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鉄鋼車にて異世界へ  作者: 詩月凍馬
本格運営と樹の歪み?
54/57

食い物屋台ヤムラ始動! ・・・ってヤムラいるのか?

長らく空けてしまって申し訳ありません。

お陰さまで私生活の方も大分落ち着いてきましたので、本日より更新再開いたします。

お待ち下さった読者様には、本当にご迷惑をお掛けしました。

本日より、再びの鉄鋼車を宜しくお願い致します。

 はてさて、何故かメニュー決め試食会に女神さんが来ていたりと何だか少々ぶっ飛んでた気もしないじゃないが、兎も角これで一応メニューは決まった訳だ。

 っつー事で、さぁいっちょ屋台運営開始と行こうじゃないか!


「って張り切ったはいいんだけどなぁ・・・」


 調理を頑張るルリィを眺めつつ、ぼやく俺であった。

 あ、ちなみに現在地、バナバの町に屋台通りの新店舗『バーガーヤムラ』からのお届けとなっております、はい。


「お兄ちゃん、まだ言ってるの?」


 小さくぼやいたつもりだったけど、どうやら聞こえていたらしく椅子に座って足をブラブラさせながら俺を見てくる。

 まだまだ小さいコニィは流石に料理させる訳には行かないので、基本は接客補助。

 なんで、準備中の今はまだ仕事が無い訳で、姉が頑張る姿を眺めつつお客が来るのを待ってる訳だ。


 いや、まぁ、元々コニィの場合は体調的なもんもあるんで、実質的な戦力としては扱ってないんだけどね。

 女神さんが持ってきた『世界樹の葉茶』に『立法樹の葉茶』、果ては『神聖大樹の葉茶』何ていう女神さんにその叔母上、更には母上殿が宿る世界樹なんつーぶっ飛んだ所ではない超レアなお茶のお陰で復調しているけど、だからと言って衰えていた体力が一朝一夕で戻る訳も無く。

 姉の手伝いをしつつ、無理の無いペースで体力をつけてる最中って事。


 まぁ、どの道学力的な面でもまだまだ不安はあるしね。

 当面、コニィは看板娘っつーか、むしろマスコットキャラか? ってな方向で頑張って貰えりゃそれで言いだろ、うん。


 で、さっき言われた『まだ言ってるの』発言に関してな訳だが・・・。


「つーてもなぁ。なにゆえヤムラをつけるかねぇ・・。別にいらなくね? ヤムラなんて屋号」


 と、これである。


 メニューが決まり、んじゃぁ店名決めましょかとなった時、何故か知らんが満場一致(俺除く)で可決されたのが、このバーガーヤムラな訳でして・・。

 ぶっちゃけ、何だかこう・・変な感じがしてならん訳よ。

 本業の運び屋始めた時もそうだったけどさ、態々自分の名前使おうとか思わなかったし。


 まぁ、アレは仕事に使うのが俺所有の神代機器――つまりは車だったからな。

 俺の名前を使うことで、その神代機器が俺の持つ『リネーシャの寵愛』由来である事を前面に押し出す必要があったから認めた経緯があるんだ。


 けど、今回の屋台に関しては別に神代機器なんざ使ってないわけで、加護持ちがどうのなんて事を押し出す理由もないし、ヤムラはいらんだろと思ってたんだよ。


 いっそ俺としては地球にあるバーガーやの代名詞であるMが着くところだとか、Lが着く所だとかの名前でも良いんじゃなかろーかと。

 まぁ、悪ノリなのは否定せんけどな?


 そんな事を考えてた俺としては、だ。

 唐突に決まったバーガーヤムラの名前は正に青天の霹靂。

 いやいやそこで俺を押し出しますか、って言ったんだけど・・・。


 その時のコメントがコチラ。


『何言ってるんですかイツキさん。イツキさんが教えた料理なんですし、地球・・でしたっけ? イツキさんの故郷の調味料も使ってるんですし、あれも考えようによっては神代機器ですよ』


『それに運び屋ヤムラとの関係性を示す事で、話題作りにもなりますからね。イツキ様の所有する神代機器が規格外である事は既に周知ですし、そんなイツキ様が関係しているのであれば、と言う一種の期待を集める事も出来ます。既に幾つもの屋台がある中で、集客を得るには妥当な手段だと思いますよ』


 と、主に経営なんかの面から意見してきたのは、我が家の経済・・・っつーかむしろ頭脳担当なネリンさんとイリアさん。


『だって、元々ご主人様のお料理ですし・・』


『イツキ様の料理を売り出す訳ですし、その屋台の名前にヤムラがつくのは当然だと思いますけど・・』


 とこれはクーリアとルリィ。

 こっちはこっちで俺が元々の料理考案者――いやまぁ、こっちの世界では、だけど――だから当然って感じの答え。


 で、残るルリィと女神さんはと言いますと――


『? お店にヤムラってつけると何か問題なの、お兄ちゃん』


 不思議そうに小首を傾げるコニィと


『あら、良いじゃないですかバーガーヤムラ。私も時々並ばせて貰いましょうか』


 と、相も変わらずぶっ飛んだ意見を、ノホホンと言い出す女神さん。


 うん、コニィは純真で良いなぁで済むけどさ・・・。


 女神さん、アンタ、この世界を統べる主神様が一屋台に並ぶとか、本気で言ってんの?

 ってか、そうホイホイ現界していいんかいっ!

 しかも理由が屋台に並ぶ為って・・・。


 ・・これ、マジにやらかして神殿関係者に気づかれたらさ、ソッコーで宗教革命起こりそうな気がするわ。


『バナバの屋台で発見! 我らが主神はノホホン天然系!?』


 なんて大書きした見出しに、ほんわか笑顔で屋台の列に混じる女神さんの写真が載ったゴシップ誌の一面を想像した俺がいる。

 いや、うん、このセイリーム世界にゴシップ誌なんつーもんは無いんだけどな?


 とまぁ、こんな経緯で決まってしまったバーガーヤムラなる店名に、今更駄目だしする気はないにしても、内心複雑なもんがあるわけで、それがボヤキとして出た訳だ、うん。


・・・・・・。


うん、とりあえず、気持ちを取り直して商売しよう、そうしよう。

今更ぼやいた所で意味ないしね。


「あ~スマン、うん。気持ち取り直したから、もう大丈夫」


 そう言ってコニィの頭を撫でてやると、気持ちよさそうにふにゃりと笑ってくれる。

 あはは、なんかこんな所は織絵の小さい頃思い出すなぁ。

 うん、和む和む。

 さて、本格的に気分も持ち直した事だし、商売すっかねぇ。




 で、初日営業がどうなったかって言うと、だ。


「嬢ちゃん、チリバーガー3つだ!」


「ルリィちゃん、こっちには唐揚げバーガー2お願いね」


「は、はいっ、少々お待ちください!」


「えっと、はいチリバーガーと唐揚げバーガー注文の客様。はい、熱いから気をつけて下さいお婆ちゃん」


「ありがとね。お手伝いえらいね、頑張って」


 うん、盛況だ。

 一日目にして行列の出来る屋台と化したよ。

 物珍しさが原因なのは間違いないけど、まぁ買ってくれた人達は味にも満足してくれてるっぽいし、明日からも大丈夫だろ。


 と、まぁ、それは在り難いんだけど、お陰でこっちは大忙しだ。

 ルリィはさっきからフル回転で料理してバーガーを量産してるし、完成したバーガーを渡すコニィはコニィで結構忙しく動いている。


 で、サポート役で来た俺はってぇと・・・


「はいはい、押さないで並んで下さ・・・おいコラッ! そこ、いい歳こいた大人が子供押し退けてズル込みすんなっ! 素直に並べ!」


「んだとコラァ! いてま・・フギャッ!?」


 見ての通り行列整理の真っ最中だ。

 まぁ、大半の人は素直に並んでくれてるからいいんだけど、中にはやっぱり馬鹿もいる。


 最初はコニィがやってたんだけど、何だか柄の悪いのも出始めたんで俺が変わった訳だが、案の定だよ、おい。


 ってか、冒険者崩れだか何だか知らんけどさ、ちっちゃな子供まで並んでるのに、それ押し退けるとか本気でどうよ?

 注意したら注意したで逆ギレするし。


 とりあえず、そんな輩はスタンロッドで鎮圧後、衛兵さんに御連行願う事になる。


 ってか、屋台通りは勿論の事、基本街中は喧嘩を始めとした騒ぎは厳禁ってのはここバナバに元々ある法な訳だ。

 騒ぎを起こした輩は衛兵にしょっ引かれ、事情聴取の後罰金等の罰を科されて開放される事になる。


 まぁ、この辺りも当たり前っちゃ当たり前だよなぁ。

 屋台なんかにゃこのバーガーヤムラみたいに火を使ってるとこだってある訳で、そんなもんが並んでる中で盛大に大喧嘩やらかされた日には、下手すりゃ火事だって起こりかねん。

 だからまぁ、衛兵さん達もこう言った屋台通りなんかは重点的に見回ってる訳だけど、腕と度胸が売りの冒険者――その中でも度胸の意味を取り違えた連中の中には『はっ! 衛兵が怖くて冒険者なんぞできるか!』と勘違いした強気を前面に出す馬鹿もいる訳だ。


 ぶっちゃけひっじょーに迷惑な上にかっこ悪い事この上ないが。


 何だ?

 衛兵も恐れずに法を破るオレってカッコいい! とでも思ってんのかコイツら。

 それにしちゃぁやってる事がいたいけな子供脅して列の順番に割り込むだとか、屋台営業中のルリィをしつこく口説いたりとかで、随分せこいと言うか、小さいと言うか・・。


 あ、ちなみに先の仕事で仲良くなった、アルマナリス神殿の神官騎士のみんなとかも会に来てくれてたりする。

 今日は非番なのか、簡素な服装で鎧はつけていないけど、鍛えに鍛えたその体の厚みは隠せない訳で、彼らがいる時は自称アウトローな皆さん方は小さくなって常識的な行動をとっていた。


 うん、その点見てもカッコ悪いわ。

 思いっきり強い物に巻かれてんじゃん。

 法がどうした、衛兵がどうした騒ぐなら、そう言う人らの前で率先して暴れて見せりゃいいものを・・・。

 あ、即鎮圧食らうから嫌なのか。

 マジで小物だ。


 結局、本日の営業は用意した食材が全て売り切れた所で終了となった。

 撤収準備を進める間にも、『明日も来るから』なんて声がかけられるのが嬉しかったり。

 うん、明日も頑張ろう。


 ・・・と、それは良いとして。


「どうすっかなぁ。あれ、本気で従業員増やさんと身がもたんだろ」


 夕食が終わった団欒の時間に、俺はそう言って頭を掻いた。


 ぶっちゃけ、単に疲労だけなら女神さんがくれたお茶があるからね。

 しっかり食事して、あったかい風呂で体を解して、あのぶっとんだお茶飲んでゆっくり眠れば翌日にはすっきり爽快な訳だから、そこまで大変じゃないんだが・・・。


「取り合えず、列の整理してもらう人は必要だよなぁ。俺は基本運び屋家業で出張ってるから、毎日出来る訳じゃないし」


「う~ん、流石に今日みたいだとコニィにやらせるのはちょっと・・」


 ルリィもその点には同意らしく、満腹感と一日頑張った疲れとでウトウトしかけているコニィの頭を優しく撫でながら、ちょっと困った顔をしている。


「となると、一番手っ取り早くて安全なのは奴隷を購入する事なんですが・・」


「いや、それはマジで勘弁」


 顎先に手を当てつつ言うネリンさんの言葉に、即座に返した。

 だって、これ以上増えられても困るし。


 その辺りは発言者のネリンさんもわかっているらしく、苦笑しつつ即座に手を振ってみせる。


「あぁ、はい、その辺りは解ってますとも。イツキさんですしね。奴隷を増やす=家族が増えるで何だか余計な事抱え込みそうですし」


 あはは、否定できんわそれ。

 いざ購入した奴隷が『訳あり』だったりしたら、何とかしたいと思っちゃいそうでちと怖い。


 唯でさえクーリアのトラウマも完全に回復したとは言えんのだし、こちとら元々日本の一小市民。

 頭の出来も身体能力も突出してない一般人に、出来る事なんざそれこそ狭いもんである。

 ・・んだけど、いざその時になったら何か走り回ってそうな気がしないでもない。


 うん、本気で自重しよう。


「ですが、奴隷と言うのは安全面等では秀逸である事も確かです。イツキ様のお料理を教えるとすれば、どうしたってイツキ様が持つ特典・・・でしたか? 日本より転生されるに当たり、与えられたあのお力を説明しなくてはならなくなります。その点では、奴隷に対して主人が持つ強制権で口外を禁じられますから」


 とやたら現実的な意見を口にするイリアさんだけど、まぁ、それは一理あるんだよなぁ。


 奴隷と主人ってのはやはり魔法的なもんで縛りがある訳で、大概の命令には強制権がある。

 今回の例で言えば、『調理の秘密は喋るな』みたいな命令を出しとけば、唐揚げ粉の出先が亜空間車庫のマローダーだとか、他にももっと香辛料がたくさんあるとかは広まらせずに済む。


 この世界じゃ今だ香辛料の類って高級品だし、もっと言えば石鹸その他の嗜好品の大半は高級品だ。

 うちじゃ平気で毎日使ってるけど、本来、この世界の人達が石鹸を使うのはそれこそ結婚式や成人式みたいなお祝い事、それも大きなもんがある時くらいなんだそうな。


 当たり前に毎日風呂入ってボディーシャンプーにシャンプー、リンスなんて使ってる身からすると、ちょっとカルチャーギャップがデカイけどまぁ、文明レベル的に考えてもそんなもんだってのは解る。

 新しく奴隷を購入したとすれば、当然その奴隷にも風呂なんかは使ってもらうので、色々と『黙っとけ』って命令は必要になってくるだろうなぁ。


 全員が全員、クー達みたいだとは限らないし。


 基本的に家族をそんな命令で縛りたくない俺としては、あんまりやりたい手段じゃないんだが・・・。


「あの、イツキ様? 料理人自体を増やす必要はないと思うんですが・・」


 控えめに手を上げながら言うクーリアに、みんなの視線が集まる。

 それに驚いたのか、クーリアはちょっとビクリとした見たいだけど、気を取り直した様に続けた。

 うん、まぁ、ここの人間はもはや家族っていい位に馴染んでるしね。

 俺以外は女性ってこともあるんで、街中みたいにトラウマは刺激されたりしないんだろう。


 と、まぁ、それは良いとして。


「その、バーガーヤムラはあくまで屋台ですし、以前イツキ様と見て回った限りでは大体お一人で回されている所が多かったじゃないですか。ですから料理の供給量自体には、そこまで不満が出てこないと思うんです」


 あぁ、成る程。

 確かに屋台の大半はおっちゃん、おばちゃんが一人で切り盛りしてて『欲しけりゃ並べ』的な部分はあったなぁ。

 それで不満が出てた様子も無いし、となると料理は当初の予定通りルリィに無理のない範囲で限定しても良いかも。


 本気で稼ごうと思ったら、それじゃまずいのは確かだけどさ。


 俺がそんな事を考えていると、ネリンさんからも同意の声が上がった。


「まぁ、たかが・・って言い方は変ですが、屋台な訳ですしね。本気で小料理屋だすなら兎も角、ある程度は妥協しても問題はないでしょう。勿論、手を抜いて客足絞るとかは問題外ですけど」


 うん、それは問題外。

 折角買いに来てくれてるのに、『そろそろ疲れたし、面倒だからここで作るのやめても良いか』とか、客に対して失礼すぎる。


 その時


「あ、でしたら私がお手伝いしましょうか」


 と名乗り出たのはノンビリお茶を啜っていた女神さん・・・。

 ・・・ん?


「って、女神さん!? いつの間に居たのさ!?」


「「「「り、リネーシャ様!?」」」」


 驚愕も露に突っ込んだ俺と、やはり気づいて居なかったらしいヤムラ家在住の女子諸君の、見事にハモった驚きの声が我が家のリビングに響いた。


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