表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鉄鋼車にて異世界へ  作者: 詩月凍馬
本格運営と樹の歪み?
47/57

幕間 寒さ対策を考えよう

まずは長期間に渡って執筆が中断してしまい、大変申し訳ありませんでした。

色々と理由はありますが、拙作を読んで頂いている読者様方を長い間待たせる形になってしまった事は偏に反省しきりです。

本当に申し訳ありませんでした。

「おぉぅ・・結構寒くなってきたなぁ」


 いつもの如くスマホから流れる音楽を目覚まし代わりにして目を覚ました訳だが・・。


 うん、マジでかなり冷える様になってきましたよ、ここの所は。

 まぁ、真冬の北海道みたいな氷点下当たり前ってな所よりは、何倍もマシではあるけどさ。


 とは言え、寒いもんはやっぱり寒い。


 でもって布団の誘惑がヤバい。

 俺とクー、二人分の体温で暖まった柔らかい布団は、気を抜いたら速攻で二度寝に叩き落としてくれるだけの破壊力があると思う。


 いや、まぁ、こっちの世界的にゃ俺って奴隷持ちの主人な訳で、雑事一切は奴隷に任せて部屋が暖まって食事が出来てから起き出すんでもおかしくはないんだけど、流石にそれは、ねぇ・・・。


 なんっつーか、落ち着かないっつーか申し訳ないっつーか・・・。

 クーを筆頭にルリィにイリアさん。

 揃って10代の女の子に寒い思いさせといて、自分は布団でぬくぬくとか罪悪感が半端ない。


 っつー訳で、暖かい布団の誘惑に気合を入れて抗って布団を抜け出せば、途端に体が一震え。

 温度計なんかないから詳しくはアレだけど・・・体感だと室温は一ケタ台っぽいな、こりゃ。


 そんな事を思いつつ、気合一閃。

 寝巻を脱ぎ捨てジーパンに紺のタートルネック、更にはセーターの普段着に着替えてしまう。


 うぅ・・・、つってもやっぱ着たばっかじゃ思いっきり冷てぇわな、うん。

 ま、飯の準備なんかで動いてりゃその内温かくなるだろうと諦める。


「さぁて、顔洗ってまずは暖炉の火ぃ入れっかねぇ・・」


 我が家の中で暖炉が付いてるのはリビングだけだ。

 これは珍しい事でもなく、貴族やら余程の豪商なんかの豪邸でもない限り、個々人の私室やら寝室やらにまで暖炉が付いてるってのはまずないらしい。


 まぁ、薪だってタダって訳でもないしね。

 生活必需品だから商業ギルド既定の値段で一定してるし、安くはあるんだけど、だからってそう何部屋も何部屋も温めるのはちょっと、って訳だ。

 現代日本みたいにかろうが寒かろうが自室に籠ってエアコン入れればOKって訳にはいかないし、そもそもこっちの世界だと個人の個室ってものを持ってる人自体がそんなにいなくて、王侯貴族や豪商なんかの一部富裕層位なんだそうな。


 なんで、こっちの世界じゃ寒くなって来たら暖炉のあるリビングに集まって、家族団欒ってのが一般的な冬の日の過ごし方なのである。


 ん?

 魔法があるだろって?


 いやいや、バカ言っちゃいけない。


 幾ら魔法ありの世界って言ったって、全員が全員魔法使えるって訳でもないし、そもそも大概の一般人は持ってる魔力自体が少な過ぎて室内を長時間に渡って温めるなんて事出来る筈もない。

 あぁ、うん。

 何か俺の周り見てるとクーにイリアさん、更にはミギーさんと魔法使える人が多いんで、特に珍しいって認識持てないのは確かなんだけど、戦闘を始め何かしらに使えるレベルで魔法を使える人って少数派なんだそうです、はい。


 と、この世界の魔法事情は取り敢えず置いとくとして、これから更に寒くなるんだろうって事を考えると、ちょっとばかし本腰入れて寒さ対策しとくべきかなぁ・・・。

 そんな事を考えながら、まずは顔を洗うべく亜空間車庫への扉を開けた。




 で、クーとルリィが腕を振るった朝食を堪能して、この前女神さんが持ってきてくれたあの『世界樹の葉茶』で一服。

 うん、最近若干麻痺しつつあるけど、やっぱりこのお茶って色々ぶっ飛んでるよね。


『なくなったらまた持ってきますので、どんどん飲んじゃって下さいね。お茶っ葉はやっぱりお茶として飲んで貰うのが一番ですし』


 って女神さんの言葉も最もなんで、最近は普通に飲んでるけど・・・。

 最初の頃は根っからのセイリーム産まれのセイリーム育ちな俺以外のメンバーは、カップ一杯のお茶を飲むのにガッチガチに緊張してた、なんて経緯が。


 いや、気持ちは解らなくもないけどな?


 その弊害・・・うん、弊害だなありゃ。

 何しろ、外で飲むお茶が不味く感じるのは、確実に女神さんのお茶を日常的に飲んでる弊害だろう。


 あり得ない事ではあるんだが、例え王宮に招かれて最高級のお茶を最高の腕を持った人に煎れて貰ったとしても、不味い・・・とまでは行かなくてもそんなに美味しく感じられないんじゃなかろーかと若干心配な訳だ。


 ちなみに。

 商談の時なんかに出すお茶は、それなりに良い茶葉ではあっても市販の物です。

 女神さんを始めマナリアース神にアルマナリス神の宿った神木のお茶とか、ぶっちゃけ怖くてよその人には出せませんとも。

 いや、まぁ、それ以前に『世界樹の新芽使って作ったお茶っぱです』とか、言った所でまず信じてくれんとは思うけど、一応ね。


 取り敢えず、ノンビリお茶を飲みつつ今日の予定を思い出す。

 幸いって言って良いのか解らんけど、今日の所依頼はなかった筈である。

 なんで、自由に出来る時間を使って寒さ対策でも考える事にした。


 寒さ対策、もしくは暖房器具と言われて真っ先に思い浮かぶのは炬燵かな?

 アレは日本人にはある意味特別だよなぁ。

 何つーか・・・心の故郷、的な?

 就職してからはなかったけど、矢村の家に居た頃は暖かい炬燵に入って熱いお茶とミカンをお供に織絵とテレビ見てたっけ。


 あぁ、そうそう、部屋温めるのにストーブつけて、乗っけたヤカンがシュンシュン蒸気吐き出してるとか、こうして思い出すと何か懐かしかったり。


 っても、エアコンは勿論、ストーブも技術的に無理っぽいのは確かだな、うん。


 一応サラマンダーの血とか言う燃える水はあるらしいけど、だからって石油ストーブと同じ構造でOKとはとても思えんし、燃やして出る煙なんかが安全かどうかも解らんからね。


 炬燵の方は・・・魔導具的なやり方すれば作れるのかな?

 ヒーターに当たる部分を電子部品じゃなくて魔石使ったのに変えるとかすれば。

 あぁ、でもあれか。

 炬燵はそもそも畳があって、そこに座る座卓だからこそ・・・・って、椅子に座るタイプのもあったか、そう言えば。


 うん、取りあえずこっちは一応候補には残しとこう。


 魔導回路なんかに詳しいミギーさんに確認は必要だけど、もし作れるなら俺、クー、イリアさんと三人の魔力持ちが居る我が家では重宝してくれそうだ。


 後は・・・・火鉢はまぁ、安全面を考えるとちょっとなぁ。


 あれも結局火を使う訳だし、寝室なんかに置くにはちょっと怖いわな、やっぱ。

 部屋自体がそこまで広い訳でもないし、もし間違ってベッドから落ちた布団が火鉢に・・・とか考えたくもないし、家にはコニィって小さい子供もいるしその辺りも踏まえてちょっと危険だな。


 確り目が覚めてる時はまだしも、夜起きて寝惚け眼のまま火鉢に蹴躓く、とか有り得ない話じゃないからね。


 まぁ、だったら寝る前に回収すればとも思うけど、そもそもそこまでして自室に籠る理由もないからなぁ。

 朝起きて着替えるのが寒いってのはあるけど、その為だけに火鉢を置こうって気には流石にならんし。


 となると・・・


 と、そこであるものを思いついた俺は早速とばかりに準備をすると、オルガ村に向かう事にした。

 そして村に着いた俺は真っ直ぐにオッサンの家に。


「って訳で、助けてドワえもん~」


「いや、どう言う訳だ? っつか、ドワえもんってなぁ何なんだオイ」


 ・・・・・・・・。

 うむ、何かテンション壊れたな、俺。

 つか、地球なら兎も角こっちでこのネタ通じる筈ないわ、うん。

 うん、落ち着いた。

 落ち着いたからさ、クー?

 その何だか妙に優しげな目で見るのやめてくれないかな?

 如何にも『あぁ、お疲れになっているんですね・・』って言いたげな視線が、胸に痛いのです。

 ザックリと俺のハートに突き刺さるんです。

 だから、ね?

 そんな俺にクーは柔らかくほほ笑むと


「イツキ様、今日の夕食は私とルリィで大丈夫ですから。ゆっくり休んで下

さい」


 ばっさりと、悪意の欠片もない純然たる善意を込めた、トドメの言葉を放ってくれた。

 うん、テンションおかしかった俺が悪いけど、何かスゲー効いた。


 もうテンションの赴くままにノるのは止めよう。

 内心でそう決意しつつ、何だかこっちも可哀想な者でも見てるよーな視線を向けてくるオッサンを殴りたくなる衝動を抑えつつ、説明を開始した。



 

「ふむふむ、作り自体はえれぇ簡単なんだな」


 俺が手書きした資料を眺めつつ、長い顎鬚を扱くオッサンに頷きつつ、説明を継続。


「まぁ、そりゃね。様は中に入れたお湯が零れなきゃ良い訳だし。だから注ぎ口の所は確りと密封出来る様にしなきゃダメだね」


 説明しているのはそう、湯たんぽである。

 古くから伝わる伝統の逸品だけど、意外と使い道は広い。

 定番の布団の中に入れてって使い方以外にも、6~8畳位の部屋なら湯たんぽの暖かさで1、2度は上げられるって書いてあったのには驚いた。


 まぁ、部屋暖房としては使わないにしろ、寝る時に冷たい布団に滑り込む事を考えると、湯たんぽは十分役に立ってくれるだろう。

 あのじんわりとした温かさは良い物だ。


 と言うか、俺は体質的なものなのか、電気毛布が合わなくて地球に居た時から冬場は湯たんぽを愛用していたんだよ。


 何て言うのかな。

 最初は良いんだ、電気毛布も。


 だけど最弱にしててもその内熱く感じてるのか、もの凄い寝汗を掻いてその冷たさで目が覚めるって事が何度もあったんで、その内に使わなくなったんだ。

 寝る前だけつけといて消しちゃえば良いんじゃ・・とも思ったんだけど、それだったらそれこそ湯たんぽでも十分だし、何故か湯たんぽだと入れっぱなしで寝てもグッスリ眠れるから不思議だ。


 まぁ、詳しい理由は解らないけど、経済的で良いやって事で追及は諦めた。

 理由はどうあれ、グッスリ寝れるんならそれで良いし。


 それに湯たんぽならそこまで危なくはないしね。

 まぁ、熱湯煎れるとかすればアレだけど、お風呂位の温度のお湯でも十分に暖は取れる。


 体のあまり強くないコニィの事を考えると、布団の中を温かく保つだけでも結構変わってくると思うし。


 そんな訳で構造を説明して。オッサンに製作を依頼。

 売り出せば売れそうではあるけど、取りあえずそこらはネリンさんやイリアさんとも相談した方が良いだろう。


 どの道実際に使って見てから、の話なんで商品化云々はオッサンに少し待って貰うしかない。

 その代わり、オッサンとミギーさんの使う分は作って貰って良いって事にしといた。

 使用者のサンプルが多い程、良い意見が聞けそうだし。




 そして、二日後。

 完成した湯たんぽを引き取って来た俺は、ヤムラ家メンバーに使い方を説明していた。


「ほぅほぅ、お湯を入れて使うんですか」


 薄い金属で出来た楕円形の入れ物をしげしげと眺めつつ言うネリンさんに、俺は一つ頷く。


「そう。で、口を確りと閉めたらこの厚手の布袋に入れて、布団の足元に置いとくんだ」


 そう言って同じく用意した厚手の布袋――二枚の布で綿を挟んで縫い合わせたもので作った袋をテーブルの上に置く。


「成程・・・。ですがイツキ様? それではすぐに冷めてしまうのではありませんか?」


 そう聞いて来るのはイリアさん。

 まぁ、当然の疑問ではあるかな? 

 お湯が冷めるのは当たり前の事だし。


「いや、そうでもないんだ。この袋もあるし、何より布団が掛かってるからね。朝方になっても少しは暖かいって位に冷めるのが遅いんだよ。実際、昔は寝る時に使った湯たんぽのお湯で顔を洗ったって聞くしね」


 このセイリーム世界もそうだけど、電気やガスが普及されるまでの日本じゃお湯だって手軽に沸かせるかって言うと、そうでもなかった訳で。

 井戸で水をくみ上げる事から始まって、薪に火を点けて・・・と結構な手間が掛かる。

 一々顔洗う程度でお湯を沸かそうってのは面倒だろう。


 その点、湯たんぽに使ったお湯を使えば、ほんのりと温かい程度の温度はあるんで寒い日でも顔を洗うのは苦にならない、と。

 まぁ、生活の知恵って奴だ。

 一晩湯たんぽの中に入れといたお湯は、流石に飲むには問題ありだけど顔やら手やらを洗うには問題ないし、洗濯機も無かった時代じゃ洗濯なんかにも使ってたみたいだし、それだけ冬場にお湯が使えるってのは有難い事だったんだろう。


 と、そんな話をして保温性を教えた後、実際に使って貰って意見を聞かせてくれと頼んでおく。

 上手く行けば、ホットパンツやハンガーの時みたいに良い資金源になってくれると思うからね。


 ミギーさんに頼んで炬燵様の魔法回路もやって貰ってるし、俺がセイリームに来て最初の冬。

 家の中は出来るだけ暖かく、過ごしやすくして乗り切りたいものである。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 俺が樹の立場なら地球から薪ストーブとステンレス製の 煙突を多目に持って行くよ?暖炉って熱効率が悪いよ? 鋳物の薪ストーブ5台くらいと ホンマ製作所のステンレスの時計型ストーブを 10台くらい…
[一言] 樹の場合クーリアという人間湯たんぽが居るし ユニー姉妹も2たりで寝れば良いが イリアにネリンはさぞ寒かろう? 樹のベットをキングサイズにして4人で寝れば 問題ないが、夏場は地獄だな! 孤児院…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ