのか……

「ドロシー様、そろそろ館の中へお戻り下さい。あまり無理をされますとお体に悪う御座います」

 護衛のリリイアが私の体、いえお腹の赤ちゃんのことを心配してクリスタルパレスの敷地内にある居住用の館に帰るように促してくる。
 クリストフが出征するにあたり唯一私に申し付けたこと、それはリリイアの傍から離れてはいけないと言うこと。クリストフはそれほどリリイアを信頼しているのです。

 来月、出産予定なのに何でこの時期に出征なの?
 陛下(父上)を恨んだこともあるけど、クリストフが人を恨んだり憎んだりするより慈しむほうが生産的で、何より楽しいと言っていた。私もそう思うから建設的なことを考えるとしましょう。

「神官長様、こちらの書類にお目を通して頂けますか?」
「あら、クフレーレ神官統括補。それは?」

 館の部屋の前で魔技神殿の実質ナンバー2のクフレーレ神官統括補が待っており、私に書類に目を通して欲しいと言ってきました。
 彼女は魔技神殿の正装であるゆったりとした修道服を着ていますがその胸の大きさは隠せていません。この修道服はクリストフがデザインしたもので魔技神殿の正式の場ではこの修道服を着るのが慣わしだけど、彼女はいつもこの修道服を着ている。彼女は敬虔(けいけん)な魔技神の信者なのです。

「はい、ウッド小学校の教員採用についての報告書になります。それとマギ第一病院の医師、及び看護師からの改善要望となります」
「分かりました。部屋の中に」

 私はクフレーレ神官統括補とリリイア、そしてメイド長のルーナの4人で部屋の中に入って早速報告書と改善要望書に目を通します。
 先ず、ウッド小学校について4人の教員の採用が決定したとあります。これに関しては何も問題ないと思い次にマギ第一病院の改善要望は非常に宜しくないです。あ、改善要望が悪いのではなく早く改善しなければと言う意味です。
 クフレーレ神官統括補に2つ指示を出します。

「治癒師の人員補充を急がせて下さい。王都の王立魔法学校の卒業生などについては私の方から勧誘しますのでクフレーレ神官統括補たちは信徒内で治癒術が使える方のスカウトをお願いします。それと子供たちの育成もね。あと病床が少ない問題ですが、病床を増やしても人員不足ではどうしようもありませんが、第二病院の建設を急がせましょう」

 ありきたりな指示ですが、今はこの程度に収めるしかありません。クフレーレ神官統括補も分かってくれると思います。

 数日後、クリストフの実母であり姑のセシリア様がイグナーツちゃんと共にクリスタルパレスにお越しになった。
 出産前なのにクリストフが出征してしまったので私を心配しもう直ぐ3歳になるイグナーツちゃんを伴って来てくださった。
 クリストフが会うたびにイグナーツちゃんを可愛がるので私も一緒に遊んだりしていたらイグナーツちゃんも私に懐いています。館内を元気いっぱいに走り廻っています。

「今日は蒸しますがこの館内は快適ですね」
「クリストフが居住環境に拘っていましたから」
クリストフ(あの子)の作るモノはどれも便利なのは良いのですが、この環境に慣れてしまうと便利過ぎてブリュンヒルの屋敷や王都の屋敷が不便に感じるわね」

 セシリア様が困ったものだと溜息を吐く。私はもう慣れたし、どこに行くにもクリストフの恩恵を受けているので不便を感じることはあまりないけど、セシリア様にしてみればこの館の環境は良過ぎるのでしょう。

 その瞬間だった。館内にけたたましい音が鳴り響いた。

「何事っ!?」

『侵入者を確認、制圧を開始いたします。繰り返します。侵入者を確認、制圧を開始いたします』

 セシリア様が手にしておられたティーカップを置き警報装置の警告音声のことを聞いてこられた。

「これはクリスタルパレス内に侵入した者が居ると言う警告音声です」
「なっ!直ぐに衛兵を!」
「大丈夫です。まもなく侵入者は全て捕縛されるでしょう」

 このクリスタルパレスには侵入者に対する対策が幾重にも施されています。先ず許可なく侵入した者を知らせる警報、そして侵入者を無力化するための罠、更に罠を越えて来た優秀と言うか運の悪い侵入者を制圧する為の衛兵ゴーレム、更に制圧できなかった場合にも幾つかの対策が施されています。
 衛兵ゴーレムはクリスタルパレス内の廊下に3m毎に配置されており、それはクリスタルパレスの敷地内に建てられている館も例外ではないのです。
 城内で万にも及ぶ衛兵ゴーレムが配置されていますし、衛兵ゴーレムは単体でランクAの魔物に匹敵する戦闘力を最低限持っているのであっと言う間に侵入者は捕縛されることになるのです。

「……まさか、これもクリストフの?」
「はい、そうです。恐らく侵入者は聖オリオン教国の手の者でしょう。侵入を試みた者は今回で5回目ですが、今まで全て聖オリオン教国の手の者でした」
「……あの国もこりませんね」

 息を深く吐かれたセシリア様は再びティーカップに手を伸ばされた。流石はクリストフの母上だけのことはあります。普通の方であれば聖オリオン教国の刺客が侵入したと聞けば狼狽えるものですがセシリア様は既に侵入者などなかったかのように優雅にお茶を楽しんでおられます。

 これまでの4回も警報が鳴って2分以内に制圧が完了しており、侵入者が私たちの下に辿り着くことはありませんでした。

『侵入者の制圧が完了しました、戦闘配備を解除致します。繰り返します。侵入者の制圧が完了しました、戦闘配備を解除致します』

 今回は何人が捕縛されたのでしょうか?
 確か1回目は17人が捕縛されましたし、それ以外でもそれぞれ10人程度が捕縛されています。

「リリイア、捕縛数の確認を」
「はい、只今」

 リリイアが腰に携帯している小さなポーチから手の平サイズのマジックアイテムを取り出す。あのポーチもクリストフの作ったマジックバッグの一種で、あれを持っているのはクリストフの信頼する者の印でもあるのです。

「奥様、侵入者は全部で13人です。いつものように地下牢に繋いであります」

 あのマジックアイテムはクリストフ曰くスマホと言うものらしいです。小さいのにとても高性能でスマホがあればこのクリスタルパレスの全ての防衛システムにアクセスできるとクリストフが言っていました。
 リリイアはそんな重要なマジックアイテムをクリストフから渡されており、フィーリアがクリストフに付き従って出征している今ではリリイアには防衛システムの最上位アクセス権が与えられているのです。
 私にも防衛システムのアクセス権をと以前お願いしたことがありましたが、私は守られる側であるから守る側の者に任せれば良いとクリストフが取り合ってくれませんでした。
 でも何時でも話せるようにとスマホなるマジックアイテムは私も持っています。本当は毎日でも通話したいのですが、クリストフも忙しいので我慢しているのです。

「そう、その者たちの処罰についてはクリストフが帰ってきてからにします。監視は厳重にお願いね」
「はい、奥様」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「うっ、生まれる!」

 陣痛が起こり私は分娩室と言われるクリスタルパレス内に併設されている治療施設に移されました。
 周囲には治療スタッフと助産婦に産まれて来る子の乳母となるケスラー子爵夫人がクリストフと私の子が産まれて来るのを慌ただしくしながら待ち望んでおります。

「……」
「お産まれになりました!」
「……」

 助産婦が取り上げた我が子。何故泣かないの?比較的安産だったと思うけど我が子の泣き声が聞こえない!?

「おぎゃぁっ、おぎゃぁっー」

 助産婦が赤ちゃんを逆さにしてお尻を叩くと泣き出した。良かった、生きて産まれて来てくれたのですね!

「男の子で御座います!」
「ドロシー、でかしました!これでブリュトイース公爵家は安泰です!」

 皆が跡取りの誕生だと喜んでいます。クリストフは女の子でも健康な子であれば構わないと優しい言葉をかけてくれましたが、ブリュトイース家の跡取りを産むのが私の使命なのでホッとしました。

 助産婦が赤ちゃんを私の元に連れてきてくれました。赤ちゃんに飲ませる母乳は最初だけは私のお乳をあげるようにとクリストフからキツく言われてもいましたのでお乳をあげます。

 あまり泣かない子のようで皆が心配していますがお乳はしっかりと飲んでいますから大丈夫でしょうと言っています。


 
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