それは偽りの月のように。(4/8)縦書き表示RDF


サブタイトル、内容一部変更しました。
それは偽りの月のように。
作:境 鏡介



第3章:時には月が雲隠れ


 咲子を見舞いにいった日の翌日の放課後。智奈は眉間にシワを寄せて、夕陽に染まった階段を見下ろしていた。
 「智奈。顔が恐いよ。どうしたの?」
 と、もみじは智奈を見て、悪戯っぽく笑いながら言った。
 「…何回言えば分かるの?二日酔いよ」
 と、目だけをもみじに向けて智奈は言った。
 「一日中、不機嫌だったもんね。男子が恐がってたよ」
 智奈はもみじの言葉に応えずに、視線を階段に戻した。
 「…ここよね。咲が落ちた階段って」
 「そうだよ。本校舎。2階。東端の階段。咲から聞いたじゃない」
 智奈は左手を手すりに添えて、ゆっくりと階段を降りはじめた。もみじも智奈に続いて階段を降りた。
 踊り場に降りると、智奈は持っていたバックからはみ出していた定規を抜き取り、階段の段の縦の長さを測りだした。
 「何cm?」
 と、もみじはしゃがみこんで訊いた。
 「…24・5cm」
 そう言って、智奈は定規で肩を叩くと、「…意外に短いわね」
 「気がすんだところで私の話、聞いてくれる?丸1日かけて私が仕入れてきた話!」
 智奈はもみじを睨みつけると、「…聞いてあげるから、大声出さないで」
 「了解」
 そう言って、もみじは眼鏡のツルを人差し指で撫でながら、「咲と同じ日に落ちた生徒だけど、名前は奥山秋子(オクヤマ アキコ)。2年4組。この先輩が落ちたのが、西棟の2階。西端の階段ね」
 「…たいした情報力ね」
 そう言って、智奈は立ち上がった。ゆったりと階段を昇りながら、「…つまり、同じ日に、同じ階から落ちたってわけね?」
 「そう。しかも、奥山先輩が落ちた西棟って、渡り廊下で繋がってるじゃない?」
 「…そうね」
 智奈は階段を昇りきると、廊下に立って、まっすぐに伸びている廊下の果てを睨みつけた。
 もみじは、智奈に近づくと、「つまり!この直接上の西端と東端の階段で、2人の人間が『5時55分の怪人』の被害にあったのよ!」
 智奈はもみじを睨みつけて、「…聞いてあげるから大声出さないで、って言ったでしょ?」
 「了解」
 智奈達は廊下を西棟に向かって歩きはじめた。
 「奥山先輩ってね、口が軽いことで有名だったらしいよ。2年生の女子の間では常識だって」
 と、もみじが左手に並ぶ教室を眺めながら言った。
 「…なるほどね」
 と、智奈はトイレを右手に見ながら言った。
 「それでね、奥山先輩は合唱部なの。落ちた日も部活で残ってたんだって。休憩時間の間に落ちたみたいで、時間が過ぎても帰ってこないから、合唱部の同じクラスの人が捜しにいったんだって」
 「…それで見つけた、と」
 「うん。でも、救急車をよんだのは別の人。西棟って、理科室とか音楽室とか、特別な教室ばっかりじゃない?一番最初に気づいたのは、美術室にいた美術部だって。他にも科学部とかパソコン部とか、西棟に残ってたって」
 と、図書室を横目に見て、もみじは言った。
 「…奥山先輩、頭を打ったみたい。まだ意識が戻ってないらしいよ」
 「…なるほど。奥山先輩は重症。西棟には人がたくさんいたってわけね」
 そう言って、智奈は本校舎と西棟をつなぐ渡り廊下の上で足を止めた。智奈は窓の外に目をやった。
 黄昏がグラウンドのサッカー部の影を長く伸ばしていた。智奈は激しく動く影法師達を見つめながら、呟いた。
 「…多すぎるわね。容疑者が」












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう