空へと上がっていく紫煙。
そのまま冬特有の北風に乗り消えていく。
その様子を俺はただ見ていた。
午前の授業を終えた後のこの時間は絶好の喫煙時間。
珍しく屋上には誰の姿もなく俺は視線を気にする事無く煙草を味わう。
口に広がる苦味。
一体いつからなのだろうかこの苦味に快感を感じたのは。
未成年という普通ならばこの毒素を受け付けるはずがない体なのに、いつの間にかこの苦味を求めたんだ。
初めの一本は咳き込んで、次の二本目は涙が滲み、三本目には涙も咳も出ることはなく、ただ体中を駆け巡る毒素の感覚のみが俺を包み込んだ。
そして四本目から快感を得るようになったのだ。
不思議なものだ、いつからこんな子供離れした感覚を求めたくなったのか。
そもそも子供のはずの俺がなんで煙草に手を出したんだ。
まだ子供なのに…。
「……」
子供、だから。
『多串君、だから子供だって言われるんだよ』
子供、じゃない。
妙に苛立ちを感じ俺は紫煙を思いっきり吸い吐き出した。
しかし流石に吸いすぎたのか久々に咳き込んで涙を流した。
喉が痛い、口の中が乾く。
「…‥っ」
ムカつくんだアイツ。
大人振って、見せ付けて、大人の勲章のように俺達の前で煙草を梳かす。
確かにアイツのなかの俺達は子供で、まだまだ餓鬼で。
その証拠に俺達はアイツを慕ってる。
あぁ、否定できないアイツの言葉。
この俺の喫煙は少しばかりの反抗。
でも、でも。
その時屋上のドアが開く音がし俺のとは違う苦い香が鼻を擦る。
来たのか。
「…やっぱり、子供だよね多串君」
あぁ、解ってる。こんな反抗さえも子供じみてて。
結局反抗でも否定でもない。
「うるせぇよ‥」
この言動さえも。
「馬鹿教師」
子供なのだ。
あぁ、馬鹿らしい。
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