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彼と彼女の千文字会話 作者:江見村元素

土手編

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オクトーバークレバー

 土手に座り込み、沈む夕日と川のせせらぎを見つめながら。
 一日の終わりに、二人は他愛ない会話を始めます。



「今日は十月一日ですね」

「なんかの記念日とかだったっけ?」

「はい、ちょうどエイプリルフールの半年後にあたる今日は、オクトーバークレバー。嘘をついてはいけない日なのです」

「それは初めて聞いたな。でも普段から嘘をついてなければ何の問題もないんじゃない?」

「甘いですね。人というのは日頃から他人を騙し騙し生きているんです」

「そんな悲観的にならなくても」

「ですから私があなたに嘘をついていてもそれは仕方のないこと」

「居直りか」

「規模に違いはあれど嘘をつくことを生業とされている方もいます。セールスマンとかギャンブル屋さんとか宗教家さんとか政治家さんとか」

「いきなり攻めるね」

「まあ政治家さんなんて嘘と隠蔽とハグラカシが仕事みたいなものですから、悪く言うのもなんですが」

「嘘をつかなきゃ混乱を招く場合もあるしね。宗教に関しては、嘘も方便だと反論されるだろうね。過去のことは反証するの難しいし」

「しかしオクトーバークレバーにおいては彼らも正直に話さなければなりません。『記憶にございます』」

「更迭確定」

「17歳教の方々もこの日ばかりは実年齢を称していただきましょう。『井○喜○子○8歳ですっ』」

「またマニアックなネタを。っていうか宗教の代表例それか」

「ギャンブラーもこの日ばかりはスポーツマンシップに乗っ取り正々堂々としたプレイをしなければ」

「それは逆に楽しそう。ギャンブラーにスポーツマンシップがあるかは微妙だけど」

「『あ、私ストレートフラッシュきそう』」

「自己申告までしなくていい」

「セールスマンも製品を真摯な態度で紹介しないと。『業界で五番目に売れています』」

「誰も買わない……。なんとかデータいじって一番にするか別のところアピールしようよ」

「振り込め詐欺もオレオレなどと言ってはいけません。『サギサギ、サギだけど』」

「ただの馬鹿だ。別にオレオレの時点じゃ嘘ついてないし」

「嘘つき村の方々もこの日ばかりは正直になってもらいます」

「ある意味パラドックス解決か」

「ああそれと、この会話は実はフィクションなのです」

「え、言ってる意味がわからない」

「とにかく今日はオクトーバークレバーですから、みんな正直にならないと。エイプリルフールは騙される方が馬鹿を見ますが、オクトーバークレバーは騙す方が馬鹿正直になります」

「うまいこと言ったつもりか」

「なので正直に言ってください。私のこと女性として意識してますか?」

「えっ!? いや、まぁ、少しは意識してる……かな」

「へぇ。それはそれは」

「なんだよ。僕が正直に言ったんだから君も正直に話せよ」

「正直な話、オクトーバークレバーなんて嘘です」

「おい」



 一人が腰を上げると、もう一人も立ち上がります。
 そうしてどちらからともなく手を繋ぎ、今日に背を向けて、去っていきました。


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