最後の戦い 解決編
「何だって?あの少年が自分に全部任せろと?」
新一の言葉を聞いた田中警部が声を荒げる。
「そういうことです。」
佐藤警部がさらりと言う。
「無茶だ!あんな歳の子にやらせるなんて。警視庁が認めているか知らないが、そんなこと許可できない。」
田中警部が激昂する。それに対し、爆処隊長はだまったままだった。そして、おもむろにマイクに向かって言った。
「坊や・・・・君にまかせる。」
「隊長!」
田中警部が信じられないというような表情をする。
「どうせ俺が指示した所で同じなんだ。だったらあの少年と少女に賭けてみたい。」
「し、しかし・・・」
なおも彼は食い下がろうとするが。
「警部。一応俺の方が上官だ。俺の命令に従ってもらう。<隊長の階級は警視です。>」
上官権限を出されてしまっては、田中警部は黙るしかなかった。
「大丈夫さ、彼はいい目をしていた。あらゆる困難を乗り越えるような目だ。きっとやってくれるさ。」
「そうです、あの子達ならきっとやってくれます。」
新一達の正体を知っている佐藤刑事も賛成した。こうして、彼らは全てを一人、いや二人の少年と少女の手にゆだねた。
「新一、本当にやるの?」
蘭が不安な表情で聞く。
「ああ。」
「けど、もし失敗したら、私達・・・・」
蘭はその先のことを言えなかった。もっとも、新一は彼女が何を言おうとしたのかちゃんと分かっていた。
「大丈夫さ、失敗しなきゃいいんだ。・・・・なあ蘭。5月の米花シティビルでのこと覚えてるか?」
「ええ。」
「あの時俺は言っただろ、死ぬ時は一緒だって。もし解体に失敗しても、蘭と一緒なら俺に悔いは・・・」
そこまで言った時、蘭が新一に抱きついた。
「ら、蘭!?」
「お願い・・・・・そんな事言わないで。私達は助かるよ。だって、新一は迷宮無しの名探偵で・・・」
最後の方は言葉になっていなかった。どうやら、彼女が泣いてしまったらしい。さすがに、新一も己の言葉の過ちを感じずには要られなかった。
「ごめん蘭。そうだよな、俺たちは絶対成功させるんだ。それに、俺にはやらなきゃいけないことがあるし。」
「やらなきゃいけないこと?」
「お前を待たせた事と今回の事件に巻き込んだ事への償い。今回の事件を片付けたら思いっきりサービスしてやるからな。」
「ありがとう、新一。」
そして再び蘭は新一に抱きついた。
しかし、そんな良い雰囲気をぶち壊すように、無線が入る。
「おい、君達。大変良い雰囲気な所申し訳ないけど、会話が垂れ流し状態だよ。」
隊長の声だ。
「「え!!!」」
どうやら無線の送信がそのままになっていたようだ。
真っ赤になる二人。
「いやー、若いって良いですな警視。」
「そうだね警部。」
「熱いわね、二人とも。」
最後の言葉は佐藤刑事だ。二人はさらに顔が赤くなるのを感じた。
一気に場の緊張が解けた。
「ま、お熱いのは構わないが、坊やもう本当に時間がないぞ。」
「わかってます。切る方は決めました。」
「よし、後は頼んだぞ。」
新一は工具をコードに近づける。成功を誰もが祈った。蘭が両手を合わせ、目をつぶった。 その場を再び緊張が支配する。
「切ります!」
そして彼はコードを切る。切ったのは、あの時と同じ。青のコードであった。臨界は起こらなかった。沈黙のみがその場を包んでいた。
「坊や!大丈夫か?」
無線から隊長の声が入り、新一はハッとする。
「あ、切りました。」
「異常はないか?起爆装置は止まったか?」
その言葉に、新一と蘭は起爆装置を覗き込む。ディスプレイの数字は・・・・・・・・止まっていた。解体成功だ。
「や、やった。成功です。解体は成功です。」
こみ上げてくる嬉しさを押さえ、新一は無線機に向かって言った。
「本当か?間違えじゃないのか?」
隊長が念を押す。
「間違えじゃありません。成功です。」
そして、無線機の向こうから佐藤刑事達の歓声が聞こえてきた。
「ようし、よくやったぞ坊や。後は俺にまかせろ。」
そして隊長は無線機の周波数を調整する。解体は無地終わったとはいえ、まだやる事がある自衛隊の攻撃を止めさせねばならない。
「こちら帝丹高校臨時指揮所。爆弾解体は成功した。繰り返す、解体は成功した。よって、直ちに攻撃を中止してください。」
この解体成功はかなりあやうい物であった。既に海空両自衛隊は攻撃に入ろうとしていたからだ。
「こちら隊長機。これより爆撃進路に入る。全機投弾用意。」
F15を長機とする編隊は、今まさに帝丹高校への爆撃を行わんとしていた。そこへ、緊急無線が入った。
「こちら百里基地司令部。攻撃隊は直ちに攻撃を中止せよ。繰り返す。直ちに攻撃を中止し帰投せよ。」
帰還命令である。
「了解。全機へ、攻撃は中止。帰投する。」
「「「了解!!」」」
攻撃隊は一斉に翼を翻した。
同じ頃、東京湾上の護衛艦にも攻撃中止命令が届いていた。
「艦長、護衛艦隊司令部より作戦中止命令です。」
「回頭180度。横須賀への帰投進路につく。」
「宜候!」
こうして、自衛隊の攻撃は中止された。
解体成功を聞いて、避難していた警察や自衛隊が次々と帝丹高校へ戻ってきた。起爆は止めたとはいえ、爆弾自身は未だ残っているから、彼らはその撤去作業にかかるのだ。もっとも、新一達にはもはや関係ないが。
「おめでとう工藤君、蘭さん。あなた達は英雄よ。」
校舎から出てきた二人に、佐藤刑事が笑顔で出迎えた。
「「ありがとうございます。」」
「さ、車に乗って。私がみんなの所へ送るわ。」
二人は佐藤刑事の車に乗り込んだ。
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