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チートあるけどまったり暮らしたい のんびり魔道具つくってたいのに 作者:なんじゃもんじゃ

3章

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098 オリオンの落日5

 

 膨大な水が跳ね上がる。
 細かく散った水が陽光により煌き、そして七色のアーチが浮かぶ。

「あれが魔導砲の威力なのか・・・」

「何と言うべきなのか・・・今後の戦術が変わるのでしょうな・・・」

 アカイザーク・フォン・ベセス伯爵は破壊された聖オリオン教国軍の軍艦を見て魔導砲の威力を実感し、ブリュトゼルス辺境伯家の軍を預かるオラーショ・フォン・クリオンス将軍は魔導砲の運用の可能性に思いを馳せる。

「第二砲門、ってぇ!」

 ズッドォォォンッ・・・・ズッザァァァォォァァンッ!

 ホエール級1番艦である光月。
 その甲板上には3つの巨大な砲門が存在する。
 この世界の軍艦には見られる事のないものであり、クリストフが前世の記憶を元に設計し造り上げたホエール級戦艦の特徴である。
 この魔導砲が放つ狂気とも言える噴煙により聖オリオン教国軍の軍艦は船体に大穴が開き遅れて大爆発が起る。
 更にその爆発によって水が大きく跳ねあがり、水面が大きくうねりを作る事で周囲の船を巻き込んでいく。

「第三砲門、ってぇ!」

 ズッドォォォンッ・・・・ズッザァァァォォァァンッ!

 容赦なく続くフェデラーによる攻撃の合図。
 フェデラーの掛け声で数十か数百かの聖オリオン教国兵がジルペン湖に沈んで行く。
 しかし聖オリオン教国軍は未だに何が起きているか分かっていない。
 それもそうだろう、聖オリオン教国軍と神聖バンダム王国軍は2Km以上離れているのだから。

 実際、砲撃の合図をしているフェデラーでさえこの距離で届くのかは最初は疑問だった。
 訓練ではせいぜい500mほど離れた的への砲撃だったのが、実戦でいきなり2Kmもの距離での砲撃なのだから仕方がない。

「この遠視鏡というマジックアイテムも素晴らしい! あんなに離れている聖オリオン教国の者共が慌てふためく姿を手に取るように見る事ができるとは、何と素晴らしい事かっ!」

「うむ、この光月と言う軍艦には我らでは思いもよらぬ技術がふんだんに使われており、驚愕する事に疲れてしまいますな」

『第一砲門、次弾の装弾完了しました!』

 パイプを伝い聞こえてくる砲撃手の声。
 それに呼応するようにフェデラーは第一砲門に発射の指示をする。
 聖オリオン教国軍と神聖バンダム王国軍が魔術師による攻撃の間合いに入るまで魔道砲の砲撃は続く事になる。

 しかし光月の攻撃はそれだけではないので聖オリオン教国軍の受難は続く。
 ホエール級には左右に15門ずつ、前後に5門ずつ合計40門の連射型小型魔導砲が設置されている。
 魔術師の間合いではこの連射型小型魔導砲が火を噴く。
 この連射型小型魔導砲は名前の通り連射が可能になった小型の魔導砲であり、毎分40発もの魔法が放たれる。
 やっと魔導砲による狂気の攻撃が止んだと思ったら、今度は連射型小型魔導砲による雨あられとも言える魔法攻撃が降り注ぐのだから、その連射を受ける側である聖オリオン教国軍は堪ったものではない。

 神聖バンダム王国軍は光月による援護射撃の後、戦意を消失させた聖オリオン教国軍に突撃を敢行する。
 その頃の聖オリオン教国軍は既に旗艦が轟沈しており、指揮系統が混乱していた。

「何処から攻撃がっ?!」「こんな話は聞いてないぞっ!」「俺たちは死ぬんだぁぁぁぁぁ」「そ、創生主さまぁぁぁぁぁ」「母さぁぁぁぁんっ」「オッパァァァァイィィッ」

 阿鼻叫喚を極める聖オリオン教国軍、そこに神聖バンダム王国軍の突撃が敢行されるのだから混乱に拍車がかかるのは当然の話だろう。

「突撃ぃぃぃぃぃっ!」

 突撃したのはフリードリッヒ・クド・セバイス騎士爵率いる強襲用中型船である。
 セバイス騎士爵は奇襲作戦でアナに後れを取ったのでこの突撃で名誉挽回ではないが戦功を挙げようと必死である。
 多少強引ではあったが、セバイス騎士爵は聖オリオン教国軍の船団の中央部へ突撃を敢行した。








 過去に何度も繰り返された聖オリオン教国と神聖バンダム王国の戦いは双方決め手を欠くものであったが今回の戦いは過去に例がないほどの一方的な勝利と敗北によって幕が下りた。
 聖オリオン教国軍は白旗を掲げ投降する船、我先にとキルパス川に逃げ込む船、大破もしくは中破し動けない船、ジルペン湖に投げ出され船の瓦礫につかまり水面を漂う兵。
 フェデラーはキルパス川に逃げ込もうとする船に容赦なく砲撃を浴びせるよう指示を出す。
 それを傍らで見ていたベセス伯とクリオンス将軍はこの大勝利に浸るよりもこの後始末に思いを馳せ、そしてクリストフだけは敵にしてはいけないと心に刻み込むのだった。

 一方、ジルペン湖に浮かぶジルペン要塞から戦闘を眺めていたクリストフは「意外とあっさりと終わったな」と呟く。

「全てクリストフ様のご威光によるものです!」

 クリストフをリスペクトしているフィーリアが当然の事だと言わんばかりに胸を張る。

「まぁ、光月を出撃させた時点で勝負の行方は分かっていたよ。てか、クリストフが居る時点で聖オリオン教国の負けは決定していたとボクは思うよ」

 クリストフはブリュトイース伯爵家の中で自分を除いた最大戦力をこの場に戦場に呼んでいた。
 その1人は言うまでもなくフィーリアである。
 フィーリアはクリストフの護衛であるのでクリストフが行くところには必ず同行する。
 次にカルラ・クド・アダチ騎士爵、ペロン・クック、プリッツ・フォン・ヘカート、リリイア。
 勿論、戦力としてはフェデラー司令官やゲール副司令官、それに虎獣人のウィックもいるが、彼らは接近戦特化である。
 対してカルラを初めとした旧学友4人衆は魔術だけではなく魔法にも優れ、魔力による身体強化も使いこなし更に詠唱破棄も覚え遠近の戦闘に対応できるオールマイティ魔法使いである。
 因みにフィーリアは槍の腕ならゴーレスを超え既に人類で肩を並べる者はいないのではないかと思われるレベルであり、魔法においてもカルラたちと肩を並べるほどの力を持っている。

 自分がいる以上は最終的な勝利も疑ってもいない。
 それでもフィーリアはともかく、カルラたちを呼んだのはフィーリアに次ぐ戦力であるからでもあるのだが、カルラたちを戦場の空気に触れさせようとしての事だ。
 カルラとて戦闘経験はそれなりに豊富ではあるのだが、それは魔物との戦闘であって人と人の殺し合いではない故である。

「勝ったのは良いけど、一方的過ぎるわね。その点はあまり良くないわね」

「ああ、これだけ派手にやってしまうと後が面倒だよ。フェデラーももう少し手心を加えてくれて良かったんだけど」

 クリストフとカルラの会話を聞いていたその場に居る貴族たちがザワめく。
 歴史的な大勝利を前に不謹慎な発現をする2人に懐疑的な目が向けられる。
 しかしクリストフとカルラはそんな事はどうでも良いとばかりに話を続ける。

「サガラシとキプロンの王は予定通り降伏しているようだね。これだけでも良しとするかな」

 サガラシとキプロンとはサガラシ王国とキプロン王国の事で、共に聖オリオン教国と神聖バンダム王国に挟まれた小国である。
 サガラシとキプロンは共に聖オリオン教国に従属しており今回の戦いにも国王自ら出征をしている。
 小国とは言え一国の王が前線に出て兵を指揮するのはあまりない事だが、この2国は聖オリオン教国に隷属していると言っても過言ではない状態なので国王自らが出征する事で聖オリオン教国への忠誠を表しているのだ。

「やり過ぎの感はあるけど、フェデラーさんもそこはしっかり仕事をしているって事だね」

 近くに居た貴族がクリストフに諫言を言おうと振り返るのと同時にクリストフも椅子から立ち上がる。
 クリストフが立ち上がる気配で他の貴族もクリストフの方を向く。

「ベセス伯に通達を! 南部諸侯軍を率いて聖オリオン教国に攻め上りゴルニューを攻略せよ。フェデラーは光月と共にベセス伯の指揮下に入るように。クリオンス将軍はブリュトゼルス軍をもって拿捕した船と捕虜の対応を!」

 この追撃戦にブリュトゼルス軍を加えなかったのは南部諸侯に対しての配慮である。
 今回の戦いでの最大の戦功は光月擁するブリュトイース伯爵家であり、南部諸侯軍はほとんど戦功をあげてはいない。
 つまりここでブリュトゼルス軍を追撃に加えれば南部諸侯の戦功を奪う事になるだろうと考えたからである。
 ただ、光月に関しては味方の被害を最小限に抑える為に出さざるを得ない事はクリストフに苦笑いをさせるのだった。

 ゴルニューとは聖オリオン教国が神聖バンダム王国攻略の橋頭堡として100年以上前に築いた砦であり、100年もの間に何度も改修が行われ今では建設当初の規模に倍する要塞となっている。
 その要塞の攻略は聖オリオン教国に侵攻するには欠かせない事だが、今までは要塞の堅い守りに阻まれており神聖バンダム王国の被害は決して少なくない。

「貴殿らも戦功をあげるべく出陣をされよ」

 クリストフは本陣詰めだった貴族に戦功をあげさせるべく促すと、クリストフに諫言をと考えていた貴族を含めた貴族たちがクリストフに一礼し退室していく。

「クリストフ様の力は知っていたつもりでしたが、既に私の想像を遥かに超えております」

 残ったのはクリストフの護衛をしているフィーリアとカルラたち、そしてブリュトゼルス辺境伯家の魔術師団長であるロザリア団長に兵士が数名である。
 そして声の主はクリストフに魔法のいろはを教えたロザリア団長だ。
 ロザリア団長はクリストフが現れるまでは天才の名をほしいままにしていたが、そのロザリア団長であってもクリストフの規格外に感嘆するしかない。

 実を言えばこの戦いはクリストフにとって初陣である。
 クリストフの事を信用はしているアーネストではあるが、初陣では何がおきるか分からない為にクリストフにとって師匠にあたるロザリア団長をつけたのだ。
 これはクリストフが暴走した場合には諫言をさせクリストフの身に危険が及ぶ場合では盾となるようにとのアーネストの配慮でもある。

 こうして後世に『オリオンの落日』と言われる事になった戦いは終了した。
 今回の戦いは日が昇ると同時に開戦し昼前に決着しており、戦死者と行方不明者合わせて3万人にものぼる戦いはたった5時間ほどで終了したのだった。







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