√ いくつ?
中学校。
三年生教室。
休み時間。
同級生、二人の男の子の会話。
「平方根、分かるよな?」
「√(ルート)だろ。分かるよ」
「√2の値を小数点第七位まで言ってみな」
「√2は、一夜一夜に人見ごろだから、1.4142135」
「お~っ、出来るじゃないか」
「分かるよ、これぐらい」
「じゃあ、√3は?」
「人並みにおごれや、だから、1.7320508」
「いいね。じゃあ√5」
「富士山麓オウム鳴く、で、2.2360679」
「よし!じゃあ、√9は?」
「……√9って、……3だろ?」
「うんっ、引っかからないね」
「当然だよ」
「じゃあ、√8は?」
「√8は……覚えていないけど、……たしか、2.828ー。うん~」
「分かんない?」
「うん~降参。分かるのか?」
「√8は、2√2!」
「えっ! あっ、そうか! そうだ、引っかかった! ……でも、小数点第七位まで答えろと言わなかったか?」
「次。√7」
「おい!」
「√7を答えよ」
「なんだよ。え~√7? たしか、菜に虫イナゴだから、2.64175だけど、小数点第七位までとなると分からないな」
「分からない?」
「うん、だめだ。分かるのか?」
「……わか……るよ」
「答えてみてよ」
「……グレンダイザーの基地の秘密の発進口の一つ」
「なに!? なに言ってんだよ! グレンダイザーって、なんだ?」
「知らないの? マジンガーZの後番組のグレートマジンガーの後番組」
「知るか! いつの話しだよ! バカにしてんのか!?」
「1970年代に流行ったテレビアニメだよ。親父がよく、”あれは格好良かったぞ。ルート・セブン!”って話すんだよ」
「見たことあんのか?」
「……ない」
「……あのな、それが言いたくてルートの話し持ちかけたわけ?」
「いや。そういうわけじゃ……。なりゆきで」
「おれたち受験なんだからまじめにやろうぜ」
「分かってるけどさ。受験、受験って、もう疲れちゃってさ」
「まあな」
教室に、休み時間の終了を告げるチャイムの音が鳴り響く。
二人は、次の授業に向かって前を向いた。
公立入試試験まで、もうすぐだ。
ところで、√6は?




