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彼と彼女の千文字会話 作者:江見村元素

土手編

24/1814

風邪

 土手に座り込み、沈む夕日と川のせせらぎを見つめながら。
 一日の終わりに、二人は他愛ない会話を始めます。



「治りました、風邪。薬飲んだらすぐでしたよ」

「大事にならなくて良かった良かった。今度は僕が一人で話さなきゃいけないところだったよ」

「これが凡人と私の差です。お腹壊したくらいで休む人とは違うんです」

「うん、病み上がりのところ申し訳ないけど殴っていいかな?」

「昔から身体だけは丈夫でしたからね。回復力の高さはパーティーナンバーワンです」

「なんのパーティーだ」

「私とあなたです」

「ワンとツーしかいないし。井の中の蛙のほうがまだ凄い気がする」

「お前がナンバーツーだ!」

「サイヤ人の王子っぽく言うな。嬉しくないから」

「しかし人は井の中から抜け出せるんでしょうか? 上を見始めたらキリがないと思うんですが」

「いや、自惚れるなって意味のことわざだろうこれは。そういうインフレーションとか関係なく」

「人に向かって自惚れるなとは何様ですか。自惚れないでください」

「何に怒ってるんだ」

「こっちは井の中で満足してるんですから水を差さないでください」

「一理あるけど……なんか含みのある言葉だな」

「井の中から出ればもっと良い人がいることくらい知ってます」

「はは、君の言いたいことはよくわかったよ。僕も井の中から出てみていいかな?」

「冗談ですよ。ちょっと寒いのでくっついてもいいですか?」

「手のひら返し早いよ。風邪まだ治ってないんじゃない?」

「あれ、思ったより冷たい」

「熱っ! めちゃくちゃ熱い!」

「うふ、そうですね。私たちはいつだって熱々です」

「何言ってるのこの人。治ってないどころか悪化してるじゃないか」

「あ〜、川の向こうにおばあちゃんが見えます。オーイ」

「オォォォイ! それ違う川! 僕には見えないからおばあちゃん!」

「実家にいるはずなのにどうしてこんなところに……?」

「生きてるのかよ! 罰当たりな幻覚見るなよ!」

「なんだかあなたもいつもよりたくさん見えますね」

「それじゃ普段から僕がたくさんいるみたいだろ。馬鹿は風邪に気づかないらしいけど、こういうことか」

「馬鹿じゃないです。これだって計算ずくなんですから。こうして限界まで具合悪くなることで、あなたに看病してもらおうと」

「ああ、要するにただの馬鹿だね。とりあえず病院行こう」

「インフレかもしれませんね」

「インフルな」



 一人が腰を上げると、もう一人も立ち上がります。
 そうしてどちらからともなく手を繋ぎ、今日に背を向けて、去っていきました。
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