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彼と彼女の千文字会話 作者:江見村元素

土手編

22/1720

捏造

 土手に座り込み、沈む夕日と川のせせらぎを見つめながら。
 一日の終わりに、二人は他愛ない会話を始めます。



「あれよあれよという間に日曜日の夕方が来てしまいました」

「時間が経つのは早いよね。明日からまた五日間、頑張ろう」

「うー、頑張る気が起きません。せっかく休みに入ったと思ったのにもう終わりなんて……。この二日間なにもできてないです」

「つい昨日の出来事は思い出にならなかったと」

「ああ、そういえばあなたと美術館に行ったり三ツ星レストランに行ったり高級ホテルで愛の交歓にふけったりしましたね」

「記憶を捏造するな。何一つ合ってないよ」

「過去は輝いて見えるものです。人の脳は都合よくできていて、嫌な出来事は忘れ、楽しかった記憶だけ残します」

「君の場合実際にあった出来事ですらないんだけど」

「稀に夢の出来事と混同されてしまうこともあります」

「都合いいとかいうレベルじゃない」

「デートの時、あなたはもっとナイスガイだった気がするんですが」

「悪かったな。君は楽しそうに笑ってた気がするよ」

「気のせいです。動物園なんて庶民の娯楽で私が喜ぶわけないでしょう」

「なんでお嬢様キャラ?」

「昨日の夕飯は赤キャビアご飯と牛のフォアグラ炒め、松茸入りすまし汁でした」

「うちで食べたのはイクラ丼とレバニラと松茸の味お吸いものだったろ。なんだ牛のフォアグラって」

「現実を突きつけないでください。記憶だけでも充実させておきたいじゃないですか。過去なんて誰も知りようがないんですから」

「そんな必死に装飾しなきゃいけないほど悲惨か、君の日常は」

「実はこの土手でのショボいやり取りは夢なのかもしれません。本当の私は大国のお姫様か石油王の娘です」

「さらっとショボい言うな。もうただの現実逃避になってるし。じゃあ僕は?」

「農夫とかじゃないですか? 田舎で細々と野菜育ててる感じの」

「接点無さすぎだろ。もうちょい君と関連ありそうなポジションに据えてくれよ」

「じゃあ私の召し使いで」

「……なんか腹立つけどそれでいいや。現実そんな感じだし」

「え? 私がお姫様っぽいと?」

「傲慢で強欲って意味なら」



 一人が腰を上げると、もう一人も立ち上がります。
 そうしてどちらからともなく手を繋ぎ、今日に背を向けて、去っていきました。
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