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チートあるけどまったり暮らしたい のんびり魔道具つくってたいのに 作者:なんじゃもんじゃ

4章

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122 ペロン・フォン・クック1

 

 僕はペロン・クック。あ、今はペロン・フォン・クック男爵です。
 年齢は15歳になります。昨年、カルラと結婚もしてそしてブリュトイース公爵家の家令としてクリストフ様に仕えています。
 クリストフ様は僕の級友で僕が王立魔法学校に入学して初めて出来た友達です。最初はそのいでたちから平民かと思い声を掛けたのですが、クリストフ様は神聖バンダム王国でも有数の貴族であるブリュトゼルス辺境伯家の次男だと聞いた時はとてもビックリしました。

 今はクリストフ様が公爵となり聖オリオン教国との戦いにおいてオリオン北部方面軍の司令官として大軍を指揮しているので僕もクリストフ様に付き従い聖オリオン教国へ従軍しています。
 役職は幕僚総長で、この幕僚総長と言う役職は軍の編制や占領した地域の執政官を統括すると言う僕には荷が勝ち過ぎた役職だけどクリストフ様は「責任は私が取るからペロンの思うようにすれば良い」と言って下さいました。だからこんな僕でも幕僚総長として少しでもクリストフ様の役に立てればと思い誠心誠意務めると決めたのです。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 フェデラーさんがクリストフ様の命令でプラムを陥落させてアゼルに戻ってきました。今は今後の聖オリオン教国侵攻作戦について首脳陣が会議を行っている最中です。

 僕はクリストフ様のすぐ左側、僕の左にはフェデラーさんやゲールさんなどのブリュトイース公爵家の重臣に僕の可愛いお嫁さんのカルラや親友のクララも席に座って会議に参加しています。
 そして僕の反対側、クリストフ様の右側には王国第8軍の指揮官であるバッケン・クド・イチジョウ大将、続いて王国第5軍の指揮官であるエバン・クド・フリード中将、白色軍の司令官であるコータロウ・フォン・キクカワ中将、ヘルプレンス旅団を任されているアーゼン・クド・ヘルプレンス元男爵たちが席に着いています。

「次の目標はゼルバンで良いでしょう。先ずは白色軍と再編した第3軍を先遣隊として送ります。第3軍はアルデリード准将が指揮を執ります」

 第3軍の指揮官だったアジャハ大将はプラム攻略戦で大敗し行方不明になっていましたが、プラムで捕虜となっていた処をフェデラーさんたちに救出されています。しかしアジャハ大将は精神的な損耗が激しく今は休養中なので第3軍の大隊長だったアルデリード准将が司令官代理として指揮することになっています。
 プリッツが集めてくれた情報ではアルデリード准将は幾つかの戦場でアジャハ大将の失策をカバーしてきた優秀な指揮官なのでクリストフ様もアルデリード准将に期待をしているようです。

「第二陣として第5軍、第8軍。その後は閣下が率いる本隊としてブリュトイース公爵軍、ゴルニュー要塞軍、ヘルプレンス旅団。後詰としてサガラシ侯爵軍を配します。そしてこのアゼルには再編中の第11軍を配します」

 アジャハ大将が療養と言う名の更迭をされているのでこれまで明確になっていなかったナンバー2のポジションに必然的に収まったイチジョウ大将が今後の作戦行動について説明をしていきます。
 僕も幕僚総長なんて役職に就いているから権限的にはナンバー2にもなれるけど、イチジョウ大将はアジャハ大将と違い独善的ではないし、人望もあるので敢えて競うことはしない。

 このアゼルの街とフェデラーさんたちが落としたプラムの街は再編中の第11軍の司令官代理であるオットー少将に守りを任せることになる。このオットー少将はロッテンハイム中将の副将として敗走していた第11軍と第3軍の兵を纏め撤退した将軍なので不名誉なイメージが強いがクリストフ様は敗走中に兵を纏めるのは難しい、とオットー少将を褒めて第11軍のロッテンハイム中将を療養させオットー少将を司令官代理とし指揮を任せた経緯がある。

 第3軍は9千人、第11軍は1万人にまで兵を減らしている。両軍団合わせて凡そ1万2千人の兵が死亡または行方不明となっており、今回の敗戦の責任はアジャハ大将にとって貰うのが決定している。
 だからアジャハ大将は体調が戻っても兵の指揮権はなく、更迭されたままになる予定なんだ。
 そしてロッテンハイム中将は責任追及こそされないけど体調が戻っても療養中として扱われこちらも兵の指揮権は剥奪されたままの状態を続ける予定でいる。
 クリストフ様は元々この2人の能力に疑問を持っており、今回の敗戦で2人を更迭する名目を得たのでそれを行使している。クリストフ様の考えに王国軍の中からは多少は異論もあったけど、命令違反をしたうえで1万2千人もの兵を損なった責任を誰がとるのか、と言う話になるとアジャハ大将の更迭、そしてロッテンハイム中将の療養で落ち着くことになった。

 2人が犯した命令違反はプラム攻略時に敵援軍があった場合、この敵援軍の規模が2万人未満であればこれを直ちに排除し後背の不安を取り除きプラム攻略を行う。そして敵援軍が2万人以上の規模だった時にはプラム攻略を中断しこの敵援軍を引き付け本隊の来訪を待つと言うものだった。
 クリストフ様やイチジョウ大将を始めとした将軍たちは敵の本体から援軍が送られると予測していたのでアジャハ大将とロッテンハイム中将に敵援軍に対する対処を命令していたのだ。
 しかし2人の将軍はこの命令を無視し敵援軍を放置してプラムを包囲した。そして敵援軍として訪れた1万の兵とプラムの守備隊と戦う二正面作戦を慣行した。そしてその結果が1万2千人もの兵を損なう大敗に繋がったのだから更迭程度で済ましているクリストフ様の寛大さに感謝するべきだと思う。

「オットー少将。再編中の第11軍の他に少将には義勇兵の訓練を任せます。期待に応えて下さい」
「はっ、必ずやご期待に応えてみせます!」

 クリストフ様がオットー少将に声を掛けられた理由は義勇兵にあると思う。義勇兵はこのアゼルとプラムで解放した元奴隷たちで組織されているからクリストフ様も気にされているのだ。

「ザンバル・バレン殿にはこのアゼルを任せたいと思っていたのですが、私の相談役として従軍してください」
「了解致しました。閣下のお役に立てるように微力を尽くさせて頂きます」

 バレン殿にはこのアゼルの執政官を任せたかったけど、今後の聖オリオン教国の切り崩しはバレン殿の人脈によるところが大だとクリストフ様は思っているようで従軍を命じている。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「閣下、白色軍と第3軍が出立いたしました」

 行政府のテラスでフィーリアが淹れてくれた紅茶を飲む僕とクリストフ様の前にゲールさんが現れキクカワ中将の白色軍とアルデリード准将の第3軍が目的地であるゼルバンの街を目指して出陣したと報告を受ける。

「ゲールもお茶をどうだい?」
「いえ、まだ仕事が残っておりますので」
「相変わらずゲールは真面目だね。私の護衛騎士の時からその調子だけど疲れないかい?」
「これは生来の性格ですから疲れるということはありません」

 ゲールさんが下がると今度はクララがやってきた。

「アトレイが戻って来たわ」

 アトレイさんは聖オリオン教国の教都クリセント・アジバスダに潜入していた筈だけど、クララの顔色が良くない。アトレイさんは悪い情報を持って帰ってきたようだ。

「アトレイは大怪我をして今治療中よ」

 予想外だった。真祖の吸血鬼であるアトレイさんが大怪我? ランクSの魔物でさえ片手間で倒すようなアトレイさんが怪我をするなんて、なんの冗談なんだろうと思ってしまい僕は一瞬呆けてしまった。
 でもクリストフ様は顔色をかえることはなかった。予想していたのだろうか?

「……それでアトレイさんの状態は?」
「命には別状はないけど暫くは動くことも無理ね」

 クララが僕の問いに応えてくれた時、クリストフ様の表情が僅かに動いた気がする。
 クララと共にアトレイさんの元に向かうと彼はベッドの上で体中に包帯を巻かれ横たわっていた。

「これは、お館様に男爵殿、御見苦しい物を見せてしまいましたね」
「意外と元気だな」
「減らず口よ。実情は満身創痍よ」
「そのようなことは御座いませんぞ、クララ殿。某はちょっと休憩をしているだけですぞ」

 クララがアトレイに困ったような顔を向ける。彼のやせ我慢だと僕でも分かるほどに包帯にしみ出している赤黒い血が痛々しい。恐らくアトレイさんでなければ今頃死んでいるほどの大怪我だと思うほどかなり酷い状態なのが分かる。

「クララ、アトレイにこれを」

 クリストフ様は何もない空間から1つの瓶を取り出して、クララに渡した。血のように赤い液体が入っていた瓶を取り出したのはクリストフ様が作り出したストレージだと思う。ただ、クリストフ様がクララに渡した赤い液体が何かは分からない。

「それはポーションだよ、飲ませてやって」
「しかしアトレイは吸血鬼だからポーションは効かないはずよ」

 吸血鬼にはヒューマンに効果があるポーションは効き目がないどころか毒にもなる。だけどクリストフ様だってそのことは知っているはずだからあのポーションは唯のポーションであるわけがない。

「それは吸血鬼用に改良したポーションだから大丈夫だよ」

 クララはクリストフ様の言葉に納得して吸血鬼用のポーションをアトレイさまの口に含ませる。

「む、これは……どうやらお館様にまた助けられてしまいましたな」
「気にするな、それにお前を助けたのはこれが最初だぞ?」
「いいえ、我が一族を受け入れて頂き働く場を与えて下さいました。直接ではないにしろ、お館様に命を助けて頂いたのはこれで2度目になります」

 その後、アトレイさんから事情を聴き、念のためアトレイさんには暫く休養をさせるとクリストフ様は仰ったが、アトレイさんは任務に戻ると言い張る。
 クララと僕でアトレイさんを説得し、3日の休息をとらせたけどアトレイさんは不満気だった。

 アトレイさんの心配がなくなったのでクリストフ様の執務室に赴く。中途半端に休憩が中断されてしまったがクリストフ様には決裁しなければならない書類が山のようにある。だから分刻みのスケジュールが組まれている。

「あのアトレイさんが重傷を負うとは、聖オリオン教国にそれほどの者が居るのでしょうか?」
「……ペロン」
「はい?」
「2人だけの時はその堅苦しい喋り方は止めてくれと頼んだよね?」

 2人だけと言うが、今この部屋にはクリストフ様と僕、そしてクリストフ様の護衛をしているフィーリアが居る。クリストフ様にとってはフィーリアは自分の一部のようなものだからの発言なんだろう。

「……しかし……」
「ペロン……頼むよ、私とペロンは友達だろ?」

 アトレイさんが重傷を負った話をしているのにクリストフ様は僕の口調を以前のような友達感覚でと言う。
 はぁ、取り敢えずはクリストフ様の頼みを……

「わかり……分かったよ。それよりアトレイさんは真祖の吸血鬼なのに大怪我を負うなんてどうしてだろう? クリストフさ、クリストフ君はどう考えてる?」

 クリストフ君はニコリと表情を和らげた後、真剣な面持ちになる。

「アトレイに重傷を負わせた相手は恐らく……勇者だよ」
「ゆ、勇者? ……まさか……」
「真祖であるアトレイはその気になれば魔王にもなれる実力者だよ。昼間だから力の半分ほどしか出せなかったようだけど、魔王にもなれるアトレイに傷を負わすことができる者が居るとすれば勇者ぐらいだよ」

 勇者、神聖バンダム王国の開祖アキラ様をはじめ多くの勇者が過去には存在した。でも現在勇者が居るなんて聞いたことがない。

「勇者なんて本当に居るのかな?」
「居るよ。……今、この世界には勇者の力を持った者が1人だけ存在すると以前聞いたことがある」

 思わず呟いてしまった疑問にクリストフ君が答えてくれた。
 勇者……魔王や魔神と戦う勇気ある者。過去に魔王や魔神と戦い人々を救ってくれた伝説上の存在、その伝説上の存在が僕たちの敵となり現れた……そんなことって……

「しかし、おかしい、ね」
「おかしい?」

 何がおかしいのだろうか? 勇者がクリストフ君の敵になったことが? それとも他のこと?

「私の知っている勇者はエルフのはずだから聖オリオン教国では市民権なんてないはずなんだけどね」
「え、エルフの勇者?」

 そう言えばアトレイさんもエルフのようだと言っていたけど……エルフはクリストフ君の言うように聖オリオン教国では亜人だとか下等種だとか言われ迫害対象になっているはずで、そんなエルフの勇者なんて聖オリオン教国の上層部が認めるとは思えない。

「エルフの勇者は過去にも居たよ」
「え?」

 僕の疑問にクリストフ君が答えてくれたけど、僕の心を読んだのかな? 魔技神だからそのくらい出来るのかも?

「ペロンの顔に書いてあったよ」
「顔に?」
「もう少し表情をコントロールしないとね」
「……それより、エルフの勇者が過去にも居たって、本当なの?」

 クリストフ君は嬉しそうに声を出して笑い、真剣な表情に変わる。

「オリオン教だよ。オリオン教はヒューマン以外の勇者を排除していたんだ。エルフにドワーフ、獣人などの勇者が大きな力を持つ前に見つけては異端者として殺して回るんだ」
「そんな……」
「オリオン教の暗部や一部の狂信的な信者のグループが血眼になって探して勇者じゃなくても怪しい者は皆殺されるんだ」
「……狂っている」
「そう、オリオン教は狂っている。もしかしたら最初は崇高な教えがあって救われた者だって多かったかも知れないけど、今のオリオン教には崇高な教えなどない……したくはないけど、滅ぼすしかないだろうね」

 
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