Stage 12
温泉とも思える三千院家の大きなお風呂。その風呂で湯船に浸かるヒナギクとハヤタ。当然、二人とも全裸で、水着など着けていない。こうして二人が全裸で入れるのは、互いを信頼し、愛し合っているからである。
「それにしてもこの風呂ホントにでけえなあ。まるで温泉だぜ」
「ホントね。それより、ハヤタくんと一緒に風呂入るのってさ、結構久しぶりじゃない?」
「言われてみりゃそうだな。ヒナギクの家の風呂は狭くて二人じゃ一杯一杯だったもんな。て言うかこの状況ヤバくねえ?」
「確かにこの状況はヤバイわね」
「もしマリアさん入って来たらどうするよ?」
「そ、そりゃあ、あの岩陰にでも隠れるに決まってるでしょ」
と、大きな岩を指差すヒナギク。その岩の向こう側には、マリアと言う名の先客がいる。
(どうかバレません様に・・・)
が、その願いは惜しくも叶わず、マリアは足を滑らしてしまった。
バシャーン!──と、岩の向こうで水が飛沫した。
二人は驚き、顔を合わせた。
「も、もしかして、誰かいる・・・?」
「気の所為じゃない?」
「で、でもヒナギクにも聞こえただろ?ひょっとしてお化けか?」
「ヤメテ!お化けは嫌!」
「と、兎に角確かめてみるよ」
「うん、そうして」
ハヤタは岩の向こうを調べに行った。
「どう?何か有る?」
「何にも無いぞ」
マリアは安堵の溜め息を吐いた。ブクブクと音を立てる水。
「ん?」
ハヤタはお湯の中に顔を入れてみた。マリアが頑張って呼吸を止めている。
(マリアさん・・・)
刹那、二人の目が合った。
「はあっ!」
苦しく為ったのか、マリアはお湯から顔を出した。
そのマリアに対するハヤタの第一声は、
「覗きは違法ですよ?マリアさん」
そう言いつつ、マリアの全裸を観察してしまうハヤタ。やはり彼も男だ。
「エッチ!見ないで下さい!」
マリアはハヤタをぶん殴り、吹っ飛ばした。
「あ、御免なさいハヤタくん。お怪我、してませんか?」
「今のは痛かった・・・。痛かったぞー!」
激怒したハヤタは妖力を放出してボール状に固め、マリア目掛けて投げつけた。
放たれた妖力の球体はマリアを湯船から追い出し、壁にめり込ませた。
「一寸ハヤタくん!?マリアさんに何て事してるのよ!?」
「フン!」
ハヤタはヒナギクに妖力波を放った。
ドボーン!──水飛沫を上げ、ヒナギクは吹っ飛んだ。
(どうなってるんだ!?体が勝手に!)
「よくもやってくれたわね」
ヒナギクは正宗を召喚した。
「無駄だ」
刹那、ハヤタの背後にドラゴンの幻影が浮かんだ。
「ハヤタくん?」
疑問符を浮かべるヒナギク。
「はあー・・・・・・」
ハヤタは気を溜め出した。すると、全身を赤いオーラが纏った。
「我は竜神族最強の戦士、センコウクウラ。我に刃向かう者は全て消去する」
ハヤタはそう言って、閉鎖空間を張った。
「うっ!」
ヒナギクは頭を押さえた。
(グリーヴァが共鳴してる・・・。屹度、あいつがグリーヴァのお兄さんなのね。でも何で?グリーヴァのお兄さんは、ハヤタくんが封印したんじゃないの?もしかして暴走?)
「うわああああ!」
ハヤタは右手をドラゴンの手に変化させ、雄叫びを上げて襲い掛かった。
(避けろヒナギク!)
だが、ハヤタの心の叫びは届かず、ヒナギクは鋭く尖った爪で引っ掻かれてしまった。
「痛!」
と、出来上がったばかりの傷口を押さえるヒナギク。
「貴様、グリーヴァを封印しているな?」
「そ、それが、どうかしたのかしら・・・?」
グサッ!──ヒナギクの腹に爪を突き刺すハヤタ。
「うっ!」
ヒナギクは呻き声を上げた。
「グリーヴァを解放して貰おうか?」
「無理よ。私にはやり方が解らないわ」
「何をバカな事!?貴様はグリーヴァを体に封印したのだろう!?ならばその封印方と逆の事をやれ良いだけの話しだ!」
「封印したの・・・私じゃ・・・無いわよ・・・」
ハヤタはヒナギクの腹から爪を引っこ抜いた。
「ならば貴様を殺すしか無いな」
ハヤタは不適に微笑み、ヒナギクの首を片手で絞めた。
(息が、出来ない!)
すると、反対側の手が腕を殴った。
(何!?)
「勝手に人の体使ってんじゃねえよ!」
ハヤタはそう言って、体内からドラ○ンド○イブのセン○ーク○ラにそっくり、と言うか全く見分けの付かないドラゴンを気合で追い出した。
「センコウクウラ、またお前と戦う日が来るとはな」
説明しよう。センコウクウラとは、マリア編の6話で上がった、過去にハヤタがセン○ーク○ラに変身したと言うあれである。彼は、以前に満月を見てこのセンコウクウラに変身したのだ。
「これが・・・グリーヴァのお兄さん?」
「ああ、そうだ。どうやら近くにグリーヴァを感じて暴走したらしい」
バタッ!──ヒナギクは倒れた。
「ヒナギク!?」
と、ハヤタは振り向いた。刹那、ヒナギクの全身を緑色のオーラが纏った。
「何だ・・・?」
ハヤタはヒナギクを凝視。すると、ヒナギクは徐に立ち上がり、グリーヴァに変化して巨大化した。
「兄貴の御陰で助かったよ」
と、グリーヴァが第一声を放った。
「ヒナギクが・・・グリーヴァに?」
ハヤタは恐怖で顔が強張った。
「貴様にはタップリとお礼をしないとなぁ?」
グリーヴァはそう言って、ハヤタを見下ろした。
「待てグリーヴァ。そいつは我が殺る」
「否、兄貴の出る幕じゃあ無えよ。それに、俺も此奴には怨みが有ってな」
「貴様、我の言う事が聞けぬと言うのか!?」
センコウクウラはグリーヴァに火の粉を吐いた。
グリーヴァは慌てて飛び退き、
「ギャア!?何すんだよ兄貴!?」
「黙れ!」
センコウクウラの火炎放射。グリーヴァは火達磨に成った。
「テメエ、ヒナギクに何しやがる!?」
ハヤタはそう言って、妖刀・かまいたちでセンコウクウラの頬を斬り付けた。
(なっ、刃が通らねえ!?)
「ヒナギクじゃねえ!グリーヴァだ!」
グリーヴァは突っ込み、ハヤタをぶっ飛ばした。が、体勢を立て直して反撃をして来た。
「喰らいやがれ!」
と、真空の刃を放つハヤタ。グリーヴァは右肩を負傷した。
「かっ、肩が!俺の肩があ!」
「へっ、肩を負傷したぐれえで喚いてんじゃねえよ雑魚!て言うか前から思ってたけどさ、グリーヴァの一人称って何で『俺』なの?グリーヴァって性別♀だろ?」
「女の子が『俺』と言って何が悪い!?」
グリーヴァは半べそ掻きながら言った。無論、その涙は肩の痛みから来ている。
「貴様、グリーヴァを泣かしやがったな!?」
センコウクウラは灼熱の炎を吐き、渦を作ってハヤタをその中に閉じ込めた。が、上に飛び上がって渦から脱出されてしまった。
「センコウクウラ、悪いがもう一度、俺の中に封印させて貰う」
ハヤタはそう言って、全身の妖力を集めて光線を放った。
センコウクウラは光線をギリギリまで引き付け、
(今だ!)
と、液化して光線を辿り、ハヤタの体内に入る。同時に、ハヤタの瞳に一瞬だけセンコウクウラの姿が写った。
北叟笑むハヤタ。
「兄貴、なのか?」
グリーヴァは訊ねた。
「ああ、そうだ」
と、ハヤタは返事をした。刹那、ハヤタの中のセンコウクウラは意識を失った。
再び北叟笑むハヤタ。「兄貴?」
と、疑問符を浮かべるグリーヴァ。
「グリーヴァ、悪いが俺はお前の兄貴じゃない」
「何!?貴様、兄貴を抑え込んだのか!?」
「ああ、抑えた」
途端、グリーヴァの怒りが爆発。体を縮め、ヒナギクに変化して襲い掛かった。
ブンッ!──ハヤタを殴り飛ばすヒナギク。
ハヤタは宙に舞い、
「貴様、今直ぐ兄貴を返せ!」
と、地面に叩き付けられる。
「痛!」
痛みに因ってハヤタの顔が引き攣る。
「悪いがお前の望みは聞けない。まぁ、ヒナギクを返すと言うなら乗ってやっても良いが?」
「黙れ!貴様の望みなんか関係無い!」
ヒナギクはそう言って乗し掛かり、ハヤタの胸倉を掴んでグイッと引っ張った。二人の顔がとても近い。
ハヤタは鼻を鳴らした。
「何が可笑しい?」
「お前、センコウクウラが好きなのか?」
刹那、ヒナギクの頬が赤く成った。
「なっ、何をバカな事!?俺は別にそんな!」
「顔が赤いぞ。好きなんだな?」
「うるさいうるさいうるさい!次変な事言ったらぶっ殺すぞ!?」
「それは無理だな。知ってるぞ。竜神族が人間に乗り移る事は即ちその人間と契約をすると言う事だ。もし契約した人間が死んだら、その時点で自分も死ぬ。それを解ってて殺すなら俺は止めねえ。遠慮なく煮るなり焼くなり好きにするが良いさ」
「脅したつもりが、逆に脅されてしまうとは俺もまだ甘いな。良いだろう。お前の望み通りこの女は返してやろう」
ヒナギクそう言ってハヤタに体を預けた。
「ん・・・んん・・・」
顔を上げるヒナギク。
「おはよう、ヒナギク」
ハヤタは笑みを浮かべた。
「えっ、何?どうなってんの?」
と、自分が今置かれている状況を把握出来ないでいるヒナギク。
「さあ、どうなっているんでしょうねえ?」
ハヤタはそう言って、閉鎖空間を解いた。
「キャーッ!」
刹那、マリアの悲鳴が響いた。
「ふっ、二人ともそう言う事はベッドの中でして下さい!」
と、赤く成った顔を両手で隠すマリア。するとそこへ、ナギが駆け付けて来た。
「何が遭った!?」
と、風呂場を見渡すナギ。
そのナギに気付いたヒナギクが、
「あ、ナギ。あんたも入りなよ」
と、おいでをする。
「お、お前達、そんな格好で抱き合うなぁ!」
ナギは顔を赤くして言った。
「良いかヒナギクにハヤタ!お前達はまだ高校生なんだぞ!?もしヒナギクに子どもが出来たらどうするつもりなのだ!?」
その問いにヒナギクは、
「大丈夫よ。まだ受精させてないから」
と、答え、
「もしも仮にそうなったら結婚するぞ。俺が18に成った時点でな」
「えっ、嫌だハヤタくんったら」
と、赤く成るヒナギク。
「うむ、結婚は認めよう。で、子どもはどうするんだ?」
「勿論、産むに決まってるわ。だってハヤタくんの子だもん」
(うっ、羨ましい。私も好きな奴とああ言う風に為りたいぞ)
ナギがそんな事を考えていると、ハヤテの顔が浮かんだ。
「何でお前が出てくるんだよ!?」
ナギは所詮イメージであるハヤテをぶん殴った。
(それにしてもこいつら、マリアがいるってのによく平気で抱き合っていられるな)
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