「なろう」さんでは、初めての連載ものになるこの作品。
色々とつたないところのある拙作ですが、なんと、完結後の今日、
9月2日でユニークアクセスが4万を超えました!
嬉しすぎて、どうにかなりそうです。
これを目にしてくださる皆様に、感謝を。
少しでも楽しんでいただければ、幸いです。お楽しみくださいませ。
あたしの毎日は、いつでもずうっと同じ事の繰り返しなんだと思っていた。
それが不満ではないと言ったら嘘になるけれど、だからといってそれを打破するために何かをしようとやる気を起こすほどのストレスでもない。
退屈と呼ぶには平和で満ち足りていて、幸福だと満足してしまうには何かが足りなくて。
でも、そんなものかもしれない、人生なんて、と悟った風に思っていたのだ。
ずっと。
あの日までは。
ぼんやりと縁側に腰掛けて、足をぶらぶらさせながらお風呂上がりの火照った体を風にさらしていたあたしは、まるで半世紀も昔のことを振り返るようにそんなことを思った。
ふ。
自嘲気味に笑いがこぼれる。
そんな時代もあったのね。
「うーらっらっさぁーん」
小躍りしたくなる弾んだ声で、彼があたしの背後から突如現れると、首もとに巻き付いてきた。暑い!と裏拳でその額を弾いてやると、しおしおとあたしから離れていく。かと思えば、どこから見つけてきたのかうちわを手にして、はたはたと遠慮がちにあたしを扇ぎ始めた。
「少しは涼しくなりましたか?」
あまりに可愛い動物を、悲鳴があがるまで抱き締めたい、と思うのはきっとあたしだけではない筈だ。きちんと正座したその膝頭も、うちわからの風でそよそよと揺れるさらさらの髪も、穏やかにあたしを見つめる瞳も、文句のつけようがないくらいの美しさ。それでいて、この綺麗な生きものが河童だっていうんだから、世知辛い世の中になったもんだわ。仏頂面をするのにも疲れて、あたしは口元をゆるめて彼を見る。
「ありがとうございます、出島さん」
途端、出島さんはそのギリシャ彫刻かってなくらいに麗々しい顔を満面の笑みにして、懲りもせず、あたしににじり寄ってきた。くっ、可愛すぎる……。あたしは、自分自身の煩悩と闘うように眉間に皺を寄せると、目の前に迫ってきた出島さんの髪をそっと撫でた。すると出島さんは、満足したように目を瞑ると、あたしにそっと触れた。どこか、とは言いたくないので、あえて聞かないでいただきたい。あしからず。
この、変態で変人で眉目秀麗な出島さんと出会ったのは、忘れもしない、あの日。
あたしの人生のすべてが変わった、あの日。
夏。
河原の近くの、あのバス停。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。