紅い空。(3/5)縦書き表示RDF


紅い空。
作:雷等玲也



第3話



 おい。冗談じゃねぇ。なんだったんだ。あの高さから美咲を抱えて飛び降りたのに足はなんとも無いし、何よりあの化け物だ。あの病院なら平気なんじゃなかったのか?結局倒せたからよかったものの…美咲の力も気になるが、美咲は気絶しちまって…大体今走ってる俺の速さは異常だ。こんなに人間が早く走れるものじゃない。高くジャンプできるし美咲の体重なんて全然気にならない。
 俺は頭が真っ白になりながらも、崩れかけた屋根の中に人が4,5人入れるスペースを見つけた。そこで少し休もう。美咲が目が覚めないとどうしようもないしな。

「ん…」
目が覚めると、周りは廃墟だった。崩れかけた屋根の隙間に私と隼人がいた。
「大丈夫か?美咲」
頭をよぎるのは私たちを襲ってきた“化け物”だった。そして市民達が叫んでいた言葉だった。『魔物がココまで!だれか!』魔物って、私達の事?それとも、襲ってきた“化け物”の事?
「大丈夫…」
 沈黙が場を支配した。恐ろしい“化け物”と戦って、今自分達はピンピンしている。市民達は“化け物”と言った。それはきっと自分達のことなのだ。あの“化け物”だって私達の事を“化け物人間”だと言っていたじゃないか。それに、あの謎の頭痛は何だったのだろうか。あの痛みが無くなってから力がみなぎってきた。ただ、未だに記憶は元に戻らない。自分達は今まで何をしてきて、これから何をするのか。それは2人にも分からないことだった。
「これからどうする?人が集まってきたから病院抜け出しちまったが…」
隼人は頭を掻きながら言った。
「どうするもなにも…またいつ魔物に襲われてもおかしくないよ?今から病院行ってもあそこももう安全じゃないし…」
 2人は頭を抱えた。外はもう暗くなり始めていた。

 2人はじっと廃墟にいた。雲は引き裂かれ星空が覗いていた。赤黒い、星空が。
「明日になったら、その辺を探索しよう。いつまでもココにいたって仕方がないし、何より身を守る物や食料を探さないと。」
隼人の考えに美咲はこくりと頷いた。寒い夜を2人は身を寄せ合って過ごした。

 2人はまだ日の上らないうちに目を覚ました。霧の濃い朝だった。2人は目を覚まし、視力のいい隼人がその辺を見渡していた。
「なんかあるぞ」
 隼人が指差したのはぼんやりとした光だった。
「もしかしたら街かもしれない!」
 2人はその光に向かって歩き出した。

 着いたのはあたりが明るくなってからだった。光は予想通り街だった。そこは予想以上に明るい雰囲気で、2人は驚いていた。温かみのある優しい光に抱かれながら、二人は街を歩いていた。
「いらっしゃい!」
 商店街に来ると、八百屋や肉屋が大声で客引きをしていた。
「隼人、お金持ってる?しばらくこの街にとどまらない?」
「残念だけど、金もってねぇよ。どうすっかなぁ」
 暫く歩いていると、洋服を売っているところを発見した。今の2人は病院からずっと同じ洋服を着ていて、普通なら外には着て行かない服装だった。何より寒い。
「お、カップルかい?その服、病院からきたのかい?遠かっただろう。なにより無事でよかった。おいで、洋服をあげよう」
 洋服を覗いていると店主と思われる男に声をかけられた。
「ありがたいんですが、お金、持ってないんです。」
美咲は申し訳無さそうに言った。実際、ショーウインドウに飾ってある洋服が欲しくてたまらなかった。
「金だぁ?そんなもん持っていたって意味がないだろう?さぁ寒いだろ。入った入った。」
 店主は意味が分からないといった顔をした。2人は顔を見合わせながら、店に入っていった。

 店の中はとても温かかった。洋服がずらりと並んでいた。
「本当にもらっちゃってもいいんですか?」
「あぁ、この街は皆そうさ。他の街は知らないがな。」
にやりと大柄な店主は笑った。
 結局、2人はお言葉に甘えることにした。隼人は黒い長ズボンにタンクトップ、ベルトのたくさんついた長いコートを選んだ。美咲は白のミニスカートに黒の肩のでたセーターを選んだ。
「お二人さん、良く似合ってるぞ。…この匂いは…お前さんたち、名前は?」
 店主は2人をほめたかと思うと突然名前を尋ねてきた。
「美咲といいます。」
「隼人です。」
「なに…貴様等、人間か!」
すると突然店主は大きな斧で2人を狙ってきた。二人は驚いていた。さっきまで優しかった店主、それが突然、あの紫の“化け物”になったのだから。
「おいおいおいおい!“化け物”たちはみんな変身能力があるのかよ!」
 攻撃を避けながら隼人は言った。美咲と共に大急ぎで街に出ると紫の“化け物”たちが集まっていた。
「なんでいっつも私達が狙われなきゃならないのよ!」
 そう大声で叫んでいると、一人の人間がこちらに手招きしているのが見えた。人間は地下の入り口の階段にいる。
「美咲、一か八かだ!行くぞ!」
「わかった!」
 どうせここにいても人数が多すぎて勝てない。ならば賭けに出るしかない。二人は急いで“化け物”の攻撃を避けながら人間の後を追いかけていった。







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