ロボットの仁義
「彼らを見たんですか?」
「彼らって?」
「新日本赤軍の連中です。」
「とんでもない。君子危うきに近寄らずで、急いで帰りましたよ。」
「そうだったんですか。」
愛美は、相変わらず写真の富士山を見ていた。
「この写真の近く?」
「もっと下の方だよ。」
好奇心の強い涌井いづみは、龍次の話に目を輝かせていた。
「大菩薩未来研究所の近くでは、よく変なのが出てくるんですよ。」
龍次は、きょとんとした顔で軽く質問した。
「変なのって?幽霊とかですか?」
「狂ったロボットとか、不気味な動物とか。」
「え〜〜〜、ほんと?」
「本当です。」
「狂ったロボットってのは、なんとなく想像できるんですけど、不気味な動物っていうのは、どういうのですか?」
「頭が二つとか、足のある蛇とか、そういうものです。」
「え〜〜〜、ほんと?」
「本当です。」
「ニュースで見たこと無いなあ。」
「あの辺り一帯は、取材規制があるんです。政府関係者以外は誰も入れません。」
「なあるほど。」
「わたしも見たんですよ〜。」と言いながら、叔母さんがやってきた。
「豹人間をね。去年の十月の終わりにね。」
龍次は、目を見開いていた。
「豹人間?」
「顔中、豹のような毛で覆われていたんですよ。」
「それで?」
「びっくりして、逃げました。走って。」
「追いかけては来なかったんですね。」
「追いかけて来ました。」
「え〜〜〜、それでどうしたんですか?」
「息が切れて、しゃがみ込みました。」
「それで、どうなったんですか?」
漫画家の涌井いづみも、驚いて同じように尋ねた。
「それで、どうしたの?」
「もう駄目かと思っていたら、後ろにロボットが立っていたの。」
さっきのロボットが、部屋に入って来た。
「この人じゃなくって、このロボットが立っていたの。」
龍次は、ロボットの顔をまじまじと見た。
「ってことは、このロボットに助けてもらったんですね。」
「ええ。」
ロボットは、身動きもしないで無表情に突っ立っていた。
叔母さんは、少し涙目になっていた。
「この人、じゃなくってロボット、黙って行こうとしたので呼び止めたの。」
龍次は、ロボットの目を見ていた。
「黙って…」
「あっしには係わり合いのないことで、って言って…」
「あっしにはかかわりあいのないことで…、どっかで聞いたことのあるセリフだなあ。」
涌井いづみが言葉を追加した。
「木枯らし紋次郎のセリフだわ。」
「あっ、そうだ。いづみさんは良く知ってるねえ、若いのに。」
「有名なセリフですから。」
「さすが漫画家。」
叔母さんは、ロボットに頭を下げた。
「あんときは、どうもありがとう。」
ロボットは突っ立ったまま答えた。
「当然のことをしたまでのことでござんす。黙って人間を助けるのが、ロボットの仁義でござんす。」
龍次は、まじまじとロボットを見上げた。
「まるで、木枯らし紋次郎だなあ。」
ロボットは、なぜか龍次の目を見ようとはしなかった。
この小説は
シュールミント の続きです。
最新作は、
人間村 です。
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