挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
彼と彼女の千文字会話 作者:江見村元素

同棲編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

56/1873

アイデンティティー

 コタツの中で足を温め、窓の向こうの夕焼けと街の灯りを見つめながら。
 一日の終わりに、二人は他愛ない会話を始めます。



「タイヤ交換お疲れ様です」

「そろそろ雪が降りそうだからね、冬支度始めないと」

「ガソリンスタンドとか車屋さんとかに頼まないんですね。意外です」

「自分でできることなら自分でする。君とは違うんだよ」

「うぬ、なんかカチンとくる言い方ですね。私にだって一人でできることくらいあります」

「例えば?」

「あなたの料理を食べられます」

「僕の料理が君くらい酷ければ自慢できることなんだろうけど」

「一人でも寝られます」

「子供か。食うとか寝るとかじゃなくて、君のアイデンティティーはなんなんだと」

「そんなものありません。人間なんて中身はみんな似たり寄ったりです」

「アフォリズムっぽいけど君が言うと説得力のかけらもないね。君って本当に何もできないんじゃないかって気がしてきた」

「……料理とか」

「自信ないなら言うな。それと君のは料理じゃなくて食材の廃棄」

「他にはえっと……タイヤ交換はできなくても、あなたと愛の交歓ならできます」

「やかましいわ」

「言い方を変えれば、あなたと付き合うことができます」

「泣いてもいいかな? あとそれ君が言えたことでもないから」

「じゃあ、あなたにできないこととか、不得意なことを教えてください。きっとその中に私にできることがあるはずです」

「うーん、できないことなんて意識したことないからわかんないな」

「あ、私、妊娠できます」

「性別を盾にするな」

「最近困ったこととかあれば」

「君が鬱陶しいことかな」

「……わかりました。では、今から礼儀正しい淑女になります。あなたと出会った頃の」

「唐突に新しい設定出てきた! え、君って昔はそうだったの?」

「忘れたんですか? あなたが私のような性格のネジ曲がった人間と付き合ってるのは、惚れた弱みというやつです」

「さも伏線回収みたいに辻褄合わせてくるな」

「出会った頃の私は、周囲の人間を完全にシャットアウトするほど心を閉ざしていたのです」

「なんか始まった」

「そんなとき出会ったのがあなたでした。あなたの優しさに、頑なだった私の心は雪解けのようにほだされていったのです」

「ほだされるの使い方間違ってるぞ」

「とまあ、こんなふうに妄想にふけることができます」

「生産性のかけらもない」



 日は山に隠れ、星々が輝き出しました。
 月が今日を急かしていますが、二人の一日はまだ少しだけ続きます。
勝手にランキング参加中↑↑↓↓←→←→BA
小説家になろう 勝手にランキング

cont_access.php?citi_cont_id=361022146&s
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ