ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
武田信玄のほうとう鍋
ロボットは、台所に引っ込んだ。
ボインの涌井いづみが龍次と目を合わせた。
「あのロボット、なんか変ね?」
「そうですかあ?」
龍次は、いづみのボインを、ちらりちらりと見ていた。ロボットのことなど、どうでも良かった。
「いづみさんって、シティーハンターに出てくる、槇村香まきむらかおりみたいだなあ~!」
「シティーハンターって、北条司の?」
「さっすが漫画家、よくご存知で!」
「常識ですよ。」
「見事なプロポーション!見事な脚線美!そして、見事な…」
龍次は、ボインと言おうとしたが、止めた。愛美めぐみが代わって言った。
「見事な、ボインでしょう!」
「なんだって!?」
「さっきから、ちらりちらりと先生のボインを見てるじゃない?」
「失礼なこと言わないでよ!インテリが、そういうことするわけないだろう!」
いづみは、物憂い表情で窓を見ていた。風が舞い、窓ガラスに枯葉が時々当たっていた。
「風が出てきたみたいですね。」
龍次は、ばつが悪そうに緑茶を一口飲んだ。
「犬、あのポチは大丈夫なんですか?寒くないんですか?」
叔母さんが返事した。
「犬小屋は自動ドアで、家の中にあるから大丈夫なんです。」
「家の中に?」
「はい。家の中の一室に犬小屋があるんです。」
「犬の部屋があって、犬小屋があって自動ドアがあるということですか?」
「はい。」
「それは素晴らしいなあ。」
「食事が済んだら、後で見せてあげますわ。」
ロボットが入って来た。
「武田信玄のほうとう鍋の準備が出来ました。」
「さあ、ダイニングルームに行きましょう!」
みんなは、ダイニングルームに入って行った。
「お客様は、そっちに座って!」
龍次は、台所から離れたところに座った。いづみと愛美は、その近くに座った。
テーブルの上には、電気鍋が置いてあった。
かぼちゃやニンジンや里芋や長ネギやエリンギやこんにゃくが、鍋の中で旨そうに煮えていた。
ロボットが、豚肉を入れた。それから、ほうとうを入れた。
叔母さんが、ロボットに言った。
「もういいわ。後はわたちが勝手にやるから。」
「分かりました。」
ロボットの高野山太郎は、自分の部屋に戻って行った。その後姿を、いづみは見ていた。
「叔母さん。」
「なあに?」
「あの高野山太郎というロボット、変わっているわねえ。」
「そうね。」
「どこから来たの?」
「高野山って言ってたわ。」
「高野山…」
「あのロボット、ときどき自分の部屋で誰かの写真を眺めているのよ。」
「写真を?」
「なんだか、人間みたいなロボットなのよ。」
「誰の写真なの?」
「知らないわ。聴いたことないから。」
龍次は、鍋の中の面を指差した。
「これが、ほうとうですか?」
叔母さんが答えた。
「はい。これは、武田信玄が考えたものなんです。」
「武田信玄が?」
「武田信玄が、陣中食用に考案したんです。おいしくって、うどんよりも食べがいがあります。」いろいろと話しているうちに、ほうとうは煮えた。
「もういいわ!さあ食べましょう!」
叔母さんは、人数分の大きな深皿によそった。みんなは、「いただきま~す!」と言って食べ始めた。
好奇心の強い龍次は、ほうとうから食べ始めた。
「お~~、しこしことして美味しいなあ~!」
窓の外で、槍を持った武田忍者の亡霊が、ほうとう鍋とみんなを見ていた。







この小説は シュールミント の続きです。

最新作は、 人間村 です。

 六角オセロゲーム 

 六角オセロの掲示板 



+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。