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彼と彼女の千文字会話 作者:江見村元素

同棲編

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年賀状

 コタツの中で足を温め、窓の向こうの夕焼けと街の灯りを見つめながら。
 一日の終わりに、二人は他愛ない会話を始めます。



「おや、手紙出すなんて珍しいですね。何の懸賞に応募するんですか?」

「懸賞じゃない。年賀状だよ年賀状」

「あー、そういえばそんな文化もありましたね」

「君の中では既に過去の遺物なのか。お世話になった先生とか、学生時代の友達とかに出さないの?」

「去年出しませんでしたし、一通も来ませんでしたからね。仲の良かった友達とはメールでやり取りしてます」

「わざわざ年賀状書くのも面倒だから、最近はそういう人も多いよね」

「あなたはパソコンで作ったりしないんですか?」

「年賀状ソフトは高いからね。ハガキ裏はワードで編集しようと思ってるけど、宛名は手書きだよ」

「裏側はもう完成してるんですか?」

「うん、ほら」

「干支の蛇に賀正……って、味気ないですね。これならコンビニとかで印刷済みのハガキ買ってきたほうがマシですよ」

「うっさい。自分で作るのが大事なの」

「私とのツーショット写真とか入れないんですか? それで横に『僕たち結婚します』って」

「年賀状書いてるんだよ僕は。それに結婚とかまだ予定すらないだろ」

「じゃあ『いずれ結婚するでしょう』と」

「何の予言? そんなこと言っといてしなかったらどうするんだ」

「だったら今の進行度を書きましょう。『私たちBまでいきました』」

「正月からなんで他人を悶々とした気分にさせなきゃならないんだよ! 面白いアイデアなら採用してもいいけどそういうのはナシ!」

「面白いアイデアですか……。では長期計画になりますが、一年ごとに二人がどんどん仲睦まじくなっていく年賀状などどうでしょう?」

「ああ、それは面白いかもね。後から見返してほんわかした気持ちになれるかも。でもどうやって仲の良さなんて表現するの?」

「まず今回は二人で並んで、かつ微妙な距離感を演出して撮ります」

「演出するのか。まあいいけど」

「次の年は二人で手を繋いで並んでる写真です」

「なるほどね。次の年は?」

「二人で抱き合っている写真を」

「なんか一気にバカップルっぽくなったな。そんなことしてて、ある年突然僕一人だけとかになったら目も当てられない……」

「だからそういうことがないように、毎年少しずつ仲良くなるんです。次は二人でキスしている写真」

「完全にバカップルだ。そしてこの後の展開が読めた」

「次は全裸の二人が抱き合っている写真」

「……ああ」

「次はあなたの(U)が私の」

「もういいよ! 下ネタ出さなきゃ死ぬ病気なのか君は!」

「えー、まだ続きがあるのに」

「全部集めるのに何年掛かるんだ。っていうかそれ以上どう進もうって言うの?」

「より愛が深くなければ不可能なプレイにシフトします。ちなみにここからは会員登録が必要になります」

「金取ろうとするな。もはや仲が良いってレベルじゃなくなってるぞ」

「でも送られるほうは毎年楽しみにしてるでしょうし、仲良くなるのを止めるわけには」

「そんなのを楽しみにする人間は僕の友人にいないと信じたい。なんかもう性に堕落していく様を見させられてるみたいだよ。最後はどうなるんだ」

「最終的にはどちらかがどちらかを捕食します」

「愛が歪みすぎだ」



 日は山に隠れ、星々が輝き出しました。
 月が今日を急かしていますが、二人の一日はまだ少しだけ続きます。
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