* * * * *
今日は嬉しいことがあった。それは、こうして久々の休暇をもらえたこと。なぜなら、
明日のお祭りのためにベナサール様ご一家が館に泊まりに来たからだ。婚約者が来たのに、
イノセンシオは相手をしないわけにはいかない。こんなことなら、もうずっと館に
いらっしゃってほしい。流石に、彼女が近くにいるときは彼も私と夜を過ごすのを控えている。
城下はもうお祭りで彩られていた。どの家も花や色彩豊かな布を飾り、どの商店街も
人でにぎわっている。
「店内全部二十五パーセントオフ! お祭りまでですよー、ぜひいらっしゃって
ください」
可愛いエプロン姿の仕事着の女性がケーキ屋の前で、客引きをしていた。思わず、
ショーウィンドウをちらりと見る。目に入るのは、見た目もおいしそうな様々なケーキ達。
ふぅ。思わず溜め息をついた。食べたいとは思うが、流石に一人で店内に入りいくつかの
ケーキを一人で食べる勇気はない。買って帰ればいいのだが、帰って一人だけ食べるのも
気が引ける。かと言って、皆に買っていくと高くつく。
こういうとき、本当に友達がほしいと思う。イノセンシオと関係を持ってから、
使用人たちも距離を置くようになった。ただでさえ、広い人間関係ではなかったのに、
余計に狭くなったというわけだ。いいとばっちりである。
ここは諦めて、雑貨や服でも見よう。私がケーキ屋を後にしようとした、まさに
そのときだった。
「待ったぞ、妹よ。ほらこっちだ」
突然左肩に手をおかれ、話しかけられた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「お客さん困りますよ、無銭飲食はっ!」
体格のいい初老の男性が冷たく言った。
「いや、だから、もうすぐ家から誰かが来ますから」
そんな苦しい嘘をつく。それもこれも、俺から財布をクスねこの場から逃げた仲間の
せいである。財布をすられること自体、ホントは空賊としてされるべきでない、
かっこ悪いことなのだが・・・・・・。あー、くそっ。帰ったらタダじゃおかねぇ。
あぁ、このままじゃ本当に食い逃げしねぇといかねぇじゃねぇか。
そう思ったときだった。
隣のケーキ屋のショーウィンドウを見つめる、少女が目に映った。少し変わった色の
肩ほどのストレートの茶髪に、大きな赤目。背は低く小柄で、色白の頬はうっすら桜色を
していた。服装からして、この国のもののようだ。この国ならではの草花の刺しゅうが
ところどころ施された、シンプルなワンピースを着ていた。
別に誰でもよかったし、彼女が自分が払えない金額ほどの金を持っているか
分からなかったが、とりあえずターゲットに決めた。
女を脅すのは気が引けたが、俺はもう
「来たよ、あれ妹」
俺はあいつを指差すと、もうあいつに向かって歩き出していた。
そして、
「待ったぞ、妹よ。ほらこっちだ」
肩に手を置き、引き止めると、俺はそのこの右手を取り歩き出した。抵抗されるかと
思ったが、やけにおとなしい。急いでいるので表情はよく分からなかったが、おとなしすぎる。
まぁ、いいや。抵抗されれば、おとなしく言うことを聞かせるだけだ。俺は、
とりあえず、さっき食事をした店長が訝しげににらみつける店へさっそうと少女を連れて
歩いていった。
私たちの
それが、 初めての出会いだった。
俺たちの
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