接触
米花町毛利探偵事務所
「やっと着いた。」
本山はようやく、窓に白い文字で毛利探偵事務所と書かれている建物を見つけた。
津島と分かれ、TTR東陽線に乗り、その後数回の乗換えを経て、最終的に第三セクターのTR東都環状線米花駅に降り立ったころには、既に四時を回っていた。その後、問題の駅前のドラッグに行き、取り敢えず薬の処分と、自分が来た事は他言無用と言い渡し、そして最も重要な用件、薬を買った人物に付いて聞いてきた。
「まさか探偵の娘さんとはなあ。」
彼自身、買った人物がかの有名な名探偵、毛利小五郎の娘である毛利蘭であると聞いた時、正直耳を疑った。
「ま、そういう有名な人物だから店員さんも覚えていたんだろうけど。」
自分の相手をした眼鏡を掛けた若い女性店員は、笑いながら「彼女は空手の都大会の優勝者で、新聞に顔が載ったぐらい有名ですよ。」と言った時の光景が未だに目に浮かぶ。
「都大会の優勝者で探偵の娘か。…・・一体どうなるやら、とにかく会わなきゃな。」
彼は追っ手がいないか周囲を確認しながら、事務所への階段を上り始めた。
「さあ、鬼が出るか蛇が出るか…。」
そんなことを呟きつつ、事務所に着いた。そして、呼び鈴を押す。しかし、反応がない。2回3回と繰り返すが、それでも反応はない。
「留守かな?」
彼があきらめかけた時。
「はあい。」
子供の声が上からした。彼が首を曲げると、上の階のおどり場に、7,8歳ぐらいの少年と少女が立っていた。(コナンと幼児化した蘭です。)
「小五郎おじさんに依頼ですか?」
コナンが階段を下りながら言った。
「いや、そういうわけじゃないよボウヤ。用があるのはその娘さんの蘭さんという人だよ。」
蘭と言った時、コナンの目に警戒の色が現れたのを、本山は見逃さなかった。
「へえ、蘭姉ちゃんに。一体何の用があるの?」
「いやね、そのなんと言うか、あ紹介が遅れたね。私はヤタガラス製薬主任の本山と言う者だ。」
そう彼が言った途端、コナンの表情はさらに険しくなり、加えて後にいる蘭も驚いている。
「ふうん。そうなんだ。ヤタガラス製薬の人か。けどおじさん、何か他に隠してない?」
低い声でそういいながら、コナンは時計型麻酔銃の照準器を開き、狙いを本山に付ける。
一方の本山は、そのコナンの動きに冷静に対応しつつ、心の中でこう思っていた。
(こいつ。ただの小学生じゃないな。)
「ほう、おもしろい物を持っているじゃないか、しかしそういう君こそ、何か隠してないかね?」
本山がそう返すと、コナンの眉が少し動いた。しかし、彼も努めて冷静さを保っていた。しばらく、二人のにらみ合いが続いた。
「安心しろ、私は毛利探偵や蘭さんを傷つけ様なんて思っちゃいないし、それどころか助
けを求めたいところだよ。」
沈黙を破って本山がまずそう言った。
「「え!?」」
蘭とコナンが同時に驚いた。しかし、コナンは直ぐに先程の表情に戻る。
「そんなこと、簡単に信じれねえな。」
「そうかわかった。そこまで言うならこれは君が預かっておくといい。」
そう言って、本山は懐の拳銃をコナンに差し出した。
「本物だ。」
コナンが受けとって呟いた。
「これでも駄目かな?」
本山が笑いながら言うと、さすがにコナンは警戒を緩めた。表情と喋り方から、彼の言った事を信じる気になったようだ。
「分かった。とりあえずあんたを信じよう。」
「ありがとう。さあ、とにかく毛利探偵と蘭さんに会わせてくれ。」
「おっちゃんは今気絶していて無理だよ。そして、蘭ならあんたの目の前にいるよ。」
本山はコナンの言葉にギョッとした。コナン以外で目の前にいるのは、どうみても小学校低学年の少女だけである。
「え、ま、まさか君が毛利蘭さん?」
幼児化した蘭を指差しながら本山は言った。蘭はそれに対し、こくっと頷いた。
「なんてこったい、まさかAPTXの幼児化の効能は事実だったのか?」
APTXという単語に、コナンは強く反応した。
「なに、じゃああんたはやっぱり黒の組織の?」
「何だって!!何故そのことを…」
本山がそこまで言った時、蘭が会話に入りこんだ。
「あのう、二人とも。」
「「え!!」」
「取り敢えず、上に上がって、ゆっくり話しませんか?」
二人はその言葉で、ようやくここが階段の踊り場であったのを思い出した。
「なるほどね、工藤君はジン達に飲まされて、そして蘭さんはやはりあの風邪薬と間違えてAPTXを飲んでしまったのか。いや申し訳ないことをした。しかし、まさか大阪の方の被害者は君達の友人とは、世間は意外と狭いね。」
本山が苦笑いしながら言った。
「そしてあんたはその失敗で組織に殺されるのを恐れて脱走したというわけか。」
コナン、いや新一が言った。
ここは毛利探偵事務所の上にある毛利家。そこの居間で3人は話しをしていた。ちなみに、なぜ事務所ではないのかというと、実を言うと小五郎は蘭が幼児化して失神したさい、同時に頭を強か打ってしまって今だに起きない。新一は彼を事務所のソファーになんとか寝かせた。そしてソファーは今だ小五郎が占拠して使えないのでここで話しているのだ。
「まあそう言う事だ。しかし、今の所4人とも幼児化したものの死ななくてほっとしているよ。あの薬の被害者は多いからね。」
「「けど死ぬ程苦しかったです。」」
新一と蘭がそろって精一杯の皮肉を込めて言った。
「ごめん。」
「あ、そんな気にしないで下さい。一応死ななかったわけですし。それよりも本山さんはこれからどうするんですか?」
蘭が言い、それに対し本山が渋い表情をする。
「それなんだよ蘭さん。私としては一刻も早く君達に解毒剤を作りたいのだがね。」
その言葉に、新一と蘭は不安そうにする。
「だめなんですか?」
蘭が聞いた。
「いやそう言うわけじゃないんだ。解毒剤自体の作り方は判るんだ。ただ成分の分析と材料の調達が必要で…・」
本山がそこまで言った時、新一が言った。
「え!!解毒剤の成分がわかるんですか?」
「ああ、薬のデータとそれを見るのに必要なパソコンは会社(組織)から持ち出してきたから。」
そう言って、パソコンが入ったケースを見せる。
「やったああ!!」
新一が叫んだ。
「?」
「?」
その姿を怪訝な表情で見る本山と蘭。
「新一、なんでそんなに喜ぶのよ?」
「これが喜ばずにいられるかって。蘭、俺達は直ぐ戻れるぜ。そのデータを灰原に見せれば直ぐに解毒剤を作ってくれるぜ!」
新一の灰原という言葉に、本山は気になった。
「その灰原って言うのは誰だい?」
「あんたと同じで組織から逃げてきた女だよ。コードネームはシェリー。」
新一の言葉に、今度は本山が叫んだ。
「何と!宮野君は生きていたのか。そりゃあ良かった。彼女も両親やお姉さんと同じ様に殺されたんじゃないかと研究所の全員が気にしていたが。」
「え!?哀ちゃんのご両親って殺されたの?」
蘭が新一に聞いた。(この時点で蘭は新一からひととおり事情を聞いています。)
「いや、俺もあいつからは事故としか。」
新一も初耳であった。
「まあその話しはまた後で改めて言うよ。けど解毒剤は良いとしても、まだ問題はあるよ。私は追われていること、そして江古田で売れたもう一つの薬…」
本山がそこまで言った時、下の階から呼び鈴の音と、子供声が聞こえた。
「おーい、工藤、来たで。それとお客はん連れて来たで。」
平次の声だ。
「あ、平次君達着いたみたいだね、新一。」
「ああ、けどお客さんって何だ?」
二人は直ぐに下の階に下りる。本山も二人に着いていった。
3人が下まで行くと、そこには幼児化した平次と和葉、そしてもう一組の少年と少女がいた。しかも、新一と蘭そっくりの。
「新一が二人!!」
「快斗が二人!!」
蘭と青子が同時に叫んだ。
一方、この光景を見て、本山はこう呟いた。
「こりゃあまたややこしくなりそうだ。」
こうして役者は揃った。
おまけの用語解説
TTR 踊る大捜査線のスピンオフ作品、交渉人真下正義に登場する地下鉄会社。正式名は東京トランスポーテーションレールウエイ。実在する東京メトロと同じく、公団から民営化されたとされている。ちなみにTRはコナンに登場する鉄道会社東都環状線などを運行してる。この作中の同社が第三セクターというのは独自の設定です。
駅前のドラッグ コナンアニメオリジナルの危険なレシピに登場した店の事。眼鏡を掛けた女性店員も同作で探偵団の聞き込みを受けたキャラである。 |