米花港にて 後編
(主砲戦だと!!)
艦長の言葉に、菊池のみならず、その場にいた全員が口には出さなかったが驚いた。通常主砲は艦艇、対空、対地目標に使うものであって、しかもそれらとの距離は普通1000m以上離して使う。それを対人相手に使おうと言う艦長の意図が全く読めなかった。
「砲弾は礼砲用の空砲を使用!!」
「え!!」
礼砲とは、外国の港などに入る時、挨拶として撃つ空砲のことである。
「まさか私が実弾を使用するとでも思ったか、砲雷長。」
菊池は梅津の意図を悟った。
「急げ砲雷長、時間がないぞ!!」
その言葉に、菊池はハッとした。
「アイサー!!(了解)主砲戦用意!!目標左舷90度、仰角零度。砲弾は空砲を装填せよ!!」
「アイサー!!」
菊池の命令に砲塔担当の乗員が復唱した。そして、直に前甲板の127mm主砲が左に旋回した。ちなみに現代の砲は、中は無人でCICと呼ばれる管制室から操作される。
「撃ち方用意よろし!」
「撃ち方、始め!!」
「撃ち方始め!!」
一方、埠頭では。
「ふふふ、ついにベルモットを追い詰めたぞ。」
組織の刺客のリーダーは笑いながらそう言った。
「では、殺りますか?」
部下の1人がそう言ったが、リーダーはそれを止めた。
「まあ待て。奴にはもう少し恐怖を味わってもらおう。人間って言うのは死ぬまでの間が一番怖いらしいからな。」
その時であった。
ドーン!!
沖合いで盛大な爆音が轟き、閃光がほとばしった。
「何だ?!」
「た、隊長。軍艦です。ヤポンスキーの軍艦です。」
部下がそう言ってる間も、みらいからの砲撃が断続的に続く。
「どうします?」
「うーん。撃っているのは空砲のようだが、これ見よがしにこっちに砲身を向けているってことは既にこっちに気づいているな。仕方ない、予定変更だ。とっととベルモットを殺してずらがるぜ。」
と、リーダーはそう決めたが遅かった。いきなり彼らをまぶしい光が照らした。
「何!!」
「何だあれは!?」
そこにいたのは、みらい艦載機の海鳥であった。この機体。主翼の向きを変えられる可変翼機で、ヘリコプターにもなるし飛行機にもなるという優れた性能を持っていた。ちなみに、まだほとんど普及していないから、彼らが驚くのも無理はない。
「ただちに武器を下ろし投降せよ!」
海鳥から日本語、英語、ロシア語、中国語等で同様の警告がなされる。
「撃て!!拳銃でも当たりどころによっちゃ撃墜できる。撃て、撃て!!」
何を思ったか、彼らは拳銃で攻撃を始めた。
一方、撃たれた海鳥では。
「こちら海鳥。攻撃を受けました。反撃の許可をお願いします。」
機長の佐竹一尉がみらいCICと連絡をとっていた。
「みらいCICより海鳥へ、反撃は許可するが、相手は絶対傷つけるな。」
梅津からの返答が入る。
「反撃は許可するが人命は尊重せよですか。」
前席の射撃手である森三尉がため息交じりで言う。
「仕方ないだろ、自衛隊は軍隊じゃないんだからな。それよりも、反撃するぞ、20mmバルカン砲視認照準装置接続。」
「アイサー、接続。目標はどうしますか?」
「そうだな、赤外線で確認する限り車には誰も乗ってないようだから、車を狙え。」
「アイサー。」
森三尉は照準を車に合わせる。
「照準完了。」
「ファイヤー!!」
「ファイヤー!!」
森三尉が引き金を引く。それとともに、機体下部に取り付けられた20mmバルカン砲から砲弾が発射され、寸分の狂いなく命中した。そして、車は大爆発を起こした。
「しまった。燃料タンクに当たったな。」
一瞬、佐竹一尉に不安が走ったが、直ぐに4人の姿が確認できた。
「ふう。良かった。」
「佐竹一尉。陸戦隊が上陸します。」
「おう、俺たちの仕事はここまでだな。」
佐竹一尉はそう言うと、眼下に向けて敬礼した。
一方、撃たれた4人は。
「本当に撃ちやがった。やむえん。ベルモットは後回しだ。ここは一端撤収。」
と、撤収に掛かろうとしたが。
「た、大変です。自衛隊がこっちに来ます。」
見ると、20人ほどの銃を持った男達が走ってくる。
「ち、畜生。ヤポンスキーマーカーキーめ。逃げろ!!」
4人は逃走に入った。
「尾栗、お前達は逃走した連中を追え。俺は女のほうの武装解除に向かう。いいか、銃は使うなよ。」
「分かってるぜ洋介。」
みらい副長兼陸戦隊隊長の角松は、ベルモットの方へ向かった。
ベルモットは、倒れながらもまだ拳銃を握っていた。角松は、そんな彼女に小銃を向けながら英語で言った。
「it`s over down your weapon(勝負はついた。武器を下ろせ。)」
ベルモットはそれに対し笑みを浮かべた。
「OK」
そして、拳銃を投げ捨てた。
「こちら角松。女性の武装解除を確認。」
角松がみらいへ向かって報告する。そしえ、この直後に、尾栗からの全員確保の連絡が入った。
コナンと、合流した快斗がパトカーに乗って到着したのはその40分後のことだった。既に、ベルモット達は連行された後だった。
「あーあ、なんか良い所自衛隊に取られたような気がする。」
新一が愚痴をたれた。それを、快斗がなだめた。
「まあ新一、なんであれ連中は捕まったんだし。」
「ああ、日本支部には随分と資料が残ってたらしいし。多分どんどん芋づる式に捕まっていくことになると思うぜ。」
「そうだな。けど、俺の戦いはまだ終わらないぜ。パンドラが見つかるまでな。」
そう快斗が言った時だった。
「ほーう、君達パンドラを知っているのか。」
「「!!」」
振り返ると、自衛官が立っていた。
「え、おじさんパンドラを知ってるの?」
新一がコナンモードで言った。
「ああ、知ってるどころか、見たからな。なんせ、俺たちの船にあるから。」
その言葉に、快斗の口はしばらく閉まらなかった。
「おい、尾栗。子供相手だからって防衛機密を言うんじゃない!」
後ろから角松が注意した。
「ああ、って何で子供がここに!!」
やっと気づいた。
「警視庁の方の話じゃ今回の事件解決に深く貢献したそうだ。さ、俺たちは行くぞ。」
そして、二人は行ってしまった。ちなみにこの数ヵ月後、防衛庁の研究施設にキッドが潜り込み、まんまとパンドラを盗み出すことになる。ちなみに、防衛庁はその秘密がなぜ漏れたか調査したが、その時にはみらいがミッドウエイ沖で行方不明となっていたため、結局真実をつかむ事は出来なかった。
新一達はこの後帰って恋人達から大目玉を食らうこととなった。しかし、事件が終わった安堵感から、皆の表情は明るかった。全員が喜んだ。しかし、事件は終わってなかった。
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