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彼と彼女の千文字会話 作者:江見村元素

土手編

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ごろごろ

 土手に座り込み、沈む夕日と川のせせらぎを見つめながら。
 一日の終わりに、二人は他愛ない会話を始めます。



「今日も一日が終わりますね」

「あっという間だったね。こんな日がずっと続いたとして、僕らに一体何ができるんだろうね」

「感傷に浸っているところ水を差すようですみませんが、私の今日はとても充実していました。これが毎日続けばどんなことでもできそうです」

「充実って、一日何してたの?」

「女の子の一日に興味がおありで?」

「……なくはない」

「では私の休日を説明しましょう。まず朝五時に目を覚まします」

「へぇ、起きるの早いね。僕は休みの日っていつも寝過ぎちゃうよ」

「その後再度就寝」

「起きてなかった」

「そして朝十一時に起床」

「それは一般人の感覚だと昼って言うんだ。結局僕より遅いし」

「歯を磨き、シャワーを浴び、朝食を食べます。その後ベッドへ」

「寝てばっかりか」

「夕方にもう一度起きて夕飯を食べて寝ます」

「一日ごろごろして終わってる……。動物園のナマケモノだってたぶんもうちょっと動くよ」

「でも真剣に毎日続ければ、どんなくだらないことでも一芸になるって言うじゃないですか。ごろごろも極めれば何かの役に立つかもしれません。いっそのことそれで生計を立てるのはどうでしょう?」

「できないよ。ぐうたらするだけでどうやって稼ぐんだよ」

「ゴロラーですね」

「なんだゴロラーって」

「日がな一日ごろごろすることを極めんとするプレイヤーたちのことです。ごろごろするのに最適な環境を研究することで日銭を稼ぎます」

「今考えただろ」

「ですから彼らの生活には基本、布団が必須ですね。それからお菓子と飲み物」

「太りそう」

「ゲームやマンガを用意する場合はあまり熱中し過ぎないものがいいですね。あくまで本来の目的はごろごろすることなので、手段が目的に成り変わってしまうのは好ましくありません」

「無駄に考えが深い」

「あとはペットボトルですね」

「え? 飲み物はさっき言ってなかったっけ?」

「空のペットボトルですよ、飲む用じゃなくて出す用の。ごろごろの最中にトイレに行きたくなったら元も子もありませんから。大きい方はごろごろする前に済ませておきましょう」

「そこは普通にトイレに行こうよ」

「部屋から出た時点で、いえ、起き上がった時点でごろごろはおしまいなのです。そんなことでは真のゴロラーたりえません」

「起き上がらずにどうやっておしっこするの?」

「初級ゴロラーはベッドの段差を使います。男性はそれも必要ないでしょうが。プロゴロラーになると尿道にカテーテルを挿して垂れ流しにします」

「なんだプロゴロラーって」

「世界ゴロラー連盟に雇われてごろごろすることで日銭を稼いでいる人たちです」

「謎の需要が生まれた」

「ゴロラー連盟に加入したゴロラーは影のプロゴロラーと戦わなければなりません」

「影のプロゴルファーみたいなの出してくるな」

「こんなことを考えながら一日が終わります」

「幸せな人生だなぁ」



 一人が腰を上げると、もう一人も立ち上がります。
 そうしてどちらからともなく手を繋ぎ、今日に背を向けて、去っていきました。


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