第一章 籠鳥雲を乞う
No.39 四年間ぶんの思い -リュファス編-douze
「じゃあ、とりあえず今日はこの子たちの相手をお願いね。そのあいだに私は掃除とかしてるから。何か困ったことがあったらすぐ呼んでね」
そういってバルブロは行ってしまった。
俺がいるのは教会裏に広がる草原のような場所。俺がここにきたときに歩いたであろう場所だ。草原では子どもたちが思い思いに遊んでいた。
軽く身支度を済ませたあと、早速仕事を任されたわけだが、小さい子どもの相手なんて正直何をしていいかわからない。三歳くらいの子から、上は十歳くらいのものまでいる。
とりあえず、年近いやつらは思い思い好きなことしてるみたいだし勝手にしてもらうとして・・・・・・、問題はもっと小さい子たちだよなぁ。
そんなことを考えながら頭をかく。そして目を閉じてため息ひとつはいていると
「おにいちゃんだぁれー?」
いきなりアガス語で話しかけられた。
「えっ?」
俺は目を大きく開けると、さっきまで少し遠くで遊んでいた三才から八才くらいの年齢の子たちが俺の周りに集まっていた。
うわっ、まじかよ・・・・・・。
心の中で苦笑いしていると
「今日からここに住むんだよね?」
さっきバルブロと一緒に部屋に来た少年がニコニコ顔で俺に話しかける。
「あぁ、うん。そうなんだ、えっと、リュファスです。これからよろしくな」
俺は何とかみんなに言い聞かせるようにそういうと
「D'ou venez-vous?」
「Quel age avez-vous?」
「Why were you necessitated to do that?」
いっせいに質問の嵐を浴びせられた。ところどころのラナ語はわかるが、早すぎて聞き取れないし、ラナ語ではない言語は果てしなくちんぷんかんぷんで意味わからん。
俺がいうまでもなく困惑していると、あの部屋を訪れてくれた少年がみんなに何かいった。
すると、たちまち質問がやんだ。
「リュファス兄ちゃん、俺が通訳するよ。俺こう見えてもクォーターでアガス語とラナ語はほとんどわかるし、ピア語もなんとなくわかるからさ!」
少年はなんともすがすがしい笑顔で俺に顔を向け、俺は俺でこいつすげぇなと内心驚きつつ
「あ、ありがと・・・・・・、頼む、えーと・・・・・・」
そういえば俺はこの少年の名すら知らないことを今更ながら思い知る。そんな俺の様子を見て
「俺はアノだよ、で、こっちはエイヤッ!」
アノは一気にいった。
元気だねぇ・・・・・・。俺もこうだったんだろうか?
内心そんなことを思いながら
「よろしくな、アノ、エイヤ」
俺は二人の目線に合わせていった。
するとエイヤがアノの服のすそを引っ張りぼそぼそとアノに早口でいった。アノはエイヤにっこりうなづき
「チョコおしかった? だってさ」
俺に顔を向ける。
その質問に俺はほほえみながら
「あぁ、とってもおいしかったよ、ありがとな、エイヤ。・・・・・・って、訳してくれ、アノ」
「りょーかーいっ!」
アノが元気よくいって右こぶしを天高く振り上げた。
そんなこんなでアノの通訳もあり、子どもたちの面倒を見るというよりはむしろ子どもたちの話し相手をしてその日の午後は瞬く間に過ぎていった。
空は赤く染まり、夜の帳が下りようとしているころ、教会に二人の俺と同い年かそれ以上の年の少年が二人やって来た。
一人は背が高く真っ黒で長い髪を後ろで一つに縛り、もう一人は俺と同じ背くらいの淡い茶色の短髪をした少年だった。子どもたちは二人を見るなり
「おかえりなさーいっ!」
だいたいが一目散に二人の元にかけていった。それぞれがそれぞれの言葉で二人に声をかける。
「おー、今帰ったぞー」
黒髪の少年もうれしそうにいって子どもたちを出迎える。
俺がその光景を見ていると、茶色の髪の少年と目が合った。少年は俺を見るなり目を見開く。そして、少年は黒髪の少年に肘打ちし、二人の視線が俺に来る。
当然ながらあまりいい思いはしない。子どもたちは二人が俺を見ているとわかると
「リュファスにいちゃんだよっ! 今日から俺たちとここに住むんだってっ!」
誰かがいった。続けてまた一言。
「アガパンサスからきたらしいよー」
それを聞いた二人は顔を見合わせ、なんだかまずそうな顔をした。そして、茶色の髪の少年が黒髪の少年に何か早口でいったかと思うと、
「みんな、もう遅いし中に入るぞー」
黒髪の少年がみんなを誘導し始めた。
そんな中茶色の髪の少年は俺の下にすばやく駆け寄り切羽詰った様子で
「時間がないっ! ついて来いっ!」
あわただしくいった。
俺は急なことに何がなんだかわからず動揺する。
そんな中少年は俺の近くにいたアノとエイヤに
「二人とも早く中に入るんだ、俺はこのお兄ちゃんと話があるからっ!」
そう言い聞かせる。
「はーい」
アノは元気よく返事をし、エイヤはうなづき、二人は仲良く教会の中にかけていった。
その後姿を見て、みなが教会へ向かっていくのを確認すると
「とりあえずあいつが時間稼いでくれるだろうから、人気がない場所に行くぞっ!」
「えっ?」
「お前のためなんだよっ! お願いだから何も言わずについてきてくれっ!」
少年のその必死さに俺は何かあると思い、とりあえずうなづいてこの少年についていくことにした。
教会から一目散に走り連れて行かれたのは、村の家々の中にあるほんとに人気のない暗くてじめじめしたようなところだった。ほとんどが木で作られている村の家々はどこも明かりがつき、外を歩いているものはほとんど見受けられない。誰かの家裏のこの場所で、俺と少年は息を整えていた。
俺は少年を見ながら
「いったい、・・・・・なん、でこんなこと、しなきゃ、いけなかったんだ?」
単刀直入に聞いた。
少年は俺をじっと真剣なまなざしで見つめたまま
「おまえ、悪いことはいわない、早くこっから逃げろ」
「え・・・・・・?」
逃げろ? 一体なんだって逃げるんだ?
「自分のみがかわいければ迷わず逃げろ、じゃないと・・・・・・」
まさにそのときだった。
「二人ともなに話してるの?」
彼女がタイミングよくやってきたのは・・・・・・。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。