9話 天国と地獄(後編)
「あれ、また誰か死んだようなので、私行ってきます」
と、夜魔田が言った。
「はいはい、どうぞ」
神内はどうでも良いと言った感じで相槌を打った。
「魂を取りに行っている間、少しだけ高橋さん預かってくれませんか。もう、壊れているので暴れることはないと思いますので」
「はいはい、良いですよ」
「じゃあ、頼みます」
そう言って、夜魔田は回収に向かった。神内はまだぶつぶつ言っている高橋を見て、ため息をついた。
「余計な事をしてしまった」
心を砕かれた水崎は、神内の思い通りに人を殺したが、よりにもよって相手が高橋だった。
高橋が死んでも得をするのは夜魔田で神内に利益はない。
「どうせ殺すんなら、善人を殺してくださいよ」
待機場所、愚痴をこぼしながら神内は席を立つと、夜魔田に飲み干されたコップを持って、水をお代わりをしに行った。戻って来ると、ちょびちょびとコップに口をつけながら夜魔田の帰りを待つ。
しばらくしてから夜魔田が帰って来た。連れて来た魂を見て神内はうなだれた。
「神内さん……ついてないですねぇ」
夜魔田が遠慮がちに言った。連れて来られたのは水崎だった。水崎は高橋を殺した後、自分も舌を噛み切って死んだ。もう水崎は人を殺してしまっているので天国には行けない。そのため、回収が夜魔田の仕事になった。
水崎も高橋と同じように何かぶつぶつ言って、目は虚ろだった。
「すみませんね。私ばかり得をしているようで」
気まずい雰囲気を感じて夜魔田が謝ると、神内は首を横に振った。
「いいえ、私の要領が悪いだけですよ。それよりも早く二人を地獄まで連れて行ってあげて下さい。水崎さんにとっては苦痛を与えてくれる地獄は本望でしょう」
「ああ、そうですね。それでは、また」
二人の手を取って地獄に向かう夜魔田。二人共、手を引っ張られないと一人では歩けない状態だった。
それを見ながら神内はため息をついた。ため息ぐらいしかすることがない。
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