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チートあるけどまったり暮らしたい のんびり魔道具つくってたいのに 作者:なんじゃもんじゃ

3章

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100 襲撃2

 

 月も星も姿を隠し、漆黒の闇が支配する世界で蠢く影。
 多くの者は平衡感覚さえ狂わす暗闇の中で異形のものが蠢く。
 神聖バンダム王国のとある建物の中の一室には豪華な装飾が施された調度品や華美な装飾が目立つ美術品が所狭しと並ぶ。
 お世辞にも趣味が良いとは言えない室内であるが、揃えられている調度品や美術品はどれも高価でそれだけでこの部屋の主が貴族か豪商である事が伺える。
 そんな部屋の中に神経質そうな細身の男とフードを被り敢えて顔を隠している人物が密談をしている。

「準備は全て完了致しました」

 フードの人物は男とも女ともとれない声で何かの準備が完了した事を細身の男に報告をする。

「うむ、予定通りに」

「畏まりました」

 フードの人物の口調は丁寧だが、決して細身の男を敬っているようには思えない心底から寒くなるような声である。
 細身の男との会話が終わるとフードの男は何かの魔術を発動させ、その場からまるで転移するかのように姿を消すのであった。

「ふんっ、気持ちの悪い奴め。だが、奴の能力は使える。これで・・・・・ふふふっ、はぁぁっははははははっ」

 細身の男の目は生気を失い、まるで何かに取り憑かれているようにも見える。
 そんな彼は先ほどまでフードの人物が存在した場を虚ろな目で見つめながらワインを口に含むのであった。







 神聖バンダム王国の王城は騎士団が警備を担っている。
 既に日は暮れ深夜にさしかかった時分の城内はカンテラのマジックアイテムや松明やかがり火によって照らされ、動くのは警備を担っている騎士たちか夜勤の侍女だけであり、音は騎士たちの動く音やかがり火に使われる木が爆ぜる音だけである。
 しかし今日の王城には騎士たち以外にも動く複数の影がある。
 彼らは全身黒装束で顔も覆面によって覆われている事から騎士や王侯貴族ではない事が直ぐに分かる。
 しかもその動きは洗練されており、物音一つ立てずに王城内を目的地へと進む。
 王城の警備を担っている騎士たちは音もなく背後に立つ彼らによって瞬時に命を奪われ声を発する暇も与えられないのだ。

 今は神聖バンダム王国の王太子である第1王子の部屋では主であるレイザイト・フォン・バンダムが就寝前のひと時にワインを口にしているところであった。
 室内には王太子付きの侍女が2人と王太子しか居ない。
 今日は王太子妃の部屋に渡る事もなく政務の疲れを1人癒す事にした王太子はワイングラスを置きベッドに潜り込む。
 うつらうつらし、意識を手放そうとした頃に違和感に気付く王太子だったが、王太子が目覚める事はなかった。
 室内は首から血を噴出した2人の侍女と心臓に銀の短剣を突き刺された王太子の遺体だけが残る。



 異常に気付いたのは巡回をしていた騎士だった。
 本来であればそこに居るはずの見張りが居ない事で周囲を見回すと僅かだが血溜まりを発見する。
 すぐに呼び笛を吹き鳴らし何者かが侵入した事を知らせ警戒態勢が取られる。
 城内が騒然とする中、王族の護衛をする騎士が見たものは王太子を初めとする王族の遺体である。
 その数は3。
 王妃、王太子、第4王子の遺体が発見される。
 王族以外の死体は全てお付の侍女や警護の騎士団員であった。
 その他の王族で無事が確認できていないのが3歳の王太孫と5歳の第4王女であり、国王は直ちに捜索を命じている。

「2人の捜索はどうなっているのかっ!」

 広めの部屋の中で騎士の報告を受けた国王であるアキヒト・フォン・バンダム・コウサカは怒り心頭の面持ちである。
 王妃だけではなく、数年後には王位を継ぐはずであった王太子までも遺体で発見された事によりこの国の国政は暫く混乱が予想される。
 しかしそのような事は国王が存命であれば時間が解決するだろう、国王が恐れているのは行方不明の王太孫と第4王女の事である。
 2人が今回の賊に連れ去られたのはほぼ間違いなく、それがどのように神聖バンダム王国に影響を及ぼすかと考えると頭痛が止む事はないだろう。
 仮に王族としての尊厳を貶められるような扱いを受けたら神聖バンダム王国の威信は失墜するだろうし、そうでなくても他国の手によって2人が賊から助け出されたとなればその国に対し借りができてしまい外交で不利になりかねない。
 子や孫の命より国の威信や外交の事を考えるなど人として親として薄情だと思われるだろうが、彼は国王であり為政者としてこの国の舵取りをしなければならないのだ。
 心を鬼にしてでも最悪の事態を防ぐ必要があるのだ。

「城下に厳戒令を発し、ベリグザイム様とラミルダ様の捜索を最優先させております」

「何としても2人を見つけ出すのだ!」

「はっ!」

 国王にいつもの余裕はなかった。
 西部の戦乱が治まったと思ったら南部へ聖オリオン教国が手を出してきた。
 これだけでも面倒な話であるのに今度は王族の暗殺と誘拐、国王はこれらの事案に何かしらの作為的なものを感じるのだった。

 そしてこの報が各貴族家へ伝わるのにさして時間がかかる事はなかった。






「ドロシー様・・・何と言って良いか・・・しかし、ドロシー様が無事で」

 クリストフは言葉を紡ぐ事ができなかった。
 ドロシーの侍女が殺されていた事からドロシーの部屋にも暗殺者が押し入った事は明らかである。
 しかしドロシーはクリストフから貰ったネックレスをつけていた事から暗殺者の魔の手から守られたのだ。
 2人の兄と母親が殺され、そして自分も殺されかけ、更に妹と甥が行方不明。
 精神的に辛くて当たり前であり、13歳のドロシーには辛すぎる現実だ。

 クリストフはドロシーの手をとり涙を流しすぎ充血している目を見つめる。

「犯人は必ず見つけます。そして罪を償わせます」

 ドロシーは頷くだけで声を出す事はなかった。
 クリストフは先日自分を襲った者と今回の王族暗殺犯は繋がっていると確信をもっている。
 証拠など無いが、このタイミングで2つの事件が別物であると思う方が難しい。
 必ず犯人一味を見つけ出し罪を償わせると心の中でドロシーの涙に誓うクリストフであった。





 城から帰ったクリストフは早速カルラ、ペロン、プリッツを各配属先から呼び寄せる。
 と同時に父アーネストにも暗殺に備えるよう警告を発するのだった。

「まさか王都でそんな事になっているなんてね・・・」

「ドロシー殿下はさぞ悲しまれているでしょう・・・」

「・・・クリストフ君も無事で良かったよ」

 カルラ、ペロン、プリッツは今回の招聘で王都での出来事を知り驚愕していた。

「皆を呼んだのは他でもない。今回の犯人を捕縛する為に動いて欲しい」

「それは構わないけど、ボクたちは捜査とか素人だよ?」

 カルラの主張はもっともで、戦闘やこれまでしてきた仕事であれば問題ないが、犯罪者や犯人探しなどは門外漢である。
 ただ、クリストフは『捕縛』と言っており、『捜索』とは言っていないのだ。

「その点は心配しないで欲しい、捜索は別の者に既に指示を出している。だからカルラたちには犯人たちの正体が判明した時の戦力として期待しているよ」

「それなら任せておいてよ!」

「その犯人の目星はついているの?」

 ペロンの質問にクリストフは首を左右に振る。

 クリストフが直接的な攻撃を受けるのであれば返り討ちにする事は簡単だが、今回のように王族が狙われたり馬車爆破事件のような攻撃をされるとクリストフは無事でも被害を無くす事ができない。
 今回の事でクリストフは情報の重要さを改めて感じた為、猫獣人のプリメラを隊長とし鳥獣人のジャバン補佐に付け10人規模の情報部隊を軍部内に新設している。
 今後は情報部隊の強化も優先的に予算を割り当てねばならないだろう、そして暗部も作る必要があるのだろうかと溜息を吐く。
 今回新設した情報部隊にはクリストフが作成した隠密行動用のマジックアイテムを支給して活動を支援している。
 どちらにしろ城内で働く者、若しくは貴族の中に暗殺者を引き入れた裏切り者がいるはずで、先ずはその裏切り者を探し出す事が第一段階であるとクリストフは考えている。

「当面、カルラはこの屋敷で全体の指揮を、ペロンは屋敷周辺の警戒を、プリッツには父上の屋敷の警戒をして欲しい。クララはこれまで通り情報部の指揮を頼む」

『了解!』

 新設した情報部のトップにはクララを当てており、実戦指揮はプリメラに任されている。
 今後暗部を増設するとしても恐らくはクララの指揮下に入れる事になるだろう。
 それほどまでにクリストフはクララを信頼している。

 その後、クリストフはブリュンヒルに飛ぶと母セシリアにセシリア用と弟イグナーツ用の護身用マジックアイテムを渡し身に着けさせると王都に戻ってくる。
 勿論、父アーネスト、兄ジムニス、長姉エリザベート、次姉クリュシュナス、妹アントワネット、父の側室たちに護身用マジックアイテムを渡すのも忘れていない。
 ただ、祖父のゴーレスはマジックアイテムに頼る気はないと受け取る事はなかったので大叔父のフェデラシオにまとめて受け取ってもらい後日フェデラシオからゴーレスに渡してもらうようにしている。


 
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