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チートあるけどまったり暮らしたい のんびり魔道具つくってたいのに 作者:なんじゃもんじゃ

4章

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109 オリオン包囲戦<序章1>

4章開始です。
 

 聖オリオン教国との仲は最悪で、陛下(タヌキ)は大規模な進行戦を計画している。
 そんな折、ベルム公国に派遣していた使節団が帰国した。
 この使節団の目的は言わずと知れた王族暗殺、王族誘拐、貴族暗殺についての抗議であり、謝罪と賠償を求めるものだった。
 その使節団の団長となったのが外交系貴族のハゼット子爵で、ハゼット子爵はこの使節団の役目を正確に理解していた。
 つまり神聖バンダム王国とベルム公国の冷え切った関係を更に悪化させるというものであった。
 陛下(タヌキ)はベルム公国との和解など望んでいない。
 だからベルム公国が使節使が暴走した結果だの何だのと言い逃れしても使節使がベルム公国から正式に派遣されてきた事を盾に謝罪と莫大な賠償を求めたのだ。
 当然ベルム公国はそれを拒否するので後は粛々と派兵の準備をするだけなのだが、ここで問題となるのがベルム公国に送った使節団の処遇である。
 ベルム公国が自棄になり使節団を捕らえて殺害するかもしれないし、捕虜として神聖バンダム王国に対する盾とするかもしれない。
 そうなれば使節団の団長であるハゼット子爵をはじめとした使節団の命はないと言っても過言ではないだろう。
 つまりハゼット子爵はベルム公国が自棄にならないギリギリの線で神聖バンダム王国の要望を退けさせる要求をしなければならなかったのだ。
 それを見事やりとげ無事帰還したハゼット子爵は陛下(タヌキ)の覚え目出度いってわけだ。

「それでホエール級4番艦はいつ完成するのかね?」

「凡そ4ヶ月後です、陛下」

「それでは遅いと感じるのだがな」

 使節団が戻ってくるタイミングで俺を呼び寄せた陛下(タヌキ)がホエール級4番艦について催促をしてくる。
 勿論声を荒げたり威圧するような事はないが、簡単な確認と無言のプレッシャーを使い狡猾に催促をしてくる。
 だけどそんな事では俺を動かす事はできないよ。

「所持しておりました希少鉱石も底をつきかけております。希少鉱石を集めるのに些か時間がかかっております」

 ブリュトイース家が本気を出せば鉱石など直ぐにでも手に入る、というか、ブリュト島の地下倉庫には膨大な鉱石が保管されているけどね。
 ただ、俺としては開戦時期はできるだけ後ろの方がよいので建造中の4番艦には時間稼ぎのネタになってもらわないとね。
 戦争をするにしても準備をしっかりする必要があるから、兵力だけ整えても勝てない事は地球の歴史だけではなく、この世界(ヘカート)の歴史でも繰り返している。

「で、あるか・・・可及的速やかに対処するように。ブリュトイース公、貴公も派兵の準備を進めるように。・・・以上だ、下がってよい」

 新興貴族の派兵免除など一切無視した言いようだ。
 だが、今の陛下(タヌキ)に何を言っても聞く耳はないだろう。
 それだけベルム公国と聖オリオン教国への怨念・・・恨みが限界を超えているのだ。
 この2国へ報復する事が今の陛下(タヌキ)の生きる目的のようなものなのだから。
 最近の父上は人が変わったようだ、とドロシーも言っていた。
 目も濁っており死んでいるようだしな・・・

 聖オリオン教国、ベルム公国の2国を攻め滅ぼすのは陛下(タヌキ)の中で決定事項であり、それを行うのは常に聖オリオン教国と戦ってきた南部貴族、そして港をもっている東部貴族だ。
 ここで問題になるのは南部貴族は数年単位のスパンで聖オリオン教国と戦ってきたので軍の質は高いのだが、東部貴族は数十年戦火を経験していないって事だ。
 東部は外敵と国境を接していないので神聖バンダム王国内でも唯一軍事的な質が低いと言わざるを得ない。
 ただし、東部貴族は数十年戦火にまみれていないため戦力的には十分に準備できる。

「それだと猶予は半年ってところね。それまでに準備を整える必要があるわね」

 ホエール級4番艦の完成後に訓練を行う必要があるのだが、既に王家直轄の艦隊から40人程の士官や下級士官がイーストウッドで光月に乗り込み訓練を開始しているので出陣まで半年とクララは判断したようだ。

「ヒの国とヘンリフィ共和国には父上からの使者が送られているようだが取り込めそうなのかい?」

「ヒの国の方は7割って感じかしら? ただ、ヘンリフィ共和国の方は良くて3割ってところで難しいんじゃないかしら?」

 ヒの国は聖オリオン教国の東にある島国で聖オリオン教国とは犬猿の仲だ。
 このヒの国は独自の文化が発展しており国教はオリオン教ではない為に聖オリオン教国とは国交が断絶しているどころか交戦状態にあると聞いている。
 主に聖オリオン教国が敵視して戦争を吹っ掛けたと聞いている。
 異教徒に無差別に敵意を向ける聖オリオン教国らしいといえば、らしいな。

 ヘンリフィ共和国は聖オリオン教国の南に国境を接する国で規模としては中堅国家だ。
 国としては貿易で潤っていると聞いているし、この国と交易すれば神聖バンダム王国も潤うだろう。
 但し聖オリオン教国とはつかず離れずの関係らしいので説得するにはそれなりの材料が必要になってくるだろう。

「他の国は?」

「ゲンバルス半島の小国郡は今のところオリオンから離れる事はないでしょうね。ベルム公国が落ちればかなり動揺すると思うけどね」

 ベルム公国が落ちてからでは遅いんだよね。
 海戦ではホエール級戦艦を擁する神聖バンダム王国軍がかなり有利で戦闘での死傷者の数を抑える事はできるが、この戦いは侵略戦なので必ず地上戦や攻城戦があると考えなければならない。
 つまり海上では無類の強さを誇るホエール級戦艦も地上には持っていけないので、圧倒的有利な状況での戦いができるかは他国が味方として参戦し圧倒的多数で敵を包囲殲滅できるかによる。
 戦の鉄則である「数は正義」を実現させる必要がある。
 それに周囲の国が全て敵になったと知れば聖オリオン教国だって和議を求めてくる可能性もある・・・あると考えたいな。

「あっそうだ、できればホン王国を味方につけたいけど、現実としてはかなり厳しいわね」

「ホン王国って・・・鎖国している国だったけ?」

「国策として鎖国しているわけじゃないわよ。地理的に孤立しているから結果として鎖国になっているだけだから」

 物は言いようだな。

「ホン王国を取り込めれば地理的に聖オリオン教国の喉元に剣を突き付けた格好になる。しかも小国ながら軍はかなり精強なのよ。但しホン王国の周囲は凶悪な魔物の生息地帯でホン王国は魔物に対するだけで精一杯みたい。他国の揉め事に顔を突っ込む余裕なんて今のところないわね」

「どの国も地理的に神聖バンダム王国とは離れているからか・・・取り込みには苦労するか・・・よし、ホン王国に近づくか」

「近づくって、どうやって?」

「それを考えるのが王都戦略室長兼情報部長殿の仕事だろ?」

「・・・ふっ、良いわ・・・3日ちょうだい」

 王都戦略室長兼情報部長であるクララは手元にある厚手の紙束をペラペラ捲り情報を分析し俺に報告をする。
 その情報を集めてくるのは言わずと知れたプリッツ情報部実戦指揮官だ。
 クララの方が役職は上だが実務部隊の全てを掌握しているのはプリッツってわけだ。
 プリッツは非常に優秀な情報収集能力をもっており、クララは情報分析と分析から得られた結果に対する対応策の策定に優れている。
 双子だけあって2人で情報部を完全にものにしている。







 さて、ブリュトイース家の軍部の事はフェデラー司令官に丸投げして、俺は無駄な戦死者を少しでも減らす為の準備をしましょうかね。
 今回の戦で神聖バンダム王国は3方向から進行を予定している。
 その1つを俺が指揮する予定になっている。
 他の2方向には南部総督である父上と東部総督であるクジョウ侯爵がそれぞれ軍を率いて進行する事になっている。
 因みにクジョウ侯爵は俺の母方のお爺様にあたるし、暗殺された王妃様はクジョウ侯爵の娘である。
 つまり因縁深い戦いとなるわけだ。

 クジョウ侯爵率いる東部貴族諸侯は海を南下してベルム公国を攻め、父上は南部諸侯を率いてキルパス川を南下してキルパス川沿いの各都市を攻める事になる。
 そして俺はというとゴルニュー要塞から陸路で聖オリオン教国の首都を目指すことになるだろう。
 そして私設軍をほとんど持たない俺は王家直轄の軍を率いる事になっている。
 王家の外戚でもあり王国貴族最上位の公爵なんて地位にいる為に俺が直轄軍を指揮する事になってしまったのは言うまでもない。
 ハッキリ言って出征などしたくないし、しても俺が指揮する軍はブリュトイース公爵軍とアナのゴルニュー要塞軍で十分なんだが、占領地を治める為にも数が必要になると陛下(タヌキ)が無理やり押し込んできた。
 勿論、それだけではないのだけど。

 本来であれば陛下(タヌキ)の子から司令官を出すのだろうが、今回は王太子が暗殺されているし、第2王子は暗殺犯の主犯格として幽閉中、第3王子は生きているが王侯家の養嗣子となって間もないし王子をこれ以上亡くすわけには行かないという声もあり出征はない。
 第4王子も亡くなっているし、王太孫は幼い。
 他にも陛下(タヌキ)の弟や甥たちがいるのだが軍部とは無縁の者たちなのでこちらも司令官として出征は無理だし陛下(タヌキ)が出征させないだろう。
 因みに第3王子が養嗣子として家を継いでいる王侯家というのは王家以外で王位継承権を有する家の事で全部で9家あるが、内3家は断絶している。
 王侯家は王位継承権があり日本の江戸時代の御三家みたいなもので、昔王家からわかれて分家として興ったのが始まりだ。
 母上の出身家であるクジョウ侯爵家も王侯家だ。

 話を戻すが公爵になったばかりの俺に方面軍司令のお鉢が回ってきたのだが、俺だって軍隊を指揮するスキルなんてないのだけど?
 前回のジルペン湖の戦いで俺は南部総督の代理として軍を指揮した事になっているが、俺なんてただのお飾りだったんですが?

 はぁ、できれば陛下(タヌキ)が正気に戻って冷静になれば説得するのだけど、今の陛下(タヌキ)ではなぁ・・・
 機会があれば説得するとして、今は準備に注力するとしよう。






 魔技神殿は治療院や学校の運営をおこなっており、その総責任者は神官長であるドロシーだ。
 つまり最近のドロシーは非常に忙しく魔技神殿の敷地内に併設されている治療院と学校を行ったり来たりしている。
 治療院では魔技神の信徒の中で回復系の魔術や魔法が扱える者で希望する者を神官見習いとして治療にあたらせており、その者たちに魔術や魔法を教えているのがドロシーなのだ。
 それに学校でも神官たちが手分けをして文字や算数を教えており、魔術や魔法の才能が有る子にはドロシーが基本を教えている。
 他にも10歳以上で兵士や探索者としての素質がある者には軍の訓練施設で訓練を受ける事も許可されている。
 何といっても人材不足が否めないブリュトイース家なので学校の建設から運営に関する資金的な支援をするかわりにブリュトイース家に必要な人材の育成も視野に入れて子供たちの育成をしてもらっている。
 どこかの北の国と違って洗脳や力で支配しようとは思っていないのであくまでも選択肢を子供たちに与えそして働く場を提供しているだけだ。

「お館様、先日の件について決裁をお願い致します」

「う~ん、これは微妙な判断を必要とするから皆の意見を聞きたい」

 会議室の中では重臣たちが長机の両脇に座り上座に座る俺から皆に意見を求めると上申したフェデラーが速やかに手を上げる。

「領内の防衛を考えるに、上申しましたように防衛拠点が必要です!」

 ブリュトイース地域への外敵襲来が予想される経路上に防衛拠点を造るという上申が軍部を預かるフェデラーから出されているのだ。

「拠点を守る人員の確保ができない状況をフェデラー司令官はどう考えているのか?」

 しかしその防衛拠点を造ってもそこを守る人員が不足しているのが今のブリュトイース家なのに何処からその人員を持ってくるのかという問題には一切触れていないのでウードから指摘がある。

「その点につきましては聖オリオン教国の戦争奴隷を投入します。防衛拠点は2ヶ所築く予定ですのでそれぞれに2千を配置したいと考えます」

 先の聖オリオン教国との戦闘で俺が褒美の1つとして所有を許された戦闘奴隷は約6千人弱。
 その内、凡そ5百人はオリオン教から魔技神に改宗しているのでおりを見て奴隷から解放し望む者はそのまま登用する事にしている。
 しかし残りの5千5百人弱は未だにオリオン教を信奉している状況だ。
 一般兵を温存し戦闘奴隷が一番危険な場所に投入されるのは世の常なのだから仕方がないが、その時に5千5百人の中でどれだけの戦闘奴隷が生きているのか? 4千人以上生きていれば良いのだが、と言うのが一般的なんだが、俺はそんなつもりは無いし、そうなるように対策はするつもりだけど戦争に絶対なんてないしね。

「今回の侵攻作戦で戦闘奴隷がどれだけ生き残るのか分からないはずですが?」

 ウードのいう事は尤もで、俺もそう思う。

「寧ろ増えると考えておりますが?」

 安直だなっ!
 俺たちが絶対勝つと決めつけている。
 てか、浮ついているのか?
 司令官のフェデラーがこの調子では部下たちもかなり浮ついていると考えるべきだろうか?

「フェデラー司令官、貴殿が皮算用するのは構いませんが、それを公にするのは関心しませんね」

「皮算用とは言ってくれる! ウード殿は防衛拠点が不要とでも?」

「話をすり替えるのは頂けませんね。私が言っているのは戦闘奴隷が死なず現状維持もしくは増えるという前提での防衛拠点の建設は机上の空論と言っているのです。そもそも戦闘奴隷が減る可能性が最も大きいと思うのですがね?」

「皮算用に机上の空論か。だが、我々には強大な戦力がある! 光月に代表されるようにお館様のマジックアイテムはオリオンの狂信者どもを撃ち滅ぼすだろう!」

 いつになくフェデラーが熱いんだけど?
 てか、俺もウードの意見に賛成だし。
 確かに俺は勝てるように色々用意をするが、それでも絶対なんてあり得ないだろう。
 そしてフェデラーの役目は俺が用意した物や条件下で最大限の効果を挙げる事だ。
 しかし今のフェデラーは光月の火力に代表される圧倒的な戦闘力に酔っている感じがする。
 このままでは危険だな、俺だけなら何とでもなる、いや、俺の家臣団だけなら何とかなるが、侵攻作戦に参加する全兵士を守れるかと言えばそんな事は・・・できるんだが、それは俺の力を無制限で使うという事になる。
 俺が俺の力を無制限に使う、それは神として力を行使するという事で、それは中立神としてはできない。
 そもそも中立神とは善神や悪神のどちらにも味方や敵対しない存在だ、つまり俺の神域である南部を中心とした神聖バンダム王国内ではある程度神力の行使は認められるのだが、神聖バンダム王国を離れ神としての力を解放するのは他の神々との軋轢を生む事になりかねない。
 幸い、聖オリオン教国に他の神々の神域は存在しない事から俺が進出するのは問題ないが、それでも目立つ力の行使は控える必要がある。

 話を戻すがウードたちは首を横に振ったり溜息を吐いたりしている。
 今のフェデラーに何を言っても無駄な感じはするが、それでもフェデラーの気を引き締める事ができるのはこの場では俺だけなので仕方がないな。

「フェデラー司令官。防衛拠点については1ヶ所は許可するが、1ヶ所は保留だ」

「ぐっ!」

「それとだ・・・軍を纏める司令官たるフェデラーがそのように浮ついていては勝てる戦も勝てなくなるぞ、気を引き締めよっ!」


 
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