Stage 20
練馬駅前のアパートに、織田倉の部屋はある。マリアはその部屋に、彼と一緒にいた。
「あの、織田倉さんはお仕事、何を為されているのですか?」
織田倉はその問いに、
「無職」
と、即答した。
「所謂ニートって奴ですか?」
織田倉はクスクスッと笑い、
「うーん、そうなるかな」
その時、部屋にチャイムが鳴り響いた。
織田倉は、玄関へ行ってドアを開けた。その向こうには、ハヤタがいた。
「マリアさんは何処だ?」
「お、お前は!」
織田倉は額に青筋を立て、ハヤタをぶん殴った。どうやらあの時の怒りがまだ残っているらしい。が、ハヤタに織田倉の拳は通用しない。
ハヤタは織田倉の胸倉を掴み、
「答えろ!マリアさんを何処へやった!?」
その問いに部屋にいるマリアが、
「帰って下さい!」
と、叫んだ。
ハヤタは織田倉を放すと直ぐに張っ倒し、土足のまま上がり込んだ。
「帰ろう」
しかしマリアは、
「帰れって言ってるのよ、帰れって」
そう言って、テーブルに置いてある麦茶入りのガラスコップをハヤタに投げた。
パリン!──コップがハヤタの顔面に当たって割れ、彼は麦茶でびしょびしょに為ってしまった。
「マリア・・・さん?」
ハヤタは疑問符を浮かべた。
「グハハハハハッ、死ねえ!」
突如、何時の間に台所に入って包丁を手にした織田倉が、ハヤタの背中目掛けて突っ込んだ。
「何!?」
ハヤタは振り向いた。
グサッ!──包丁が腹に突き刺さった。
ハヤタは呻き声を上げ、同時に顔を引き攣らせる。
「織田倉さん!?」
マリアは驚いた。
「メイドさん、この男ですよね?あんな事言ったの」
「確かにその子ですが、そこまでしなくても・・・」
「否、こいつは貴方を傷付けた。貴方、先程、公園で言いましたよね。自殺を考えた、と。だからこいつは死ななくてはならない。貴方を傷付けた詫びとしてね!」
「織田倉さん・・・」
「ゴチャゴチャうっせえんだよ!」
ハヤタはそう言って、織田倉を薙払った。
「てめえの言ってる事はサッパリ理解出来ねえ!」
と、包丁を抜き、尻餅を着いている織田倉に投げた。
グサッ!──織田倉の心臓に包丁が突き刺さる。
「はぁ!?何言ってんだてめえ!?マリアさんが自殺を考える訳無えだろ!」
と、織田倉に歩み寄って胸倉を掴むハヤタ。
「考えたわ」
唐突にマリアが言った。
「えっ?」
振り向くハヤタ。その先では、マリアがドス黒いオーラと殺意を放って立っていた。
「織田倉さんの言う通りよ。私がどんなに傷付いた事か・・・。貴方なんか、死んでしまえば良いわ!」
刹那、二人を除いて周囲の時間が完全に停止した。
ハヤタは辺りを見回し、
「閉鎖空間だと!?」
「ほう、人間がこの中で動けるとはな」
マリアはそう言って、水色のスライムの様な物質に変化した。
「役立たず目!」
謎の生命体はそう言って、体を分裂させて織田倉を包み込み、分裂した体を合体させた。
「スカだな」
「ほう、アメーバ星人か」
「俺を知っているのか?」
「貴様の噂は聞いている。沢山の星々で生命を吸収しまくっている大悪党なんだってな」
説明しよう。アメーバ星人とは、アメーバの突然変異体であり、宇宙の至る所に存在する星々の生命体をエネルギーとして吸収して回っている。こいつは色々な生命体に擬態する事が出来る為、見付ける事がとても困難である。更には、人の体内に入り込んで体を乗っ取ると言うとても厄介な技も持っている。
「大悪党とは人聞きが悪い。俺様は宇宙のゴミを掃除しているのだ」
「マリアさんはどうした?」
「マリアと言うのは先刻の女か?あれなら後で頂こうと俺様の宇宙船に保管してある」
「そうか。ならてめえをぶっ倒して助けに行くまでだ!」
ハヤタはそう言って妖刀・かまいたち真剣モードを召喚した。
「ふっ、この俺様に勝てるかな?」
謎の生命体・アメーバ星人はハヤタに飛び掛かった。
「貴様は強そうだ。きっと素晴らしい栄養に成るだろう」
そう言って、星人はハヤタを包み込んだ。
(しまった!)
「良いぞ。力が漲ってくる」
ハヤタはかまいたちを振るうが、
(クソッ、斬れ無え!どうしたら良い!?)
その時、ハヤタを包むアメーバ星人がバラバラに粉砕した。
バラバラに成った星人は、ハヤタ目掛けて集まろうとやってきた。
「避けてハヤタくん!」
その言葉と共に、巨大な火の玉が飛んで来る。
ハヤタは慌てて飛び避けた。否、飛び避けようとした。しかし最悪な事に、星人が彼の肉体に侵入し、体を操って火の玉をかまいたちで弾き返した。
「キャー!」
その悲鳴と共に、グリーンのドラゴン・グリーヴァが落下してきた。
「ほう、仲間がいたか。まあ良い。邪魔する奴は死ねぇ!」
ハヤタは真空波を放った。しかしグリーヴァには効かなかった。
「そんな物、この姿の私には効かないわよ。それより、ハヤタくんの体から出なさい!」
「嫌だね。俺様はこれからこの体を内側から吸収するんだ。手放す訳にはいかないよ」
「じゃあ死ね」
グリーヴァは鋭く尖った爪でハヤタの全身を切り裂いた。
「うわああああ!」
悲鳴と共にハヤタの全身から血が飛沫上がる。
「殺す気かヒナギク!?」
「えっ、ハヤタくん!?」
「そ・・・そうだ・・・俺だ・・・」
「先刻の青いのは?」
「お前に引っ掻かれる寸前に逃げたよ」
「違う・・・」
「へっ?」
ハヤタは疑問符を浮かべた。
「お前はハヤタくんじゃない!」
グリーヴァは再度切り裂いた。
「うわああああ!」
全身から血が吹き出す。
「くっ・・・・・・この体はもう使えんな」
星人はハヤタの体を抜け出し、火の玉を吐こうとしているグリーヴァの口に入り込んだ。
グリーヴァは無意識にゴックンと星人を飲み込んでしまった。
(しまった!)
「ガハハハハ!俺様は有機物なら何でも乗っ取る事が出来るのだ!」
「バカかてめえは!?」
ハヤタは起き上がり、目にも留まらぬ速さでグリーヴァの尻尾を切断した。
刹那、グリーヴァの体が縮み始め、人間大の大きさに成り、ヒナギクへと戻る。
体を押し潰されそうに為った星人は慌ててヒナギクの体を抜け出した。
「フッ、だが俺様にはまだこれがある!」
星人はそう言ってヒナギクに擬態し、本物と組み合ってグルグル回転した。
「一寸待て!どっちだ!?」
ハヤタは混乱した。
「「私が本物よ!あんたなら解るでしょ!?」」
と、二人のヒナギクが同時に問う。
「服を脱げ。本物なら谷間に二つの小さな黒子がある筈だ」
「「そんなの無いわよ!」」
と、同時に同じ事を発する二人。
「だったらこれしか無えよな!」
ハヤタはそう言って、目にも留まらぬ速さで接近し、二人の鳩尾に拳を繰り出した。すると、左側のヒナギクが避け、右側のヒナギクが喰らって吐血した。
「い、痛いじゃないのよ!」
ヒナギクは額に青筋を立て、ハヤタの鳩尾を殴り付けた。
「ぐっ!」
呻き声を上げ、腹を押さえるハヤタ。
「なっ、何て事するんだヒナギク!?」
その問いにヒナギクは微笑み、正宗を召喚する。
「お返しよ」
ヒナギクはそう言って、もう一人のヒナギクを正宗で悲鳴を上げさせる間も無く粉砕した。
「痛かったかしら?」
「ったりめえだろ!」
「まあまあ、そんなに怒らないでよ」
「別に怒っちゃいねえよ」
「怒ってるわよ」
「怒ってない」
「怒ってる」
「怒ってない!」
「怒ってる!」
「怒って無えって言ってんだろ!?」
それから二人は暫し沈黙し、腹を抱えて大爆笑した。
「それじゃ、マリアさんを救出して帰ろうか?」
「ああ」
と、二人は閉鎖空間を解除し、織田倉の部屋を跡にした。
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