ハヤテのごとく!〜ヒナギクの彼氏〜(8/23)PDFで表示縦書き表示RDF


ハヤテのごとく!〜ヒナギクの彼氏〜
作:Daisy Katsura



Stage 8


(此処は・・・?)
 ナギが気が付くと、そこはハヤテが前に住んでいたと思われる、とても狭い部屋だった。
ガタン──ドアが空き、
「ただいま!」
 と、ハヤテが慌てて入って来た。
「ハヤテ!」
 ナギは駆け寄るが、ハヤテは気が付かず、ナギを擦り抜けてしまった。
「お前は今精神だけの状態。言わば幽霊だ。この世界のモノには一切干渉は出来ん」
 その声と共にハヤタが横に現れた。
「父さん、母さん!僕の給料!」
 ハヤテはテーブルの上にある給料袋を見付けると、
「あっ、よかった!やっぱりまだ使ってないんだね!」
 と、手にして何気なく裏を見ると、
『ごっめ〜ん☆パチスロで倍にしようと思ったんだけど失敗しちゃった』
 ハヤテは中身を出した。出て来たのはたったの12円。
「12円でどうやって歳を越すつもりなんだハヤテは?」
「さあな」
「!!」
 ハヤテは窓ガラスに貼ってある封筒に気付いた。
(何だこれ?『ハヤテくんへ』?)
 ハヤテは窓ガラスの封筒を取って調べた。
(クリスマスプレゼント?あの親が?まさか?)
 ハヤテは封筒の中から手紙と一通の借用書を出した。彼は暫く、そこに書かれている事の意味が理解出来なかった。
「何コレ?借用書?1、10、100、1,000・・・1億・・・1億5千万!?」
 正確には156,804,000円である。
(『後は任せた!』って・・・。え?何?まさか・・・!?)
 ハヤテは自分に宛てられた手紙を読んだ。
「はぁ!?いやいや、そんなの任されても無理だって!それに大体、何時の間にこんなスゲー借金作ってんだよ!」
『ゴメン・・・ついつい博打に熱が入って・・・』
「アホー!」
『しかし仕方なかったのです』
「いや、仕方がないって博打じゃん!」
『まーでも、できちゃったものはしょうがないし・・・』
「開き直るな!」
『だけど働いて返すのはダルいし、ハヤテくんの給料は少ないし、貯金もない。困り果てたママ達はあれこれ考えた結果、ふと名案を思い付きました』
「名案?」
『そうだ、息子を売ろう』
「母さーん!」
 と、その時、ドンドンドンッとドアを叩く音がした。
「ゴルァ綾崎!息子をもらいに来たぞ!出て来いやゴルァ!」
 だがハヤテは無視して次を読む。
『これくらいで買ってくれるさ』
大公開
 裏ルートマル秘
  臓器販売価格
脳─── 500万円
目─── 150万円
心臓──1200万円
「・・・・・・」
「おらぁ!とっとと息子の臓器売らんかいゴラァ!」
 ハヤテは声の方を向いた。
(おいおいおい・・・マジかよあの親・・・。とにかく逃げなくては・・・殺されてしまう!)
 ハヤテは借用書、手紙その他をポケットに丸め込み、窓から飛び降りた。
「おらぁ綾崎っ、息子は何処じゃあ!」
 と、黒服の男が三人入って来た。三人とも顔が怖い。
「ぬっ!?」
「野郎、何処行きやがった!?」
「兄キ、あそこ!」
 と、一人の男が窓の外を指差す。見ると、ハヤテが逃げている姿が確認出来た。
 兄キは舌打ちし、
「あのガキ・・・窓から逃げやがったか!」
「追いますか?」
 と、兄キの左側の男。
「当然だ。この家の物も全部差し押さえろ。大家も脅して敷金も全部回収だ」
「へい!」
 今のは右側の男だ。
「さて、俺らもハヤテを追うとしよう」
 ハヤタはそう言って、窓から飛び降りた。
「おい、待ってくれ!私は無理だ!」
「飛び降りろ。本当は嫌だが大サービスでキャッチしてやる」
「ぶっ殺すぞお前」
 ハヤタは走り始めた。
「待て!解った、飛び降りるから受け止めてくれ!」
 しかし、ハヤタは無視して走り続ける。
「おい、待て!」
「飛び降りても痛くも痒くもねえから安心しろ!」
(本当か?)
 ナギは飛び降りた。が・・・。
(痛っ!)
「痛いではないか!」
 だが、ハヤタはもういなかった。
「クソッ、何処行ったのだ!?」
(もしかして!)
 ナギはハヤテと最初に出会った自販機の前に向かった。案の定、ハヤタもそこにいた。そうして、二人組みにナンパされているもう一人も自分も。
「人の獲物に手を出すなぁ!」
 突如、茂みからハヤテが飛び出し、二人組みをぶん殴った。
「ネロの命日にナンパなんてお前ら何処のパトラッシュだ!帰る家がある人はとっとと家に帰れ!」
 二人組みは逃げた。
「・・・・・・」
 ナギは少しの間沈黙し、口を開いた。
「あ、ありがとう・・・」
 ハヤテははっとして振り向いた。
「何か知らんが、助かったよ」
 ハヤテは顔が真っ黒に成った。
(おっといかんいかん。何、感謝されてんだ僕は・・・。今からこの子を誘拐してたっぷり身代金を頂くんだ!甘い顔なんてしてる場合じゃ──」
 ピュー、と風が吹いた。ナギはプルッと震えた。
 ハヤテは疑問符を浮かべた。
「寒そうだね・・・」
「ん?ああ、ちょっとだけな・・・。色々あって、パーティーを飛び出してきたんだ。だからコートを忘れてきてしまって・・・」
(はっ!それがどうした!?それはアレか?同情を引いているのか!?だが残念だったな!僕の心は既に氷の様に凍てついて───」
へくちっ!──ナギは可愛らしいクシャミをした。
 ハヤテは可哀想に思ったのか、ナギにコート掛けてやった。
「女の子が体を冷やすのよくないから着てなさい」
(甘い!甘いよハヤテ!こんなんじゃ立派な犯罪者になれねーよ!」
 ナギはコートの袖に腕を通しながら、
「安っぽいコートだな」
 ピキッと怒るハヤテ。
「作りは荒いし、生地は重い。おまけにサイズはぶかぶかだ」
「お前、いくらなんでもハヤテが可哀想だぞ。あくまでもハヤテは借金抱えてんだから・・・」
「そ、そんな事言われたってこの時はまだ知らなかったし・・・」
「それもそうか・・・。お、此処でお前が勘違いをするんだな?」
「か、勘違い?」
「見ろ、ハヤテの顔を」
 ナギは何かを企んでいる様な顔をしたハヤテを見た。
「ハヤテの心の声を聞くんだ」
「心の声?」
(くくく・・・ならば話しは早い。助けたお礼に身代金を要求する為の人質になって貰おう)
(み、身代金・・・?)
 ナギは頭に疑問符を浮かべた。
「じゃ、単刀直入に言うよ。僕と、付き合ってくれないか?」
(ああ、こりゃいくらなんでも勘違いするわな)
「僕は・・・君が欲しいんだ」
 キラーンッとハヤテが輝いた様に、ナギには見えた。
「ば!イブの夜だからっていきなりそんな告白・・・。自分が何を言っているのかわかっているのか?」
「わかってるさ!だがこっちだって本気だ!」
「で・・・でも!」
バン!──ハヤテは自販機に手を着いた。
「こんな事、冗談じゃ言わない・・・」
 ハヤテは犯罪者の目で、
「命がけさ・・・。一目見た瞬間から君を、さらうと決めていた」
 ナギは頬を赤くした。
「わ、わかったよ。そ、その代わり、浮気とかは絶対ダメだからな!」
「え?あ、うん、わかってるよ」
(浮気?なんの事?)
「じゃあケータイ・・・は持ってる訳ないか。なら、君ん家の電話番号教えてくれる?」
「う・・・うん」
 ナギはハヤテに電話番号を教えた。
「では直ぐ戻るから、ちょっと此処で待ってて!」
 ハヤテはそう言って電話ボックスまで向かった。
(くくく・・・こうもあっさり人質を手に入れてしまうとは・・・!我ながら恐ろしい悪だぜ!)
「おい、今ハヤテの奴、人質とか思わなかったか?」
「誘拐・・・。お前が来る少し前、ハヤテは茂みの中でそんな事考えてたぞ」
(は、ハヤテが、私を・・・誘拐!?)
 刹那、ナギは現代へと引っ張られた。












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