風魔の呪いの風
口が裂け、口から血を流した子供の亡霊が、龍次の前に現れた。龍次は、びっくりして避けた。
お坊さんが、手を合わせ、「南無阿弥陀仏!」と唱えた。
「交通事故で死んだ子供です。可哀想に、成仏できないで彷徨っている。」
美人漫画家の涌井いづみが、お坊さんの顔を見た。
「ここで、成仏させることはできないんですか?」
「簡単にはできないんですよ。家族の人と一緒に死んだ場所に行って、死んだことを教えてやらないといけないいんですよ。」
お坊さんは、不思議な表情で三人を見ていた。
「君たちにも、亡霊が見えているんだねえ?」
龍次が答えた。
「はい。」
愛美が、お坊さんに質問した。
「ああいう亡霊は、ここにいる人達には憑依しないんですか?」
「ほとんどしません。」
「どうしてなんですか?」
「霊は、ものすごく意思の弱い人で、守護霊のいない人にしか憑依しません。」
「そうなんですか。」
龍次が、少し笑いながら、お坊さんに質問した。
「僕は、極めて、意思が弱いんだけどなあ。大丈夫かなあ。」
「あなたは強いですよ。」
「そうですか?」
「あなたは、唯物論者ですね。」
「はい。」
「霊は、唯物論者には近づきません。霊を、あまり見ないでしょう。」
「子供の頃、見たような見なかったような、そのていどですね。どうして、霊は唯物論者と分かるんですか?」
「それは、犬が、犬好きな人と、犬嫌いな人を見分けるのと同じです。」
「なるほどぉ。」
「それに、あなたには強い守護霊がいます。」
「えっ?」
「たぶん、おばあさんですね。あなたの。」
「そうなんですか!」
「笑ってますよ。」
「ぅわ〜〜〜、正月なのに、お盆のような雰囲気の話だなあ。」
「そうやって、雰囲気に敏感なのは、霊を感じる能力があるのです。」
「ほんとですか?」
「あなたは、唯物論の信念を変えてはいけません。変えたら、霊が近寄ってきますよ。」
「え〜〜〜、まいったなあ。そう言われると、信念が揺らぐなあ。」
「絶対に変えてはいけません。」
「ぅわ〜〜〜、なんだかそう言われると。」
「絶対に変えてはいけません。」
「はい!」
愛美が、龍次を茶化した。
「霊は、アホには近づかないわ。」
「なんだって!」
お坊さんは、空を見上げた。
「最近は、呪われた風が吹いているねえ…」
龍次も、お坊さんのように、空を見上げた。
「呪われた風…」
「これは、昔の風じゃありませんよ。」
「そう言われれば、そうですね。」
「人間の欲望に呪われた、生き物を殺す腐った風、呪いの風でしょうね。」
「呪いの風…」
「呪いの風と言えば、千五百十三年に、風魔の呪いの風という火炎風で、寺が全焼したんですよ。」
美人漫画家の涌井いづみは、お坊さんを見た。
「風魔の火炎風?」
龍次も興味を示した。
「風魔と言えば、風魔小太郎の?」
「そうです。ここで、風魔党と三浦一族が戦ったんです。」
「三浦一族と?」
「はい。」
「風魔と三浦一族が戦ったんですか?」
「北条と三浦一族が戦ったんです。北条の忍者集団が風魔党だったんです。」
「じゃあ、風魔小太郎って、北条の忍者だったんですか?」
「そうです。風魔党は、北条の忍者集団だったんです。」
涌井いづみが、言葉を加えた。
「戦国時代に活躍した忍びの中でも、最も有名なのが北条氏のもとで暗躍した風魔党なんです。」
お坊さんは、涌井いづみの顔を見た。
「よく、ご存知で!」
上空を不気味な色の雲が流れ、不気味な臭いの風が吹いていた。
この小説は
シュールミント の続きです。
最新作は、
人間村 です。
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