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寒がりなお爺さん

作者:Y.A
へえ、冬の童話2016ねぇ。
試しに書いてみるか……。
書き終わったけど、参加表明してないから出せないじゃん。
まあいいか。普通に投稿しておこう。

この流れです。
「ああっ! 寒い! 寒い! 寒い! 何て寒さだ!」

 とある寒さの厳しい北の大地で、一人のお爺さんが家の中で叫びます。
 今の季節は真冬、毎日のように激しい吹雪が家にぶつかり、ドアや窓がガタガタと震えていました。

「このボロ屋め!」

 家には隙間風もあり、暖炉で火を焚いてもなかなか暖かくなりません。
 それもそのはず、この家はお爺さんのお爺さんが若い頃に建てた家なのですから。
 この土地は厳しい冬に備えて大量の食料を備蓄する必要があり、お爺さんは古くなった家を修復する時間がなかったのです。

「婆さんや、なぜ死んでしまったのだ」

 お爺さんは、春先に長年一緒に暮らしていたお婆さんを亡くしてしまいました。
 今まで二人で行っていた仕事を一人でこなさないといけないので、どうしても家の修繕に手が出せなかったのです。

 お爺さんとお婆さんには子供達もいましたが、彼らは大人になると町に出て行ってしまいました。
 お婆さんのお葬式の時、彼らは奥さんや孫達と共に一緒に町で暮らさないかと提案しましたが、それを頑なに断ったのはお爺さんです。

 ここには、お婆さんとの大切な思い出がある。
 自分はここで死ぬのだと。

 子供達は何度か説得を試みましたが、お爺さんは頑なに拒否し続けます。
 最後には喧嘩別れのようになってしまい、それ以降、お爺さんの家を訪れる者は一人もいなかったのです。

「吹雪は一向にやまない! また隙間風が増えた! 寒い! 寒い!」

 あまりの寒さに、お爺さんはイライラしながら怒鳴り続けます。
 そうすれば、寒さが治まるわけでもないというのに。

 そして勿論、それで暖かくなるはずがないのでした。

「この寒さをどうにかしてくれ!」

「いいよ」

 何と、お爺さんの独り言に誰かからの返事がありました。
 お爺さんが驚いて周りを見渡すと、そこには宙に浮く一人の男の子がいます。
 そのとても小さい男の子には羽が生えており、お爺さんはその男の子が妖精である事に気がつきました。

 お爺さんが子供の頃、ひいお爺さんから聞いた妖精の姿にそっくりだったからです。

「ボクの名前は、妖精のボックル。こう見えても、魔法の天才なんだ。でも、魔法で料理は作れないの。お腹が空いたから、何か食べさせて」

 いきなり現れて何か食べさせてもないとお爺さんは思いましたが、子供達と喧嘩別れをしてから初めてのお客さんです。
 つい嬉しくなって、食事の準備を始めました。




「このスープは、野菜も、お肉も、お魚も沢山入っていて美味しいね。お替り」

 妖精はその体の小ささにも関わらず、お爺さんが作ったスープを何度もお替りしました。

「このスープは、体が暖まるよ」

「このスープは、亡くなったお婆さんの直伝でな。ワシも子供達も、冬に食べるのを楽しみにしておった」

 お爺さんも、昔このスープを作ってくれたお婆さんを思い出しながらスープを食べます。

「じゃが、スープで暖まるのは短い時間だけ。ワシは寒くてな」

「そうなんだ。お爺さんは寒いんだね。今は真冬だから仕方がないのかな? でも、こんなに美味しいスープをご馳走になったから、お礼にボクの魔法で何とかしてみるよ」

「それはありがたい」

 妖精のボックルは、スープのお礼にお爺さんを暖めてあげる事にします。

「どんな魔法がいいかな? お爺さんは、どうしてこんなに寒いと思うの?」

「お婆さんが亡くなって一人になり、この家を修繕する余裕がなかったからな。食料がないと死んでしまうから、そちらを優先せざるを得なかったのだ」

 とても古く、冬には毎日のように吹雪を浴び続ける家です。
 ガタがきて当然だと、お爺さんは話します。

「ちょっと隙間風が多いよね。わかった、僕の魔法で家を直してあげる。ターマヤ、カーマヤ、ペペロッタ!」

 妖精のボックルが妙な呪文を唱えると、お爺さんの家は新築時と同じように綺麗になりました。
 気になっていた隙間風もなくなり、暖かくなったような気がします。

「これで大分暖かくなったね。スープをお替り」

 妖精のボックルは、自分の仕事に満足しながら何杯目かのスープ食べ始めます。

「でも、お爺さんはまだあまり暖かくないみたい」

「もしかすると、薪が足りないからかもしれないな」

 お爺さんは、お婆さんが亡くなったので今までの半分しか薪を集められませんでした。
 だから今までの半分しか薪を使えず、それも寒い原因となっていたのです。

「薪が去年と同じくらいあればいいんだね。僕が魔法で出してあげるね。クータラ、テーミヤ、ララポッタ!」

 またも妖精のボックルが意味のわからない呪文を唱えると、家の外の薪置き場には大量の薪が積まれていました。
 お爺さんは、大喜びで去年と同じ量の薪をくべます。

 暖炉の火が大きくなり、家の中が暖かくなっていきます。

「これでもっと暖かくなったね」

「ありがとうな」

 お爺さんは、妖精のボックルにお礼を述べます。

「うーーーん。でも、まだお爺さんはあまり暖かくないみたい。何か心当たりはないかな?」

「お婆さんが作ってくれるお酒がないからかもしれないな」

 この家の近所にはお店がないので、お爺さんのためにお婆さんが自家製のお酒を作ってくれていました。
 真冬にはこれを温めて二人で飲んでいたのですが、お爺さんにはお酒が作れず、体を暖められなかったのです。

「お酒か。僕が魔法で出してあげるよ。ザーヴァラ、トーレマ、キキロッペ!」

 三度、妖精のボックルが奇妙な呪文を唱えると、お爺さんの目の前に見慣れた酒瓶が現れます。
 これは、お婆さんが作ったお酒を入れていた瓶でした。
 瓶を持ちあげると中身は満タンで、お爺さんは早速温めて飲む事にします。

「本当に、お婆さんが作ってくれたお酒と同じ味がする。ボックルは凄いんだな。じゃが、酒は出せて料理は出せないのか?」

「ボク、料理は苦手なんだよね。お爺さん、スープをお替り」

「待っておれ、追加で作ってあげるから」

 ボックルの言い分に首を傾げながらも、お爺さんは空になったお鍋にまたスープを作ります。

「このスープは本当に美味しいね。お爺さん」

「遠慮なく食べなさい」

 お爺さんも、スープを食べるボックルと一緒に温めたお酒をチビチビと飲みました。
 お酒のおかげで体も暖まり、同時にボックルを見ていると町に住んでいる孫達を思い出し、少し胸が暖かくなってきます。

「ありがとうな、ボックル。ワシは大分暖まったよ」

 お爺さんは、スープを食べ続けるボックルにお礼を言います。
 久しぶりに他の人が来てくれたので、とても嬉しかったのです。

「うーーーん?」

「どうしたんだい? ボックル」

「お爺さんは、まだ完全に暖まっていないようだね」

「いや、そんな事はないぞ。ワシは十分に暖まったよ」

 お爺さんはやんわりと、もう魔法は必要ないよとボックルに言います。
 確かに、また明日になればまた寒いかもしれないけど、その時は暖炉を炊いてお酒とスープを食べればいいのだからと思ったからです。

「いいや、妖精界で期待の新人と言われているボクの沽券に関わる。お爺さんをちゃんと暖めないと、スープのお礼にならないから。そうだなぁ……」

 一旦スープを食べる手を止めた妖精のボックルは、暫く考え込んでからとても重要な事を思いつきました。

「今度こそ、お爺さんがずっと暖かいままでいられる魔法をかけてあげるね。シーマヤ、レートク、ササクッタ!」

 再び妖精のボックルが奇妙な呪文を唱えると、何とその場からお爺さんが消えてしまいまいます。

「これは会心のできだね。妖精界期待の新人のボクに相応しい。さてと、もったいないからスープは全部食べようかな。魔法ってお腹が空くしね」

 お爺さんが消えた家の中で、妖精のボックルは鍋一杯のスープを心から堪能するのでした。






 お爺さんが家から消えてしまう少し前、そこから南にある町でお爺さんの子供達とその奥さん達、孫達が集まって夕食を共にしていました。
 みんな同じ町に住んでいたので、定期的に集まっていたのです。

 共に食卓を囲みながら、彼らの心配のネタは、決してこの町には来ないお爺さんの事でした。

「母さんが亡くなった以上、父さんもあそこで一人暮らしは辛いと思うんだがなぁ……」

「特に冬がな。この町でも、冬は辛いんだ。父さんはちゃんと冬の準備ができたのかな?」

「今度、吹雪が晴れたら様子を見に行くか?」

「あっ! お爺ちゃんだ!」

「お爺ちゃんだ!」

「お爺ちゃん、いらっしゃい!」

 お爺さんの息子達が真剣に話をしていると、急に孫達がおかしな事を言い始めました。
 話を止めて顔を上げると、何と話題にのぼっていたその父親がリビングの入り口にポツンと立っていたのです。

「父さん?」

「この吹雪の中を、ここまで歩いて来たのか?」

「いや、ワシは……」

 お爺さんは、妖精のボックルに魔法をかけられたと思ったら、町にある息子の家に飛ばされてしまい、どう説明していいものか迷ってしまいます。

「父さん、まさかこの吹雪の中、あの家には戻らないよな?」

「せっかく来たんだから、食事くらいしていきなよ」

「お義父さん、今日はワインもありますよ」

「お爺ちゃん、早く座って」

「ああ……」

 まさか帰るわけにもいかず、お爺さんは久しぶりに子供や孫達と楽しい時間を過ごします。
 そしてそれ以降、お爺さんは町で家族と暮らすようになるのでした。




「お爺ちゃん、このスープは美味しいね」

「お婆さんの秘伝だからな」

「お婆ちゃんってどんな人だったの?」

「優しくて、料理が上手だったなぁ……」

 町に住むようになったお爺さんは、たまにお婆さん秘伝のスープを作り、孫達と一緒に食べて身も心も暖かくなるのでした。

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