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冒険者ランク決定

現在、ギルド長室で受付嬢ことイルマ・シータさんが土下座している。理由は簡単だ。リッカが強制的に闘技会の武器部門に出場する事になったからだ。イルマさんは、受付嬢になったばかりの新人さんで、年齢18歳、顔にソバカスがある素朴な女性だ。


「本当にすいません。リッカちゃん、ごめんね。」

「別にいいよ。面白そうだもん。」


「イルマさん、頭を上げて下さい。あの場合は仕方ないですよ。あの場で、息子さんが魔導具に攻撃していたら大恥をかくところでしたよ。正直、助かったのはこっちです。」


「そう言って頂けると助かります。」


「リッカ、せっかく出場するんだがら、充分に楽しみなさい。ただし、相手を殺しちゃ駄目よ。」


「はーい!」


まあ、リッカだけの出場でよかった。私まで出場していたら目立つことこの上ない。


「そういえば、イルマさん、ギルド長はいないんですか?」


「ギルド長は、今王都にいます。あと3日程で帰ってくる予定です。ああ、帰ってきたら絶対怒られる。」


それは仕方ないわね。


「師匠、せっかくなんで、マルコ遺跡の事を聞いてはどうでしょうか?」


ああ、ギルド長室にいるんだし聞いておこう。


「イルマさん、私達の目的は、マルコ遺跡を探索する事なんですが、何か知っていますか?」


「マルコ遺跡ですか?あそこは厄介なAクラスダンジョンです。これまでの到達者は、10パーティーとなっています。厄介たる所以は、5階層ごとにダンジョンの形態が変化するんです。石、森、大地、ゾンビハウスなど、数多くの形態が存在します。」


石や森、大地はわかるけど、ゾンビハウスて何よ?


「ゾンビハウスて何ですか?」


「ゾンビハウスに行くことはお勧めしません。ゾンビハウスは、別名【冒険者の墓場】とも呼ばれていて、そこで死んだ者は未来永劫ダンジョンに囚われます。ですが、クリアした場合、莫大な報酬があります。現在、クリアしているのは、500年前の勇者パーティーだけです。残り、9パーティーは普通の階層ルートでクリアしています。」


うん、どういうこと?


「もう少し詳しく言って下さい。」


「あ、すいません。最初から言いますね。マルコ遺跡には、2つの攻略ルートがあります。1つ目がノーマルルート、5階層毎にフロアタイプや敵のタイプも異なってくるルートで40階層あります。2つ目がゾンビハウスルート、5のつく階層の最後に必ず立札が出現します。そこで、どちらの扉に進むか問われるんです。ゾンビハウスルートは、勇者様曰く、ショートカットルートらしいです。ただし、そこで死んだら、死体はゾンビとなって、未来永劫彷徨うことになりますし、ノーマルより遥かに困難なルートと聞きます。クリアした勇者様の伝記によると、クリア報酬としてレベル30アップと女神の指輪が進呈されたそうです。因みに女神の指輪は、全ての状態異常攻撃を無効化してくれる物です。。」


おいおい、なにその報酬。みんな群がるんじゃないの?あ、群がったから、冒険者の墓場か。


「なるほど、ゾンビハウスは途中抜ける事は出来るんですか?」


「出来ます。これまでに生き残った冒険者達の話を聞くと、必ず1ヶ所は敵が出てこない部屋があるそうなんです。そこには女神像が置いてあって、魔力を通すことで脱出出来るみたいです。ただし、脱出して再度ゾンビハウスに挑戦しても、スタート地点からだそうです。しかも、ゾンビハウスは、その時によってクリア内容が異なるそうです。」


それでも、みんな挑戦するんだ。報酬が大きいからか。私も挑戦しよう。あまり時間をかけたくないしね。


「ゾンビハウスのクリア内容はどんなものがあるんですか?」


「そうですね。クリアするためには、最低でも3つの任務を遂行しないといけません。私が知っているもので、

1)見た事もない大きな屋敷から脱出する。

2)地下道にいる怪物を退治しろ。

3)島から脱出しろ

とかですね。」


その階層の事、大体わかったわ。やっぱり、ここスフィアタリアのダンジョン、絶対私達の元いた世界を基準に作っているわね。ただ、あのゲームを基にしているのなら、建物自体は、貴族の屋敷と似ているはずだけど妙ね。


「なるほど、厄介なダンジョンなのはわかりました。フィンやイリスを鍛えるには丁度いいわね。ゾンビハウスに挑戦するかは、仲間と相談して決めたいと思います。私達のクラスはどうなりましたか?私はまだやっていないので、訓練場に戻ってやりましょうか?」


「決まりなので、お願いします。」



訓練場に戻ると、冒険者達はまだいた。やりずらいなー。



「それじゃあ、やりますね。」

「サーシャ様〜、頑張って〜。どうせなら壊しちゃえ!」


リッカは、馬鹿な事を言っている。そんな事したら、目立つわ!

ただ、衝撃は避けられそうにないので、遠距離用の板の方向は何もなかったはず、そこに全てを逃しますか。遠距離用の的の後ろにある壁は破壊するとまずいから強化しておこう。えーと、値は90000位にして、軽い感じでやればいいわね。よっと!


《ド〜〜〜〜〜〜〜〜ン、ブチ》

《ガン、ガン、ゴ〜〜〜〜〜〜、ドガ〜〜〜〜〜〜ン》


あれ〜?えらい事になってしまった。

近接戦用の的に当たった瞬間、固定された壁ごと破壊され、それが遠距離用の的に当たり、後ろの壁に激突した。


《シ〜〜〜〜〜〜〜ン》


周りを見渡すと、全員大きく目と口を開け破壊跡を凝視していた。


「あの、イルマさん、数値はどうなっていますか?」

「は!はい!え〜〜と、近接戦が95432、遠距離用が----87980となっています。」

「わかりました。あ、的とってきますね。」


遠距離用の後ろの壁まで行くと、近接戦・遠距離用の的があるにはあるけど、あちこち凹んでいたため、『物質変換』で治しておいた。壁はそのままにしておこう。みんなの所へ戻ると、


「お姉様、目立っちゃいましたね。」

「師匠、やり過ぎですよ。」


「仕方ないでしょ。ギルドが衝撃で全壊するかもしれないと思ったから、一方向だけに行くようにしたのよ。おかげで全壊しなかったじゃない。」


周りの冒険者がそれを聞くと、ゾ〜〜と顔色を悪くしていた。


「今回、リッカちゃんが出場するんだよな。俺、辞退しようかな。」

「俺も」


周りの冒険者達が、なんか色々と話し始めた。


「さて、受付まで戻りましょうか?」


受付まで戻ると、イルマさんとギルドの従業員全員と話し合いが始まったため、しばらく休憩となった。



「うーん、結局、凄く目立つ行動を取ってしまった。」

「師匠、リッカちゃんが闘技会に出場しちゃうと、間違いなく優勝しますよ。」


「あの貴族との事もあるから、絶対に出場しないとね。まあ、優勝しても、大した問題にならないでしょう。」


ただ、闘技会の前に、フィンとイリスに何らかの手段を取ってくる可能性もあるから注意ておこう。


「フィン、イリス、貴方達2人共、周りに注意しておきなさい。恐らく、あの貴族、リッカが本当に強いと気付いたら、必ず妨害手段を取ってくるわ。手っ取り早いのが、貴方達を誘拐する事だからね。私達を頼りにするだけじゃ駄目よ。リッカとジンも、もし2人に悪意を向けた人間が近づいて来た場合、公衆の面前で殺すのは不味いから再起不能にしておきなさい。容赦するな!」


「「はい!」」


「イリス、私達だけで何とか対処しよう。3人とも本気だよ。いくら何でも、襲ってくる人が気の毒すぎるよ。」


「はい、私達がマルコ遺跡で強くなって、対処出来るようにしましょう。」


うんうん、2人共わかっているわね。私が厳しい命令を出す事で、気を引き締める事になったわね。あ、イルマさんが戻って来た。


「お待たせしました。冒険者カードが出来ました。サーシャさん、ジンさん、リッカさんがSクラス、フィンさんとイリスさんがCクラスです。」


「ありがとうございます。すいません、こちらも御迷惑をかけてしまったみたいで。」


「いえ、構わないですよ。3人とも強いんですね。多分、ガルディア帝国でも有名なダンテ様より強いかもしれませんね。」


うん?どこかで聞いたような名ね。ジンが小声で教えてくれた。


「サーシャ様、おそらくリッチ様が斬った相手です。」


あ、あのお馬鹿野郎か。あれがガルディア帝国でかなり有名なんだ、なんだかなー。


「マルコ遺跡の情報、ありがとうございます。準備をしてから探索してみますね。」


「あ、リッカちゃんは3つある闘技会場の内、ゴールド闘技場に行って、登録をしてから闘技会の受付をしておいて下さいね。また、初登録の際、試験が行われますので、その時に初期の闘技ランクが決められます。」


「わかりました、ありがとうございます。」


冒険者ギルドを後にし、一旦、広場のベンチで休憩をとった。


「まずは、闘技ギルドで登録しましょう。今後の事もあるから、登録メンバーは私、ジン、リッカの3人ね。」


「師匠、私とイリスは駄目なんですか?」


「フィンが闘技場で戦ったら、正体がさすがにばれて騒がれる可能性がある。イリスは、まだ早い。それに、そろそろ邪族もフィンに気付いて、刺客を送ってくる可能性があるから、一般人に迷惑をかけるのを極力最小限にしたいわ。」


「おー、なるほど!」

「サーシャ様、早くゴールド闘技場に行って登録しよう!戦ってみたい!」

「私も、久々に身体を動かしたいですね。」


急かされてしまったため、一番近いゴールド闘技場に向かった。



○○○



ゴールド闘技場、屋根付きの円形の建物で中央にある直径20mの白いタイルで覆われている所が戦う場所、その周りが1階、2階と別れた観客席といったところか。冒険者の数が多いな。全員、これから戦うのだろうか?受付があったので、そこの女性に話しかけた。


「すいません、この3人の登録をしたいんですが。」

「そこの子供も参加するんですか?」

「はい、この子は闘技会にも参加します。」


「え!闘技会にですか!止めた方がいいですよ。」

「大丈夫です。私達3人、冒険者ギルドのランクは、Sクラスですから問題ありません。」


予想通り、周りが騒ぎ出した。


「Sクラス!この子も!嘘、信じられない。」


話が進まないからか、リッカが怒り出した。


「もう、早く登録してよ!私は身体を動かしたいの!誰かと戦いたいの!」


「あ、はい、わかりました。とりあえず、B クラスの選手と戦って下さい。その戦い方次第で、スタートランクを決めます。名前が呼ばれたら、中央の会場に入って下さい。ルールは簡単です。殺しは禁止!相手を場外に吹き飛ばすか、気絶させるか、降参させるかです。」


私達は自分達の名前を言い、観客席のところで順番を待った。すると、案の定、厳つい筋肉をまとった冒険者がリッカに絡んできた。


「おい、嬢ちゃん、Sクラスというのは嘘だろ。どうみても弱っちい子供にしか見えないぞ。俺の腹にパンチを入れてみろ。確認してやる。」


「お前、うるさい!」《ドン》


リッカの手は、冒険者の腹の奥までめり込んだ。


「うご、嘘、な、なんで」


当然、一撃で崩れ落ちた。


「サーシャ様、こいつ弱いよ。口だけだ。」

「ちゃんと手加減出来たわね。良い子ね、リッカ。」

「やった!褒められた!こいつ、邪魔だから移動しておきます。」


リッカは、冒険者を担ぎ上げ、壁の方に放り投げた。

周りの冒険者は、リッカの強さを認め一斉に離れていった。



「サーシャ様、宜しいのですか?」

「別にいいわ。どうせ、こうなると思ったからね。少しは静かになるでしょ。」


そして、まずはジンの名前が呼ばれた。

さて、ジンがどういった戦い方をするのか見せてもらいましょうか?



○○○



ビルブレムには、3つの闘技場があり、そこで多くの人達がランクを上げるため戦っている。これら闘技場をまとめ上げるのが闘技ギルドである。ギルドといっても、冒険者ギルドのように、1つの建物があるわけではない。各闘技場の中に、責任者のギルド長がいて、その人達の指令を基に皆動いている。そして、闘技場自体もランク分けされている。


ブロンズ闘技場 闘技ランクE, F

シルバー闘技場 闘技ランク C, D

ゴールド闘技場 闘技ランクS, A, B


サーシャ一行がいるのは、ゴールド闘技場。

ここでまた、一波乱起こる事を彼女は知る由もなかった。


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