クールな風とロボット
涌井いづみは、微笑みながら犬を呼んだ。
「ポチ!」
犬は、尾を振りながら、彼女の前までやってきて、甘えるように吠えた。
「元気だった?」
彼女は、ポチの頭をなでた。犬は、やたらと尾を振っていた。
玄関前の木の階段の手摺りに配置された、太陽光充電常夜灯が階段を照らしていた。玄関の灯りが点き、ドアが開いて、白髪の混じった髪に手を当てながら、初老の女性が出てきた。
「いづみちゃ〜〜ん!」
「美沙子叔母さん、来ちゃった。」
「いきなり、電話で来るって言うから、びっくりしちゃった。」
「ごめんなさい。」
「いいのよ。いつものことだから。」
「叔父さんは?」
「温泉。」
「温泉?」
「なんでも、大菩薩の湯の新しい露天風呂を見に行ったの。」
「新しい露天風呂ができたの?」
「そうなのよ。今さっき行ったばかりだから、一時間は帰って来ないわね。」
「そう。」
叔母さんは、涌井いづみの後ろで、ぼんやりと立っている龍次と愛美を見た。
「あら、あの男の方は?」
「龍次さんです。電話で話してた方です。」
「ああ、別荘を探してる方ね。」
「ええ。」
龍次は、頭を下げた。
「とんでもない時間に、すみません。」
「いいんですよ。主人も私も夜更かしですから。」
愛美が出てきた。
「あけまして、おめでとうございま〜〜す!」深く頭を下げた。
涌井いずみも龍次も、思い出したように、深く頭を下げた。
「あけまして、おめでとうございます。」
「あけまして、おめでとうございます。」
叔母さんは、いづみを龍次を見て微笑んだ。
「まあ、ぴったり!お二人、仲がいいのね。」
それから、三人に向かって頭を下げた。
「あけまして、おめでとうございます。」
玄関の方から、電話が鳴っているのが聞えた。
「あら、電話だわ。きっと主人だわ。」
叔母さんは、玄関の前の階段を、急ぎ足で登って入って行った。
建物の周りの唐松の林を、凛とした冷たい風が吹いていた。
ふと、龍次は呟いた。
「クールな風と、唐松の香り、なんだかノスタルジックでいいなあ〜。」
玄関のドアが開いた。中からロボットが出てきた。
「みなさん、中に入ってください。」
愛美は、びっくりした。
「わ〜、ロボットだあ~!」
涌井いづみも、龍次も驚いて、ロボットを見ていた。
ポチが、ロボットに向かって吠えていた。
この小説は
シュールミント の続きです。
最新作は、
人間村 です。
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