米花港にて 前編
警視庁での戦いは終わったが、まだ捕まっていない組織の構成員がいた。ベルモットである。そのベルモットは、ロシア支部から回されてきた刺客を引き付けるため、逃げていた。しかし、それももう限界だった。乗ってきた車の燃料がなくなっていた。既にタンクの針は0を指し、赤ランプがついている。
「ここまでね。」
数ヶ所あった警察の検問を強行突破しながら、とにかく組織の刺客をまこうとしたが、それももう無理であった。
車はいつのまにか米花町に入っていた。とにかく、車や人の少ない道を走った。そして、車は港の倉庫街を抜け、埠頭に出たところで力尽きた。
ベルモットの車が止まると、組織の刺客たちの車は、少し距離を置いて止まった。
ベルモットは慎重に車の外に出た。その途端、相手も外に出て撃ってきた。ベルモットは車を楯によけようとしたが、後ろにあったコンテナに当たった跳弾がひざに当たってしまった。もちろん、それで無事なはずがない。彼女はその場に倒れこんだ。
「まいったわね。」
と強気で言ってみるが、もはや状況は絶体絶命である。もし、相手がこっちにやってこればもう逃げ場はないからだ。
護衛艦みらいCIC(戦闘指揮所)
さて、そんな光景を沖合いから見ていた人たちがいた。東京湾警備のために出動していた海上自衛隊護衛艦みらいである。
「艦長、左舷側の埠頭、距離500にて銃撃戦を確認!!」
見張りを行っていた乗員から緊急の連絡が入る。
「何!!」
艦長の梅津が驚きの声を上げた。
「艦長、もしかしたら自衛艦隊司令部から連絡のあった。」
「いや、まだわからん。もっと詳細に報告せよ。」
砲雷長の菊池をさえぎり、梅津は情報を求めた。
「埠頭にいるのは5人。男4人の女1人。このうち4人組が女を追い詰めているようです。それと、本艦には気づいていない模様。」
「通信室、ただちに警視庁と陸上自衛隊に現状報告せよ。」
新たに入ってくる情報に、梅津は冷静に対応する。
「それと、海鳥を呼び戻せ。あと、陸戦隊は乗艇準備。」
梅津は万が一に備えた。しかし、その備えを実行する機会は直ぐに来た。
「警視庁より連絡。警視庁より米花町方面へ逃走したテロリスト1名あり。女性の模様。なお、それを追求した車両あり。」
「!!」
「決まりですね。」
菊池が静かに言った。
「陸戦隊は直ちに上陸せよ。内火艇降ろせ。それにしても、警視庁から随分早く情報が入ったな・・・・・ああ、たしか首相命令が出ていたか。」
この少し前、情報の流れを円滑にするため、自衛隊、海上保安庁、警察に対し特定周波数の無線使用命令が出ていた。
「海鳥、後5分で上空に到着。ならびに、陸戦隊発進します。」
現状が報告される。
「これで、大丈夫でしょうか?」
菊池が言う。それは梅津も同じであった。なにせ、初めての実戦なのだから。そこへ、また報告が入る。
「艦長、急いでください。今にも銃撃戦が起きそうです!」
「海鳥の到着は?」
「後4分。」
(とても間に合わない。それなら。)
「主砲戦用意!目標左舷90度、仰角零度!」
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