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「今日は夢を叶える方法を説明します。」
夢子先生はそう言うと教室の子供達を見渡しました。
いつものようにおしゃべりに夢中な子、
興味を示して先生に目を向ける子、
そこにはいろんな顔がありました。
「せんせー。叶わない夢もあるんじゃないですか?」
一番前の席に座っているトシくんが手をあげて聞きました。
トシくんはなにかと疑問があればお構いなしに手をあげて
先生によく質問する子です。
「ううん。叶わない夢はないのよ。」
夢子先生は首を振ってやさしく答えますがトシくんは食い下がります。
「だってどんなにがんばたってアンパンマンにはなれないじゃん。」
その一言で教室中が笑いの渦につつまれました。
「それはね。あとから説明するから、今は順番に話を聞いておいて。」
夢子先生も笑いながら、あらためて話をはじめました。
「じゃあまず、みんなにどんな夢があるのか聞いてみましょう。」
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夢子先生は小さな紙をみんなに配って
そこにひとりひとりの夢を書いてもらうことにしました。
みんなわいわい言いながら、自分の夢を書き始めます。
そんな中、えんぴつが進まない子もいました。
窓際に座っていたカナちゃんは言いました。
「先生。夢ってないとだめですか?」
夢子先生は半ば予想していたんでしょう。
ゆっくりと首をふってやさしく答えました。
「いいえ。夢がなくてもいいのよ。
じゃあ、カナちゃんは何をしているときが
一番楽しいか書いてくれる?」
「うーん。書いてみるね、先生。」
カナちゃんは普段はおとなしい子ですが、
自分やまわりに困ったことがあるとすぐに話をしてくれる子です。
夢子先生は授業中、大事なことを説明し忘れたときなど、
よくカナちゃんに助けられます。
夢子先生はみんなが書いた夢を集めて一通り目を通すと、
いくつかの箱に分類しはじめました。
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「先生はみんなの夢を大きく3つに分けてみました。」
夢子先生はそう言いながら
黒板になにやら文字を書いて、
そこにいくつかの夢を貼り付けていきました。
”アンパンマン型”
〇アンパンマン
〇星になる
〇神様
”未来型”
〇野球選手
〇お医者さん
〇パン屋さん
〇幼稚園の先生
〇世界一周旅行
”現在型”
〇遊園地で遊んでいるときが楽しい
〇子どもでいつづけること
〇このまま家族みんな幸せに暮らす
黒板に書かれた夢を見て
みんなが隣の友達と話をはじめたので
教室が賑やかになってきました。
夢子先生はそんなみんなの様子を
うれしそうに見て話をはじめました。
「みんな、黒板を見て気づいたかもしれないけど
夢は未来だけにあるのではありません。
でもどの夢がよいとかわるいとかでもありません。」
みんなが少し静かになって話しを聞いてくれそうだったので
夢子先生は続けました。
「アンパンマン型は絵本の中のヒーローだったり、
好きな動物になりたかったりと、さっきトシくんが
言ってくれたように空想タイプの夢です。
もしタイムマシンで過去に戻りたいって
人がいたらこのタイプかもしれませんね。」
「それから現在型は、今が続いてほしいと願う夢。
ずっと夏休みが続いてほしいとか、ちょっと変化球もあるけど
夢がないって人も実はこのタイプかもしれません。」
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「いろんな夢があることがわかったところで
今から本題に入るね。」
この言葉でまだおしゃべりをしていた子供たちも
夢子先生に注目してくれました。
「まず、どんな夢でも。
叶わないと思う夢は叶いません。」
「なぜなら夢は雨のように
降ってくるものではなくて
自分で叶えるものだからです。」
前の席に座っているトシくんは
もう黙っていられないという感じで
手をあげて言いました。
「で、で、でも!せんせー!
ずーと夏休みが続いてほしいなんて夢
ぜったい叶わないじゃん。」
夢子先生はトシくんを見て
やさしく微笑みました。
「そうね・・・。じゃあ
ずーーと夏休みが続いてほしいという夢が
ぜったいに叶わないと思う人は
手をあげてくれる。」
夢子先生はそう言って
教室のみんなに呼びかけました。
無理だよねーとか、
叶わないよねーとか、
みんなそれぞれに言い合いながら
ほぼ全員が手をあげました。
でもよく見ると一番後ろに座っていた
レナちゃんが手をあげていませんでした。
「レナちゃんは叶わないとは思わなかったの?」
夢子先生のその声でみんなが一斉に振り向きます。
レナちゃんはゆっくり頷きました。
レナちゃんは頭がよくて
柔軟に物事を考えることができる
やさしい子でした。
「みんなありがとー。
じゃあレナちゃん。どんな風に思ったか話してくれる?」
レナちゃんは席からゆっくり立ち上がって
話をはじめました。
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「わたし、その夏休がずっと続くのが夢ってのが
変じゃないかなって思ったんです。
そんなの夢って言うんですか先生?」
「あ。そっちにきちゃったのね。。。」
夢子先生はつぶやくと、少し考えて答えました。
「そうね。ただ願っている間は夢じゃないかもしれない。
でも自分で実現するんだって思ったら先生は夢だと思うな。」
「あ、そっか。」
レナちゃんは少し納得したような表情を見せました。
そこで夢子先生が再び声をかけます。。
「じゃあもう一度聞いてもいい?。
夏休がずっと続いてほしいって夢は
ぜったい叶わないと思う?」
レナちゃんはまた考え込みましたが
ゆっくりと首をふりました。
「えーと。たとえば政治家とか偉い人になって
夏休がずっと続くようにすればいいんじゃないですか?」
「そんなのむりよー。」
となりのエミちゃんが間髪入れずに言いました。
「やってみないとわからないじゃない。
それに、学校サボってればずーと夏休だよ。」
夢子先生はつい笑ってしましました。
「ふたりともありがとー。
先生が言いたかったのはね、
もしかしたら叶わないかもしれない夢でも
叶わないと思ってあきらめちゃうのと
少しでも可能性を考えて夢に近づくのでは
ぜんぜん違うってことなの。
だから夢は叶うとか叶わないとか以前に
あきらめたらそこで終わりなんです。」
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「せんせー。じゃあアンパンマンになるには
どうしたらいいんですか?」
トシくんはもうこれ以上待てないという感じで
手をあげて先生に問いかけました。
「そうねー。トシくんはなんでアンパンマンになりたいの?」
「だって強くてかっこいいじゃん。」
トシくんの言葉に教室中がまた笑いに包まれました。
「なるほど。」
夢子先生はみんなを見渡して、それから話を続けました。
「夢に少しでも近づこうとするのはとても大切です。
でも夢にはもうひとつ秘密があります。」
その言葉にみんなはまた夢子先生に注目しました。
「それはなんでその夢を叶えたいのか?
みんな、自分の夢の中身を知らないことが多いのです。」
みんな夢子先生が何を言っているのかわからずにポカンとしていましたが、
夢子先生はトシくんに尋ねました。
「強くてかっこいいからアンパンマンなりたいのよね?」
「うん。」
「強くてかっこいいものは他にはないの?」
トシくんは腕を組んで考えました。
「だって、アンパンマンは強くて困っている人を助けられるんだよ。」
夢子先生はトシくんがとてもやさしく、
人助けが上手で思いやりがあることを知っていました。
「そうね。でもそれはアンパンマンにしかできないことなのかな?」
そう言うと夢子先生はみんなに向かって
再び話しをはじめました。
「アンパンマンになるには、
たとえば、未来の科学が進んで自分の体を作り変えてもらったら
アンパンマンになれるかもしれません。
たとえば、遊園地で働く人になれば着ぐるみを着てアンパンマンに
なれるかもしれません。
たとえば、勇気と愛を持って行動すればそれは
まさしくアンパンマンかもしれません。」
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「先生!それは叶えたい夢が難しいから
他の簡単なもので夢を叶えなさいってことですか?」
そう聞いたのは、丁度真ん中あたりに座っているアキラくんでした。
彼は運動もできて頭もよく、腕っ節のつよい子で、男の子のまとめ役的存在でした。
「いいえ。そうじゃないのよ。
決して今持っている夢を叶えるのが難しいから
似たような簡単なものですませなさいというわけではありません。
まず、自分が求めている夢の中身をよく考えてほしいの。
なぜそうなりたいのか。なぜそれを求めるのか。
夢で本当に求めていることに目を向けて見てください。
もちろん夢を代替品ですますのではなくて、
夢の本質を見て、その夢を叶えてほしいの。」
「なんだか先生の話は難しいや。」
アキラくんは夢子先生から目をそらしてしまいました。
夢子先生は少し考えてから黒板になにやら絵を描きはじめました。
それは・・・カレーライスでした。
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あるところに世界で一番美味しいカレーを
食べたいという夢を持った、ひとりの男性がいました。
彼は世界で一番美味しいカレーを
作っているお店を探すため世界中を旅しました。
ガイドブックや人から聞いた話を元に
美味しいと言われるお店を次から次へと渡り歩き
ついには世界を一周をして家に帰ってきました。
家に帰ってから彼は思いました。
”あそこのカレーは最高に美味しかった。
いや、あのカレーも捨てがたい。
いったいどれが世界一だろうか・・・。”
彼は世界一のカレーはどこだったか
1日中考えましたが答がでません。
そうこう考えているうちにカレーの香りが
してくるではありませんか・・・。
それは彼の母親が、久しぶりに帰ってきた
息子のために作ったカレーでした。
”うちのカレーも食べてちょうだいね”
それだけ言うと母親はお皿を差し出しました。
いまさらうちのカレーなんか・・・
彼はそう思いましたが、そのカレーの香りは
とてもなつかしい思い出の味でした。
ああ、なつかしい、そして
なんて美味しいんだろうか・・・。
「そう思うと彼は感動で涙がとまらなかったそうです。」
夢子先生はそこまで話すとみんなに問いかけました。
「彼の夢は叶ったと思いますか?」
-9-
子供たちは”叶ったんじゃない?”とか
”でも世界一は見つかってないよ”とか
口々に隣の友達と話をしはじめました。
「アキラくんはどう思う?」
夢子先生は直接アキラくんの目を見て
答えをうながしました。
アキラくんは先生の話を聞きながら
考えこんでいるようでした。
「じゃあ先生は、はじめから家のカレーを
食べればよかったって言うんですか?」
アキラくんは晴れない顔でそう言いました。
「そうじゃないのよ。
彼はいろいろなカレーを食べて世界を旅したから、
家のカレーの美味しさに
気が付いたのかもしれないわね。」
「家のカレーより、もっと美味しいカレーは
他にあるんじゃないですか?」
夢子先生はやさしく微笑みながら、今度はアキラくんに
そしてみんなに向かって話をはじめました。
「そうね。もし同じ夢を持っている人が他にいたら
その人は他の場所で世界一のカレーを見つけたかもしれませんね。
夢の答えが家のカレーだと決まっているわけではありません。
夢の答えは人の数だけあります。」
アキラくんはここまで聞いて
少し安心したような表情を見せました。
「彼は世界一のカレーライスに何を求めていたのでしょうか?
味への感動でしょうか?達成感でしょうか?
でも彼の夢の本質はそうではなかったんです。
子どものころから大好きで食べていたカレーライス。
そのほっとするあたたかい味、家庭の味こそが
彼にとっては世界一のカレーだったのです。」
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夢子先生は再び黒板に
文字を書きはじめました。
”1.夢へ近づく”
↓
”2.夢の本質を見つめる”
↓
”3.夢は心で叶える”
「夢を叶える最後の鍵は心にあります。
実はどんなに身体で夢を叶えても
心が満たされなければ夢は叶いません。」
前に座っているトシくんが勢いよく手をあげました。
「せんせー。わかった!
僕の身体はアンパンマンじゃないけど
心はアンパンマンになれるんでしょ!」
「そのとおりね。
でも身体もアンパンマンなることが夢なら
それも叶えたらいいのよ。」
「うん。」
トシくんは納得したように頷きました。
窓際に座っているカナちゃんも手をあげました。
「でも先生、1と2と3は同じじゃないんですか?」
夢子先生は大きく頷いて答えました。
「そうね。その通りです。
夢へ近づくのも、夢を見つめるのも、
夢を想う心があってこそです。」
すると真ん中の席のアキラくんも手をあげました。
「でも先生、夢を心で叶えるって
具体的にどうすればいいんですか?」
夢子先生は黒板に一本の道を描きました。
「まずほんの半歩ずつでもいいから夢に近づくの。
そして歩いている行き先と道を確かめる
求めている夢と道はこれでいいのか?」
そして夢子先生は1本の道を
いろんな道に枝分かれさせたり
いきなりゴールへ結んだりしました。
「自分が求めている心の道を探してください。
心に距離はありません。
少し進んでみて、そして自分の心を確かめる。
それを繰り返してみてください。
いま夢への気持ちをいっぱい持っているみんなは
心があれば夢への道は自然と開けます。
でも、その夢を叶える気持ちを忘れそうになったとき
見失いそうになったときは・・・
ぜひ先生の話を思い出してください。」
−おわり− |