挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
彼と彼女の千文字会話 作者:江見村元素

同棲編

75/1722

 コタツの中で足を温め、窓の向こうの夕焼けと街の灯りを見つめながら。
 一日の終わりに、二人は他愛ない会話を始めます。



「園芸だけでは面白くないので、他にも趣味を探してみました」

「あんまり多くやると忙しくなるぞ。趣味に追われたら元も子もないじゃないか」

「家庭菜園ってまったりやるにはいいんですけど、水やりと写真撮影くらいで終わっちゃうんですよ、規模的に」

「ブログでもやって写真アップすれば?」

「ペットボトルに生ゴミが入ってるだけの画像なんて誰が見に来るんですか」

「……もっともなんだけど君がそれを言うな」

「あと一つだけ、お手軽な趣味として絵でも始めてみようかと。園芸とも相性抜群です」

「育てた植物をスケッチするってこと? なるほどね。でも君、絵心あるの?」

「手始めに一枚描いてみましたが、いかがです?」

「おー……ペットボトルに入った生ゴミだ。なんでだよ。そこは対象選べよ」

「絵心あるでしょう?」

「パッと見なら抽象芸術の作品に見えなくもない」

「微かに見える玉ねぎは剥いても剥いても中身がない『この世界』を、それを埋め尽くす無秩序な残飯は『氾濫する言葉』を表しているのです」

「それっぽくこじつけるな。今考えただろ」

「題名は『ゲロニカ』」

「ピカソに謝れ」

「そしてこれをブログに上げる、と」

「画像よりはマイルドだけど、たぶんただの下手くそって思われるよ」

「実物の写真と並べればどれだけ写実的かわかってくれるでしょう。実物のほうから絵に近づいてきてくれるなんて、まるで超一流の芸術家ですね。こんなところに私の才能があったとは」

「……うん、まあ好きにすればいいや。絵はまだそれ一枚だけなの?」

「あなたを描いてみました。あまり上手くいきませんでしたが。ほら」

「確かに微妙、っていうか正直言ってド下手だな。なんかバランスおかしいし。手が足で足が手みたい。適当な部品持ってきて適当にくっつけましたみたいな感じ」

「人間は難しいですね」

「これで絵の才能があるとか言うなよ。結局君のレパートリー生ゴミだけじゃないか」

「この絵もあなたのほうから近づいてきてくれればいいんです」

「意味がわからない。君の同居人、こんな化け物でいいのか」

「金槌で叩けばこういう頭の形になりませんかね? 毎日少しずつ絵に近づけていけば」

「それはもう芸術家じゃない」



 日は山に隠れ、星々が輝き出しました。
 月が今日を急かしていますが、二人の一日はまだ少しだけ続きます。
勝手にランキング参加中↑↑↓↓←→←→BA
小説家になろう 勝手にランキング

cont_access.php?citi_cont_id=361022146&s
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ